神なんて信じていない。 願い事を叶えたいと思う時に「神様、お願いします。」なんて、そんな事思うのは嫌いだ。 神に頼む前に、まず自分が出来る限りの努力をすべきだと思う。 しかし、自分の能力の限界もある。努力をして叶わなかったことは、それはそれで良いんじゃないだろうか。 その為に努力をしたと言う事は、また別の願いの結果へと繋がっていく。 それは俺の持論だった。 しかし、そんな俺でも−… (神がいるなら俺の願いを叶えてくれ) 神にすがりたくなる時だってある。 『あの、落し物・・・です。』 『・・・あぁ、すまない。ありがとう。』 『いえ・・・』 そんな会話のやり取り。俺が物を落とし、それを拾った人間との簡単な会話。コミュニケーションの類にすら含まれないだろう。 だが、俺は。 はにかんだ様に微笑んだーーー…ランドセルを背負った、あの少年に一目惚れをした。 相当に動揺をして、ガツンと頭を揺らされても(比喩等ではなく、電柱に頭をぶつけた)俺は、俺を見上げる少年の胸に留められた名札の名前を一言一句間違えずに覚えていた。 『並盛小学校 6年3組 獄寺隼人』 それが俺の、22歳にしての初恋の相手。 +【家庭教師−その実、真綿エンドレス−】 番外編*その実、愉快な真綿(群生地帯) 「リボーン。超ウザい。」 「うるせーぞ。ツナ。」 ガヤガヤと講義の終わった講堂で、間をあけてとなりに座っていた綱吉が物凄く胡散臭そうな顔をしながら俺を見て、そう言った。 元来の性質で、あまり表情を表に出さない俺は大学に通うまではあまり友人と呼べる人間はそういなかった。 しかし、大学でこの悪友に出会ってからは友達の友達というつながりで驚くほどの交友関係になっていったと思う。 もともと、大学に来るまではイタリアに住んでいたから、地元では有名なマフィアの息子と知られている地元ではごく普通の友人等作ることは出来るはずもなかった。 それの加え俺自身の口下手や表情をあまり表に出さなかった性質も加え、普通の友人等が出来る要素はかなり少なかった。 自分のやりたいことをやるために家人の反対を押し切って日本の大学へ入って良かったと思う。 当初、自身の家のことはひた隠しにしていたがどうにも社交的なこの悪友は人から隠し事を引き出すのが尋常でなく上手いらしい。 うっかりと綱吉に実家がマフィアである事を漏らしてしまった。驚くかと思ったが、綱吉は「俺の家はね極道なんだ。」とケラケラと笑いながら言った。 日本語に不自由はしないが、極道、と言う言葉が聞きなれなかったので一瞬クエスチョンマークで思考を飛ばしていたら綱吉はクスクスと笑いながら「ジャパニーズマフィアだよ。」と言った。 それ以来、悪友とでも言うのか。結構仲良く?というのもなんだか鳥肌が立つが大学で一番多く話す友人は綱吉になった。 そんな綱吉が、朝からひっきりなしに溜息を吐く俺を胡散臭そうに見て「ウザいー」と言っているのだ。 「リボーン、朝から溜息ばっかりでどうしたんだよ?」 「お前には関係ねーぞ。」 「えぇー?朝から超ウザい思いさせられてる俺にその言い方ないだろー?」 「せめて建前でも「心配だ」とかいえないのか?」 「言って欲しいわけ?」 「気持ち悪りぃぞ。」 「だろ?」 軽口をテンポよく交わすが、俺の脳内には昨日の少年の事で頭がいっぱいだった。 俺は…俺の好みは背のスラっとしたスレンダーな強気な女だったはずなのだが。 いつから俺の好みはランドセルを背負った少年になったんだ?俺はロリコンか!? そう思っても、頭の中からはあの少年の微笑みが離れない。 あぁ、これが恋煩いという奴か。どうしてあの少年なのだろうか。 俺と同じ年齢くらいのスレンダーな強気の女だったら口説きに口説いてモノにするというのに。 「で、本当に何?」 