絶望の種 5/ Tsuna Side 2
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調べても何も分からず。それどころか拒絶の意志すら見えてその壁の高さに泣きたくなる。

ああ、オレはそんなことの為に泣きたくなんてないのに。


オレは彼を想って泣きたいのに。


なのにそれが出来ない。まだオレは彼の死を信じ切れていないから。

それはそれで幸せなことなのだろうか。まだ希望を持ててると。

けれど…幸せというにはこの状況は苦しい。苦しい。何も出来ず。もどかしく。

何て言うんだっけこんな状態。ああ、蛇の生殺し?

夜に彼を想って涙が出るとしても、それは彼の死を想ってではない。

この現状に対する、自分の不甲斐無さにだ。

ああ腹が立つ。苦しい。それでまた涙が出て。ああ苛々する!

そんな状態が朝になっても昼になっても治らず。そうしていたら頭をはたかれた。


…ビアンキに。


「ツナ。あんたうざいわよ」

「………ビアンキ…」


ビアンキはいつも通りだ。彼のことを知らないわけでもないだろうに。


「―――隼人のことなら、覚悟を決めておかなかったあんたが悪い」

「…え?」

「この世界で暮らしているあんた達には少し分かりづらいかもしれないけど。向こうの世界で暮らしている私達はいつ死んでもおかしくなんてないのよ」


淡々と、ビアンキは告げる。


「隼人は勿論。私も。あんたの兄弟子のディーノも。シャマルも。…リボーンだってそう。絶対も例外もないのよ」


だから愛するものにはいつだって最大の愛情を持って接するのだと。

…いつ死に別れても良いようにと、ビアンキはオレに教える。

でも…それはオレにはもう。不要な知識だ。

だって。それは既に悟らされた。


「そう…だね。確かにオレは…甘く見ていたと思う」


世界の残酷さを。楽観していたとは思う。



けれど。



「でもさ。…その仕打ちが、"これ"なわけ!?」


唯一つの事実だけを告げられて。でもそれ以上の情報は決して与えない。

それは…甘い世界を夢見ていたオレへの、罰なのだろうか?

そんなはずはない。


「………」


ビアンキはオレに背を向ける。


「暫く。出るからリボーンによろしく言っておいて」

「え…?」

「このままここにいると、心にもないことをあんたやリボーンに言っちゃいそうだから。頭を冷やしてくる」


制止の言葉をかける暇もなく、退室するビアンキ。


「…邪魔よ」

「うぉ!?」


そして突き倒される音。

今の…声は…


「…よ、ツナ…」

「ディーノさん…」


現れたのは、遥か遠いイタリアの地にて活躍しているはずの。オレの兄弟子。

…獄寺くんのことを聞いて、飛んで来てくれたのだろうか。


「その…なんだ、この度は…」

「はい…ありがとうございます…」


もしかしたらオレよりも辛そうな表情のディーノさん。

ビアンキと同じく、その世界の人だから情報の死だけでもその重みは充分に伝わるのだろう。

…オレとは、違って。