決定した未来(10年後設定)



これは…この状況をオレは、どう受け止めるべきなのか…
目の前の、どう考えても近すぎる場所にあるその人物の顔を見つめながら考える。


山本とともに10代目のお家に遊びに行っていて、その自室で他愛のない会話をしていたところに現れたアホ牛。
もはやお約束といわんばかりの展開の末、大泣きするランボが撃った10年バズーカはオレに命中し、戻ったら1発ぶん殴ってやると心に誓っていたのだが―――


辺りを見回せば、そこはオレと目の前の人物以外誰もいない室内。
広々とした間取りに配されたインテリアは趣味が良く、重厚でいながらも堅苦しさを感じさせない調度品は、この部屋にあるためだけに存在するのではないのかと――そんなことを思わせるほどにしっくりとしたたたずまいで調和を保っていた。


「獄寺、」
「―――リボーンさん」
漆黒のスーツに身を包んだ、オレよりいくつか年下と思われるその人は、10代目のお部屋にいた時もその場にいたリボーンさんだ―――確認するまでもなく、その雰囲気が教えてくれる。


しっかりと腰に腕を回され、そのせいでそれ以上離れることができなくて…居心地の悪さを誤魔化そうと視線を逸らしていたのだが―――促されるように名を呼ばれ、観念しおずおずとその顔へと視線を向けた。


けれど……10年という月日はここまで人を変えるものなのかと―――体格自体オレとそう変わらないほどに成長し、オレが入れ替わったことにも動じていない落ち着き払った表情。年下とは到底思えないほどに大人びているうえ、唇の端に浮かんだ笑みは突然のオレの登場を楽しんでいるふうでさえある。


「あの、手を離してもらえると…うれしかったりするんですけど…」


どうしてオレはこんな、リボーンさんのように革張りのソファ…ではなく、その膝の上に座っているのだろうと、困惑しながらもそう言った。


しかもこんな夜中…いや、明け方か?
どちらにしろ、日本との時差を考えれば寝ていてもおかしくない時間帯のはずだ。
そんな時間に2人きり、しかもこんなに密着し、10年後のオレたちは何をしていたのだろうと当然の疑問を抱くが……


「まぁそう言うな。こっちだっていいところを邪魔されたうえ、5分後にあいつが戻ってきたとしても途中でほっぽりだされてご機嫌ななめになってるだろうから、すぐにつづきをってわけにもいかねーだろうし…。少しくらい相手しろ」


いいところって、どんなところだったんですか?!
というか、あいつってオレのことですよね?
途中でほっぽりだすとかご機嫌ななめとかつづきとか相手とかって…つっこんで聞くべき箇所はかぎりなくあるというのに、聞くに聞けない…


だってまさか、10年後のリボーンさんとそういう関係になってるなんて……いや、さすがにそれはオレの考えすぎだろう。
だって、相手ははるか年下のしかも男だ。
きっと、リボーンさんがオレをからかっているのに違いない、そう結論付けようとしたところ―――


「ぁっ…」
伸びてきた指先が耳朶に触れてきて、その指遣いにかすかな息が漏れた。
「リ…リボーンさん…?」
背筋をぞくりと痺れにも似たものが走り、なんともいえないその感覚に戸惑いを隠せない。
そしてそんな自分自身の反応がやたらと恥ずかしく、自然と顔に熱が集まる。


「思ったとおり、耳が弱いのは昔からのようだな」
「……………」


そんな、どうコメントすればいいかわからないようなことを言われても困るんですけど。しかも、困惑するオレの反応をたのしんでいるとしか思えない薄い笑み。
それを目の当たりにさせられ、ドキリと心臓が跳ね…てなんかない!
なんかしんないけどドキドキしてるのだって、きっと気のせいに決まってる。


「そんな顔するな。無理だとわかってても10年前に返したくなくなるだろ」


そうさらりと、まさかリボーンさんの口からそんな言葉を聞くとは思ってもみなかったことを言われ、息を飲む。
とはいえ、赤ん坊のころから複数の愛人がいたのだから不思議ではないのかもしれないが、男のオレがその対象と……


ああ、そうだ。
この人が女に不自由するわけはないのだから、10年後のオレとどうにかなっていようと、それはきっと遊びにすぎないんだ。それかただの気まぐれか…
不意にそのことに気づき、一気に感情が冷めていくのがわかった。
と同時に、自然とうつむいてしまう。


「おい。何考えてへこんでんのかしんねーけどこっち向け。お前は、この俺が10年かけてようやく落とした本命なんだからな」
「ぇ…」
はじかれたように顔を上げれば、鋭い瞳に射抜かれ逃げ場を失った。

「数年後俺が行動に出るまで…せいぜい、覚悟でもしとくんだな」
そう浮かべられた笑みが、近づいてくる。

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アネモネ の雨宮さんから頂きました!
そしてこのお話のタイトルは熊が付けさせて頂きました。10年後に来た獄寺くんの未来はこれで決定です。みたいな。
この話、熊が可哀相なぐらいリボ獄リボ獄言ってたら熊が見てられなくなった雨宮さんが書いて下さったのです。
てか初めて書いたリボ獄って! 雨宮さん凄過ぎる! うっかり惚れる! 結婚して下さい!!!(えー!?)
雨宮さん好きなカプは山獄雲獄なのにリボ獄なんて書かせてごめんなさい! でも悔いはないです!
もうそのー…現代に行ってしまった獄寺くんヴァージョンとかも書いてほしいですね!(にこ!)
冗談ですよ? 限りないほど本気に近いですけど。(悪質だな)
ありがとうございましたですv