「いや…これはお前にも言えない。」 「ふぅん。」 しまった、と気が付いたのは綱吉が物凄く楽しそうに、女が見たらキャーキャー騒ぎそうなさわやかな笑みを浮かべた時だった。 時、すでに遅し。 「リボーン、今日はリボーンの部屋でオールナイトだ!」 「断る。」 「そう?ルイ13世。」 「・・・断る。」 「あぁ!麗しのポレオン!」 「っう・・・こっ、断る。」 「それは奇跡の輝き!レミーマルタン!」 「・・・こっ・・・こ」 「ウチの親父秘蔵の日本酒もプラス。あと、俺の母さんが作った梅酒もお付けします。」 「・・・」 「OK−。じゃぁ今日はリボーンの部屋に泊まるね!」 はっきり言おう。家はマフィアでボンボンではあるが日本の大学に来て、普通の学生よりは確かに裕福な暮らしはしていると思う。しかし、それでも裕福ではあるがバイトもしている。極力実家に頼りたくないと言うのが心情だからだ。ある程度の切り詰めはしている。それでも一般よりは贅沢な暮らしはしているが。ただ、やはり実家がマフィアなだけに、一般の贅沢と実家での贅沢はかけ離れている。俺は絵画や美術館系に関してはまったく興味は無かったが、酒・・・は好きだった。体が資本。体を壊してはバイトが出来ない。それに体調を崩して授業を聞き逃すのも本末転倒だ。そんなしがらみが無ければ、3食より3酒の方が良い。というくらいに酒は好きだった。実家で高い美味い酒を飲みなれている。独立のためにある程度の金は貯めなければならない。自給1500円実働4.5時間週4のバイトと実家からの援助(これは後々切りたいと思っている)。実家の援助だって必要最低限にしている。そんな人間が1本20万も30万もする酒を飲むなんて出来るはずもなく、目下の俺の不満と言えば高い酒が飲めないという事だけだった。綱吉は、実家が極道で、そんな酒もごろごろ転がっているらしい。綱吉も、その親父も酒は水のように飲むようだ。やはり日本のマフィアもイタリアのマフィアも似ている所は笑えるくらいに似ている。 そんな綱吉の持ち込む酒はもちろん、高い。旨い。学生である俺の手持ちの金だけでは飲めない良い酒だ。それにココ最近は忙しくて安酒を飲む暇も無かった。 喉が鳴るのは当然だろう? そんなわけで、綱吉はダンボールに高い酒をごろごろ突っ込んで持ってきた。その手のコレクターが見たら悲鳴を上げそうなぞんざいな扱いだ。 俺たちにはもちろん、外側の入れ物はどうでも良く、大事なのはその中身の液体だ。 「相変わらず旨そうな梅酒だな。」 「だろ?親父も母さんの梅酒大好きでさ、40万の酒持ち出すのは何にも言わないのに母さんの梅酒を持ち出すのには喧嘩になるんだよな。」 「悪ぃな。」 「いや、母さんも持っていきなさい、って瓶詰めしてくれてたからね。」 「ツマミは簡単なのだが作ってるからな。」 「さんきゅ、ってさ。リボーンはキッチンはきれいにしてるけど部屋は汚いよね。」 「今は綺麗だろう。」 「ハウスキーパーのおかげでね。この間キノコ生えてるの見たときはビビッたよ。さすがの俺も。」 「そうか。」 綱吉はかって知ったる何とやら、で。よいしょっ、という掛け声とともにテーブルの上にダンボールを置いた。 「ま、明日は休みだし。リボーンもバイトないんだろ?」 「あぁ。」 「課題も無いしお互い彼女もいないしさびしくオールナイトで飲みますか?」 「そうだな。」 そう言うと、台所からグラスを二つと、ツマミを盆に載せて持って行く。 「今日なんかTVあったっけ?」 「新聞があるだろ。」 「ああっ、そうそう。リボーンって新聞読むんだね。」 「お前は読まないのか?」 「まぁ、読むけどさ。昔はTV欄と4コマ漫画しか読んでなかったけど。今は色々政治とか色々知っておかないといけないからね。」 