絶望の種 5/ Tsuna Side 2
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「…ディーノさん…」


気付けば、オレは口を開いていた。


「なんだ?」


この思いをどうすれば良いのか分からなくて。受け止めてくれそうな人にぶつけたかったのかも知れない。


「―――みんな、教えてくれないんです」

「―――」


どこかがざわりと変わる気配。

けれど愚鈍なオレは気付かない。気付けない。そんなことは分からない。


「獄寺くんのこと…。獄寺くんがいつ、なんで…どこで。…亡くなったのか…どうしても答えてくれないんです」

「………」


オレは決して、ディーノさんに答えを求めてはいなかった。

だって。このときのオレはディーノさんは獄寺くんが死んだと聞いて、日本に来たんだと信じていたんだから。

…獄寺くんの容態を聞いて、日本に来たのだなんて。知らなかったのだから。

だから。


「………ツナ」

「…?はい…?」


オレはこのとき、本当に驚いて―――


「あいつは…スモーキンはだな…」

「ぇ―――?」

「ディーノ」


突如として声だけが現れた。続いてその小さく黒い姿。


「何しに来たんだ?」


大きな声ではないけれど、確かな強いものが含まれている声。

それにディーノさんがびくりと震える。


「あ…いや、ツナの様子を見にだな…」

「………」


どうみてもディーノさんを信用してないリボーン。

けれど今のオレはそんなことよりも何よりも。先程の言葉の方が気になっていた。


「あの、ディーノさん…?獄寺くんのこと…何か知ってるんですか!?」

「いや、それは…」


歯切れ悪く返答するディーノさん。けれどその態度はオレの中で確信へと変化する。


「教えて下さい、獄寺くんのこと…!」


オレは必死に頼み込む。

けれど。


「………わりぃ」


現れたのは、謝罪と。沈黙。


「…なんで…」


問いかける言葉が嘘みたいに思えるほど。誰も何も言ってはくれない。

まるで沈黙こそが、唯一の返答のように。

それは明確な拒絶の意思。どうしても見えないその真意。

でも…ディーノさんの反応で何かがあったということだけは分かった。

だったら…もう他人には頼まない。

自分で調べてやる。

例え何年かかったとしてもだ。


「知らないほうが。幸せだぞ」


リボーンが何かを言っているけど。もうオレの心には届かない。

オレの決意はここから始まった。

今のオレはまだ知らない。

獄寺くんが病気にかかり倒れたことも。

それに絶望して。自殺を図ったことも。

ずっとオレの傍にいるリボーンが獄寺くんを撃ち殺したことも。

そして…オレに情報が行かないよう仕向けたのが、実の彼だということも。


今はまだ、何も知らない。


けれど…これは遥か未来に必ずオレが知る。探し当てる。

既に決定している。未来。


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何も知らないことは、ある意味においては希望でもあった。

全てを知るということは、この場合は絶望でしかなかった。

全てを知る遥か未来。オレは誰を怨めば良い?