広がる人脈
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家光も一緒に日本まで行くらしい。息子であるツナに会うのは随分と久し振りだと獄寺に話していた。

なんでも、今まで妻子に己の本当の職…裏稼業であることは黙っていたらしい。そして妻にはこれからも言うつもりはない。流石に息子のツナには告げるつもりらしいが。

…ボンゴレ10代目候補は、何人もいた。だが全員暗殺された。

…平和な国で飽和に暮らしていた、ボンゴレ9代目の孫息子を残して。

恐らくは、彼は本来ならばマフィアになんて誰もならせる予定じゃなかった。だからこそ祖父や父が裏稼業を営んでいながらも何も知らず育てられた。


(それが…他に跡継ぎがいないと見るやいきなりマフィアへの道と進ませる…か)


獄寺は自分とまったく違う同い年の若き10代目を思い出し、少し同情した。

同情して…しかし、思い直す。


(いや……違うか?ボンゴレ9代目は穏健派なんだろ?なのにあんな子供をいきなり殺し殺されの世界に持っていくか?)


ならば、と獄寺は考える。自分の仕入れた情報が正しいのなら。跡継ぎ以上の意味があるとするならば。


(…まさか、あのボンゴレ10代目の存在に気付いた他の人間に殺されないよう、あえてその道を示したのか?)


わざわざあのリボーンを呼んでまで鍛えて。

陰ながら、あのボンゴレ10代目を暗殺しようとする輩もいるだろう。だがリボーンならば、そんな奴らなど誰にも知られずに返り討ちにすることなどたやすい。


(あるいは…)


ボンゴレ9代目の決断は神の采配と言われている。なら、あの子供こそが真のボンゴレ10代目に相応しい人物…ということになるのだろうか。


「…なんにしても、本人は嫌がってたけどな」

「ん?何か言ったか獄寺くん」


小さく漏らした呟きが耳に入ったのか、家光が獄寺に尋ねる。


「…なんでもねえよ」


獄寺はそう答え、家光の話の聞き手に専念した。家光は家族の話を楽しそうに語った。

―――獄寺はその話を、眩しそうに聞いている。



長旅を終わらせ、獄寺は数ヶ月振りに並盛の土を踏みしめた。

そしてその並盛は……


「う"お"ぉおおおい!待ちやがれ!!」


「うわー!!」

「………」


なんか、いきなり襲撃を受けていた。敵であろう奴の馬鹿でかい声がここまで響いてくる。

日本は平和な国のはずなのだが、少なくとも並盛の治安は悪くなる一方のようだ。自分はまったくの無関係と言い張れないのが少し気不味い。


「あの声……」

「よお知らんが、行ってくる!」

「あ、おい待て隼人!!」


ディーノの声を背後から聞きながら、獄寺は騒ぎの中心まで走り出す。


「…せっかくの親子の再会なんだ。誰だか知らねーが邪魔すんじゃねえよ」


そんな呟きを風に溶かしながら、獄寺はそのその場所へと走り急いだ。

攻撃を仕掛けているのは長い銀髪を持ち黒衣の服を纏った男だった。襲われているのは一人の少年。それからボンゴレメンバー。一般人も大勢いる。女子供も。

顔をしかめる獄寺。と、不意に銀髪の男がこちらを向いた。


「あん?」


目が合った。嫌な予感。


「なんだあ?ガン付けてくれやがって。なんか文句あんのか!!」


なんだこのチンピラ。

いきなり因縁を付けられて獄寺は辟易とした。


「ご、獄寺くん!?」


ボンゴレ10代目が驚いた声でこちらを見ている。男の目が据る。


「…お前もあいつらの知り合いか。何なんだ一体。オレはただあいつを仕留めればそれでいいってのに」


あいつ…あの額から炎を燃やしている少年か。何なんだはこっちが言いたい。状況が掴めない。あいつはボンゴレ10代目を襲ってたんじゃないのか?

ここで追いかけてきたらしいディーノが獄寺に追いつき、男は逃げた。家光はいなかった。