「大変だな。極道の跡取りも。」 「まぁ、今はボンボンで好きにやらせてもらってるけどね。それも大学卒業するまでだけど。リボーンは家継がないの?」 「そうだな。それも良いかと思っていたが、やりたい事を見つけたからな。」 「ふぅん。」 「やりたい事を見つけなかったら家業を継いでいたと思うが、俺は見つけたからな。」 「まぁ、頑張りなよ。」 「言われなくても努力はするさ。」 何だかんだ言いながら、このボンボンである悪友も苦労はしているだろう。 暢気で飄々としていて遊びまわっているように見えるが、見えない所で苦労をしているのだ。 努力は人に見せるものじゃない。俺も綱吉以外には実家がマフィアだという事は話した事はない。 「で、で、そーんな人生相談の湿った話はヤメヤメ!シリアスなんて酒がまずくなる。」 「じゃぁTVでも見るのか?」 本気で忘れていた。俺は。綱吉に酒で釣られたのだった。 「溜息の理由。聞かせてもらおうか?」 「黙秘権は?」 「無し。欲しいなら今飲んでる酒没収。」 「・・・」 「さぁ、吐け。ルイ13世、ヘネシー、ナポレオン、レミーマルタン、親父秘蔵の日本酒、とどめの母さん特性の梅酒が飲みたいなら吐け!!!」 吐け。吐かねば。吐くとき。吐こう! 翌日、床の上で寝転がっていた。 綱吉も手には箸を持ったまま眠っていた。 机の上に転がるのは空瓶。 二日酔いはしないが、さすがに床の上で寝たので体はダルイ。シャワーにも入っていないし何処と無く酒臭い。酒の匂いは嫌いじゃないが。 結局昨夜は綱吉に根掘り葉掘り一部始終。話してしまってから少し後悔した。いや、かなり。 「何!?その落し物を拾ってもらった子に一目ぼれ?いやーリボーンにも、ついに、春!が来たんだねぇ!」 「それが、まぁ・・・」 「で、どんな子?清純派?いや、リボーンの事だから知的そうでグラマーな美女?」 「・・・」 「何だよ。だんまりしないでもいいじゃん。大丈夫だって!俺はリボーンとは好きになるタイプがまったく違うんだし。ていうかボイン?ぼんきゅっ、ぼん?いえよー。いくら俺でもリボーンがそこまで悩むほど好きになった相手の事やリボーンに対して冷やかしなんてしないよ!いや、なんていうか嬉しい気もするしさびしい気もするけどさ!親友、いや、悪友としては応援するって!俺にできる事ならんでもするからさ!」 「・・・ラ・・・」 「ん?」 「ランドセルを背負った、小学校に通ってる・・・少年・・・」 「・・・」 「・・・」 「・・・」 「コメントしろよ。」 「変態。」 「うっ・・・!」 「まぁ、あながち冗談でもない本気の、リボーンにマジ引いた感想は置いといて。でも何でまた。」 「いや、それが俺にも良くわからねーんだ。」 「まぁ人が人を好きになるのに理由は要らないしね。それがたとえランドセルを背負った幼い男の子でもさ。」 「・・・」 「ていうかさ・・・親友からのあたたかぁーーーいアドバイス。OK?」 「なんだ・・・」 「日本の刑法では幼い子供に手を出すと、合意の上でも犯罪になる法律があります。」 「・・・」 「13歳未満の子供に対する性交渉はたとえ合意の上でも犯罪☆俺、悪友が犯罪者。しかも猥褻的なのでしょっぴかれるのはヤダからね。」 「・・・」 「何もしてないだろうね。」 「ばっ、ばかを言うなっ!名前だけでその子が住んでいる所も知らないのにそんなことをするわけがないだろうっ・・・!」 俺は声を上ずらせ、思いっきり綱吉から目線をはずした。基本的に俺はポーカーフェイスで通っている。クールだ冷静だのなんだのよく言われるが、一旦感情のリミッターが外れると自分ではどうしようもないくらいに感情を隠すのも下手になる。特に、酒が入れば感情のリミッターは外れやすくなる。 「ふぅん。」 