女子会
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所変わってマーモン。
マーモンの前にはここにはいないはずのリボーンちゃんがいた。
それもそのはずで、ここにいるリボーンちゃんはマーモンの幻術だった。
常日頃から、リボーンちゃんを守りたいと思うマーモン。
しかし本人を前にすると素直になれず、思ってもない言葉を口にする日々。
そんな自分をどうにかしようと、始めたのがこのリボーンちゃんの幻術。
これでどうにか素直な言葉を口に出来ないかと試行錯誤するが、言葉を発するどころか直視することすら出来ない始末。
そんなわけでマーモンはベッドの上、正座しながら幻術と向き合っているのだった。(なお3時間経過)
そんなところに。
コンコン。
ノックの音が、響いた。
マーモンは無視。
基本マーモンは突然の来客は無視する。そもそも今はそれどころではない。
ノックは一度きり。諦めて立ち去ったのだろう。脳の片隅でマーモンが思ったその時。
「マーモン」
リボーンちゃんの声が聞こえ。
「邪魔するぞ」
ドアが蹴破られた。
マーモンの集中力が途切れ、幻術が消える。
代わりに現れたのは本物のリボーンちゃん。
「すまないが、金を貸してくれ」
「り、リボーン…」
突然のことに固まるマーモン。
頭の中は先程までの自分の姿を見られてないかということだけだ。
「み、見た…?」
「ん? 何をだ?」
どうやら見られてないらしい。
安心するマーモンだが、リボーンちゃんの後ろから現れたユニが嫌ににこにこしているのが気になった。
「…見ちゃった」
見られた。
マーモンは自殺したくなった。
「ん? 何をだ?」
「おばさま、マーモンってば…」
「お金が欲しいんだって? 10億で足りる?」
ユニの言葉を遮りながら、マーモン。ユニのにこにこが強まる。
「ああ、十分すぎるぐらいだ」
「な、何に使うのさ」
「おばさまがお洒落するのに使うのよ」
「へ、へえ…」
マーモンとしてもリボーンちゃんが可愛くなるのに自分の金が使われるのは悪い気がしない。
「い、いいんじゃない?」
「ありがとう、マーモン」
「よかったですねおばさま、これで獄寺さんも振り向いてくれます!!」
「待って」
思わずマーモンが言った。
今何て言った? 今何と言った?
獄寺?
マーモンは知っている。ボンゴレの、10代目の右腕の男だ。
リボーンちゃんとも10年の付き合いで、なんとこともあろうに何の間違いかリボーンちゃんに惚れられている。
何度暗殺しようと企んだかわからない。
幸いなことに獄寺は自分の立場を分かっていて、リボーンちゃんを傷付けず、しかし付き合うなどと身の程知らずな行為にも及んでないので殺されないで済んでいる。
…で、その獄寺が、何だって?
「目一杯お洒落して獄寺さんを振り向かせましょうね! おばさま!!」
「ふ…なんだか照れるな」
「だから待って」
「ん? どうしたマーモン」
リボーンちゃんに直視され、マーモンの心臓が跳ね上がる。
窓の方を見ながら、マーモンは何とか言葉を紡いだ。
「お、お洒落よりももっといい案あるんじゃないの?」
本音は自分の金で獄寺が振り向くなどと我慢ならないだけなのだが、そう言う。言ってしまう。
「ほお」
「まあ」
二人の関心がマーモンに移る。
「何か代案があるのか? マーモン」
「ぜひ聞かせていただきたいですわ」
ユニがちょっとどすを聞かせて言う。自分の案よりいいものがあるのかと、その目が言っている。
「………ええと…」
とはいえ、案などない。
マーモンが言葉に詰まらせていると、何を思ったかリボーンちゃんが言った。
「頑張れマーモン。今度デートしてやるから」
「!!!!!」
デート。自分が。リボーンちゃんと。デート。
「まあ、羨ましい。おばさま、私とは?」
「ん? ああ、今度しようか、デート」
きゃー! とユニが喜ぶ。
リボーンちゃんにとってデートとは「友達以上の良好な関係を持つ者同士が共に出歩く行為」を指すのだが二人(特にマーモン)には通じず。
二人はリボーンちゃんとのデートのために更なる代案を出していくのだった。
ラブレター作戦。
待ち伏せ作戦。
目の前でハンカチ落とし作戦。
プレゼント作戦。
夜這いで既成事実作戦。
「きせいじじつ? なんだそれは」
「獄寺さんにお聞きになさってください」
3人は昼も夜も話し続け、何処からかお菓子とジュースも出てきて時折脱線した話しもして…
見事な女子会が出来上がっていた。
そして、夜が明けた!
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