絶望の種 4/ Reborn Side
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「あれ…リボーンさん?いたんですか?」

「お前もいい感じにいかれてきてるな。最初からいただろうが」

「あはは…ごめんなさい。まさか本物だなんて思わなくて…」


一体今までこいつは目の前にいたオレをなんだと思っていたのだろうか。

まぁ、こいつがどんな状態であれ望みだけは同じみたいだが。


「オレを殺して下さるんですよね」

「ああ」


嬉しいです。と獄寺は笑ってる。


「――なにか言い残すことはあるか?」

「聞いて下さるんですか?」

「さぁな」


オレの返答を意にも返さず。獄寺は少し考えた。


「では…言い残すというよりもお願いなんですけど…良いですか?」

「聴こう」

「はい」


獄寺は真直ぐにオレを見て。


「10代目には。"獄寺隼人が死んだ"こと以外の情報を決して与えないで頂けますか?」

「それで良いのか?」

「はい」

「ツナは苦しむぞ」

「でも悲しみは軽減されます」


部屋から明かりが逃げる。月が逃げるように雲の中へと隠れていく。


「………そうか」


それでもオレたちは眼を背けようとはしない。明かりなんて意味はない。


「ツナが苦しむ思いをするって分かりきっているのに頼むなんて。お前は残酷だな」

「それでも聞き入れて下さるリボーンさんはお優しいですね」


オレは獄寺の遺言を暫し思案して。



「分かった」



言葉を言い終えないうちに、銃の引鉄を抜いた。


そして…静寂が訪れた。

無音の世界。ここにはもう何もないのだと主張するように。

暗い室内。今はもう、月明かりすら入ってこない。

だけれども、オレの目の前には赤い世界が広がっている。見えている。


見るも無残に飛び散った肉片。

そこから湧いてくる死の臭い。


オレの目の前には、先程まで生きていた獄寺隼人の死体が一つ。

オレはリボルバーを懐に仕舞った。



部屋を出ると、いつの間にか復活したシャマルが前に。


「…やったぞ」

「だろうな」

「後の始末を頼んだぞ」

「…分かった」


シャマルに背を向け歩いていく。

背後で壁を思いっきり殴る音が聞こえてきたが。無視した。

さて、オレはもう一つ仕事だ。

その翌日。オレは。


「ツナ」

「なんだよ」


何も知らない。知ることの出来ないこいつに。


「獄寺が死んだぞ」


ただの事実だけを伝えてやった。


++++++++++

あいつの頼みのせいで、こいつにオレを憎ませてやることすら出来やしない。

それでもきっと。こいつはいつか知るだろう。

誰が望んでいなくとも。こいつはその道を選ぶだろう。