綱吉はそんな俺の崩れた所をつくのが非常に上手い。いや、俺だけではないだろう。綱吉は人の感情の乱れを揺らし突き崩すのが上手い。だから若いながらも時期組長として何千人とかかえる部下達に慕われ敬われるのだろう。反発分子は綱吉が機敏にその感情を読み取り説き伏せ組み伏せる。切り捨てない所は綱吉の甘さと上手さでもある。その甘さが命取りになるところがあるかもしれないが、綱吉ならおそらくはうまくやるだろう。綱吉はコポコポとアルコール度数の高い酒をガッ、と飲む。そして、スクっと立ち上がると俺の本棚の方へとスタスタと歩いていった。 「リボーン。」 「なんだ・・・?」 俺は出来るだけ平常心で答える。 汗の珠が、一つ落ちた。 「俺、この間リボーンの部屋に来た時にエロ本にシャープペンの芯を仕掛けていたんだ…そう!リボーンがオカズにした時にシャーペンの芯が落っこちて、それを俺が指摘してからかうネタにするためにねっ!でも、このエロ本に仕掛けられたシャープペンの芯はそのままだ。という事はココしばらくはコレを使っていないという事だ!けど、リボーンの部屋の箱ティッシュのストック数は確実に数を減らしている!そしてリボーンのウッザイくらい溜息を吐く程に思う相手っ!!!」 ビシッと効果音がつきそうなくらいの勢いで綱吉は俺の鼻先を指差した。 「これらの事から導き足される答え!リボーン!君はその小学生をオカズに一人さびしく右手の上下運動をしていたねっ!」 「っ!!!!!!!!!」 まさか、とは思ったが、事実相違ないその言葉に俺は何も言えなくなる。 「無言は肯定の証…そう受け取ってもいいんだね…」 「っ…オマエ時々無駄に凄いな。」 「・・・マジ?」 「え?」 「いや・・・あのさ、カマ、かけたんだけど。」 「・・・」 「半分は、予想だったんだけど。っていうかこのシャープペンの芯のネタ、漫画からだったんだけど。」 「…」 綱吉は、俺の肩をポンと叩くと、物凄くさわやかな笑顔で「犯罪者には、なるなよ☆」と親指を立てた。もちろん、下に向かう方ではなく、上に向かう方で。 昨夜の事を思い出すと頭が痛んでくる。 思わず眠る綱吉の額に「肉」というオーソドックスな落書きをしたくなった程だ。 そうだ。そうしよう。と、油性ペンを持ってきたところで綱吉が目を覚ましたので綱吉の額に「肉」の字を書く事は出来なかった。 簡単な朝食を食べながら、綱吉は昨日自らが聞きそびれたであろう疑問を俺に投げかける。 「な、リボーン。」 「何だ。」 「昨日は『名前は知ってる』って言ってたけど、何で知ってるの?てゆか、なんて名前。」 俺は世間話の流れの会話に、特に深く考えずにありのままを伝える。 「いや、その子小学生だろ?」 「うん。」 「名札がついててな。並盛小学校の、『獄寺隼人』っていう子だ。」 「…ふぅん…ん?んん?」 「どうした?」 「…ちょっとまって。リボーン。」 「なんだ、俺の魚はやらねーぞ。」 「そうじゃなくて、その、今、並盛小学校の『獄寺隼人』って言った?」 「言ったぞ。」 「間違いない?」 「あぁ、間違いないな。」 綱吉は含み笑いをしたようにププッを笑顔になり、俺の肩をガシッと掴んだ。 「リボーン、もうそろそろ誕生日、だったよな?」 「あっ、あぁ…」 「俺からのとっておきの誕生日プレゼント。楽しみにしておきなよ?」 「??」 なにやら楽しそうな綱吉を訝しげな表情で見ながらも、俺は朝食を食べた。 ししゃもに味噌汁にご飯につけもの。料理は苦手じゃない。 朝は米とミソと魚が一番だ。と、イタリア人である俺はそんな事を考えていた。 それから綱吉は俺の誕生日に、家庭教師のバイトを紹介してきた。 なかなかの好条件。 そして綱吉からの「断ったらリボーンの思い人が小学生だってことバラス」と脅しもあり 俺はその家庭教師のバイトを受ける事にした。 