踏んでしまった彼の地雷
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どうしてこんなことになったんだろう。


獄寺は目の前の人物に気取られないようにこっそりとため息を吐いた。

目の前にいる人物こと雲雀恭弥は、いつもより三割ほど増して不機嫌な顔をしていた。

獄寺はもう一度思った。


どうしてこんなことになったんだろう。


ついさっきまで、ほんの30分ほど前までは獄寺は普通に平穏な時間を送っていた。

それが崩れてしまったのは、そう、たまたま通りかかった通路で、たまたま雲雀と擦れ違ってしまったからだ。

たまたま出会った雲雀に、気が向いたから声を掛けて、その際偶然雲雀が持っていた本に獄寺の目が触れた。

そしてその本は奇遇にも獄寺も読んだことがあるもので。そしてつい言ってしまったのだ。


あ?その本。

ん?これ?

読んだけど、終わりがいまいちだったよなー

………。


獄寺としては、何の気なしに言った言葉だった。

だが、それがいけなかった。

一瞬どことなく声を弾ませた雲雀の表情が、一瞬で沈んだ。

そして雲雀は問答無用で獄寺の腕を掴み、己の隠れアジトまで連れ込まれ、今に至る。


「あー…雲雀。オレが悪かったから―――」

「うるさい」


憮然と言い放たれた。

取り付く島もなかった。

獄寺はまた内心でため息を吐く。


まさかこいつがこんな奴だとは思わなかった。


と言っても、こんな奴だとかどんな奴だとか言えるほど獄寺は雲雀のことを知らないし、知りたいとも思っていないのだが。

しかし、それでも一応は10年ほどの付き合いがあったのだ。

まさかこんな(獄寺にとっては)くだらないことで切れるとは夢にも思わなかった。

さてどうしたものか。獄寺は考える。目の前の雲雀の目は据わっている。


「で、キミはこの本のどこがいまいちだって言うの?」

「いや…オレも基本的には本の悪口は言いたくねぇけど……正直あの結末は理解出来んわ。主人公が何であの決断を下したのかさっぱり分からん」

「へぇええええええええ。言うじゃない」


雲雀の目が怖い。

もうやだ。とっとと終わらせたいこんな時間。


「雲雀…もうオレが悪かったから。気が済むまでオレをぶん殴っていいからオレを開放してくれ」

「キミを殴るっていうのはとてもいい案だと思うけど、無抵抗なキミを攻撃してもつまらないよ」

「じゃあオレも攻撃してやるから」

「気の抜けた攻撃なんてされても不愉快なだけだよ」


こいつマジめんどくせぇ。

獄寺が顔を引き攣らせながらそう思っていると、雲雀はそうだとぽんと手を叩き急に笑顔になった。


「そういえば」

「あん?」

「綱吉って10年経っても弱っちいし情けないし正直ボスの器じゃないよね」



ぴきり。



瞬間、空間にひびが入ったかのような音が聞こえた。


「てめぇ…人が下手に出てりゃ付け上がりやがって!!ぶっ殺す!!」

「望むところだよ」


二人は同時に立ち上がり、衝突した。

30分も経つ頃には、何故自分たちが喧嘩をしているのか、その理由すら忘れていた。


++++++++++

喧嘩するほど仲が…