広がる人脈
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ある日のこと。

キャバッローネファミリーに、ある客人が現れた。

受け付けたのは獄寺。


「誰だ?ここに何の用だ」

「んー?キミがディーノが言ってた、獄寺隼人くんか?」

「こっちは誰だって聞いてんだよ」


体格のいい男だった。気持ちのいい笑顔を浮かべ、息子がどうのと言っている。


「ああ悪い悪い!キミがあまりにも聞いた通りの人物だったもので、つい。…オレは家光。とあるファミリーの…CEDEFっていう機関の沢田家光と言うんだが…ここのボスに会わせてもらえるか?」

「………分かった。着いてこい」


男…家光の所属を聞き、獄寺はあっさりと家光を通す。その様子に逆に家光が驚く。


「おいおい、そんな、こんなあからさまに怪しい、アポも取ってない男を簡単に通しちゃいかんよ。オレが身分を偽った…たとえば自爆をしに来た鉄砲玉だったらどうするんだ」


自ら言うのは何ではあるが、最もな言い分をする家光に獄寺は振り向きもせずに言う。


「CEDEF…ボンゴレファミリーの門外顧問機関の名称だな。そして沢田家光とくれば、そこのボスにしてボンゴレのNo.2。別名はボンゴレの若獅子だったか?」

「……よく知ってる。情報通ってのは嘘じゃなさそうだ。だが、まさかオレの顔まで知ってたのか?」

「顔までは知らねえし意味もねえ。今や金さえ出せば誰だって好きな顔になれる世の中だ。だが……」

「だが?」


ここで、獄寺はようやく振り返る。その目が家光を射抜く。


「あんたの持つ雰囲気はあのボンゴレ10代目に通じるものがある。身に纏う空気は誰にも変えられない。だからあんたは本当にあの沢田家光で、あの人の父親なんだろうよ。…これがあんたを通す理由だ。文句あるか?」

「…いいや、ない。ああ、なんでキミはボンゴレのファミリーじゃないんだ!いいや、キミみたいな優秀な子がどうしてどこのファミリーにも相手にされなかったんだ!あのスラムのマフィアの目はみんな節穴だ!!」


大袈裟に嘆く家光をおべっかとして受け取ったのか、獄寺は無言で進む。愛想のない獄寺に気を悪くする様子も見せず、家光は話し続ける。


「そういえば獄寺くんはうちのせがれと知り合いなのか?そうなら是非友達になってほしい。あいつは優柔不断で面倒くさがりで勉強も運動も駄目で好きな子をうっかりストーキングしちゃう子なんだが、でも優しい奴なんだ」


自分の息子だというのに随分ないい草だった。いや、この場合は自分の息子だからこそ、だろうか。


「友達…ね。生憎オレには今までそういう付き合いをしたことのある知り合いはいない。だからどう接すればいいのか分からない。…そしてそれ以前に、未来のボンゴレのボスの友人に値するような地位にもオレじゃ就けねえだろうぜ」

「ツナが初めての友達になるわけだな?体当たりで接して大丈夫だ。そして獄寺くんなら立派な役どころに就けると思うし、それ以前に友達に地位なんて関係ない。好きな時に頼って大丈夫だ」

「そして好きな時に頼られろって?」

「もちろん嫌なら断ってもいい。友達ってのは対等なものだからな。無論頼みを断った程度で関係が切れるはずもない」


そこまで聞いた獄寺は、おかしそうに笑った。


「やっぱり、あんたあのボンゴレ10代目の親父さんだな」

「ん?」

「ボンゴレ10代目からも、以前まったく同じことを言わたぜ」

「……オレがお節介を焼く間でもなかったか」


あいつ奥手だったはずなんだけどな。と家光は頭を掻いた。

獄寺はディーノの主務室のドアを開く。


「ボス、客人だぜ」



獄寺は家光を部屋まで通すとさっさと仕事に戻った。

ボス同士の会話を聞く気は獄寺にはない。あの部屋にはロマーリオもいたから護衛としている必要もない。

それから暫くして、獄寺はディーノとばったり会った。


「隼人!!」

「ん?なんだよ。話はもう終わったのか?」

「日本に行くぞ!!」


獄寺はデジャヴを覚えた。