絶望の種 5/ Tsuna Side 2
6ページ/全12ページ


なんで。みんな教えてくれないんだろう。

どうして。何も答えてくれないんだろう。

オレが知りたいのは、ただの事実なのに。

もうどう足掻いても、手遅れなんだけど。

それでも何もしないなんて。我慢が出来ないから。


なのに…なのに。


誰の願いなのか、オレの望みは叶わない。

ああ―――なんて。酷いんだろう。


彼が…獄寺くんが死んだ。

それは坦々とした事実として伝えられた。あまりにも無感情に。無味に。

いつ。なんで。どうして。…死んだのか。オレはリボーンに問い掛けた。

けれどリボーンは…何故か答えてはくれなかった。

不可解なことに沈黙を守るだけだった。


何故だろう。


オレはただ知りたいだけなのに。

上手く情報が入らない。まるで誰かに邪魔をされてるよう。


でも…誰に?


オレにはそれが分からない。

リボーンにいくら聴いても無駄らしいということを悟ったオレは、別方面から攻めてみることにした。

オレの持っている手掛かりは多くない。

思えば…学校で行方を絶った獄寺くん。

そして…次に来た知らせは、死。

…恐らくはマフィア関係だと推測。

学校で、マフィアで。…それで獄寺くんについて何か知っていそうな人物。


―――Dr.シャマル。


オレは保健室へ。

がらりと扉を開けると…いた。いつもの白衣を着て。いつものように項垂れて。


「…Dr…シャマル?」


声を掛けると少し反応。ゆっくりとこちらを振り向いた。


「…なんだ。お前さんか…」


明らかな落胆。一体誰だと思ったのだろうか。


「―――シャマル」

「…あんだよ」

「あの…ご、ごく…」



ダンッ!!!



最後まで、言葉は言えなかった。

シャマルが思いっきり、机を叩いたから。

その音に。衝撃に。思わず身が竦む。


「…なんだ?」


もう一度。問い掛けの声。

けれどその声色は、最初のものとは比べ物にならないほど。黒く暗く歪んでいる。


「…あの、シャマル…オレ、獄寺くんの…」



ダダンッ!!!



さっきよりも強い衝撃。そして沈黙。


「………あいつは」

「え?」

「隼人は…死んだ」

「…っ」


ええい、この程度でオレは何を怯んでいるんだ。

そのことは既にリボーンに告げられていた。分かっていることなのに。

けれど別の人間から知らされると。また別の衝撃が来るということも確か。

でも…今はそんなことに一々恐れている場合では。ない。

これからオレは、そのときのことをもっともっと詳しく知ろうとしているのだから。

なのに。


「お前さんに教えられるのは、ここまでだ」

「は…?」


なのに。ここでもまた立ち塞がる壁。

オレはそれを砕けない。


「ここまでって…なんで…どういう意味なんだよ、それ!」

「難しく考える必要はない。そのままの意味だからな。…お前は。知れない」


意味が分からない。どうして…オレは知ることが出来ないというのだろうか。


「精々。苦しめ」


恨みがましい声が聞こえる。シャマルの口から。

…どうやらシャマルも、オレに教える気はないようだ。この大人がその気になったら、オレが敵う相手でもない。


しかし、何故…?


リボーンもシャマルも間違いなく何かを知っている。

なのに何故かオレには教えてくれない。オレのとても大切な人の最後を。

まるで鍵のない金庫を渡されたような気分だ。

中には何か入ってて。だけど何が入っているかは分からない。

調べたいけど。その鍵を持っている人物は…鍵どころか中身のヒントすらくれやしない。

決して開かない金庫。中には一体何がある?