当日。 人見知りをする性質ではないが、家庭教師というバイトは初めてだ。 上手く教える事が出来るかという不安と、やはり見も知らぬ他人の家に上がりこむというのに少し抵抗があり 俺は珍しく少しだけ緊張していたと思う。 呼び鈴を鳴らすと、中から父親らしき人物?が顔を出した。何故、自宅の中で白衣を着ているのかは分からない。 無精ひげをはやした男だった。 「んーーー?お前が家庭教師か?」 「沢田綱吉の紹介で・・・」 俺が挨拶をしようとしたら、その男は俺の言葉を遮り言葉繰り出す。 口下手な類に入る俺は、それに言葉を挟むことも出来ずにただ聞くだけになっていた。 「まぁ、沢田の紹介だから変なのじゃないだろうが。ま、いい。あがってくれ。」 「・・・」 「自慢じゃないがウチの子は成績優秀でな。本来なら家庭教師なんざー必要ないんだが、結構な人見知りでな。 それを克服させたいって事もあるんで、勉強よりも社交性を学ばしてやってくれ。」 「・・・」 「ってもお前もたいがい無愛想だな。まぁ、沢田の事だ。何か考えがあってだろうが。ウチの子は男の子だけどこれまた 可愛いんだなぁ。・・・お前、へんな気を起こすなよ。」 「冗談を・・・」 「まっ、ジョークだな。ジョーク。お前さんなら引く手多数だろうしな。なにより小学生の男の子に手を出すような変態にも見えない。 あれだろ?お前どっちかっつーと清楚で守ってあげたい可憐なお嬢さんよりもグラマームチムチの知的なお姉さんのタイプが好きだろ?」 俺はその問いに頷くと、名前はシャマルだと自分から自己紹介して来たその男は、「やっぱりな。」と言った。 「うちの子は清楚で守ってあげたい可憐なタイプだからな。まぁ安心か。あっ、お前名前は。」 「リボーンだ。」 「そうか、あっ、リボーン。俺はお前の雇い主だけどタメ口でいいからな?どーも俺、ヤローに敬語使われるの虫唾が走るのよ。俺の名前も呼び捨てでいーから。」 「俺もそっちの方が助かる。…ところでシャマル。その子に手を出さないように酷く気を使っているが前に何かあったのか?」 「んー、いやな、ウチの子男の子だけ本当可愛いのよ。贔屓目じゃなくてな。だから前につけた家庭教師、これも男だったんだがウチの子を襲いやがってよ。まぁ俺が飲み物でもと部屋に入ったときに今まさに押し倒して服をぬがさん!ってしてた所だったから未遂で済んだんだが。」 「だったらどうしてまた家庭教師を。」 「社交性ってやつを学ばせたかったんだよ。学校に言ってはいるけど満足に友達一人作れなくてな。もーちょっと回りに打ち解けられるようにしてほしかったわけだ。」 「また、俺も同じように襲うかもしれないのに?」 「あー、それはな。沢田の紹介だからな。」 「綱吉の・・・?」 「沢田は昔からウチの子を可愛がってて、ウチの子も沢田には心を開いてるんだ。だからその沢田にいい家庭教師はいないか?って聞いたんだよ。そしたら「一人ばっちり適任がいる」って言うじゃねーか。で、それがリボーンってわけだ。」 そんな経緯があったのは綱吉からはまったく聞いていなかった。 しかし、綱吉は俺に「誕生日プレゼントだ」と言ってこの家庭教師のバイトを持ってきた。 「で、ココがウチの子の部屋。おーい、入るぞー。」 シャマルがそう言うと、中からは「はーい。」という返事が聞こえてくる。 シャマルがドアを開けると、中には床に座って、ベットに寄りかかって本を読んでいる子供の姿が会った。 「隼人。今日から家庭教師をしてくれるリボーン先生だ。今度は沢田の紹介だから前の奴みたいにヘンな事はしないぞ。」 子供はゆっくりと本から視線を話すと、俺に目線を会わせた。 「リボーン、先生?」 「俺のことはリボーンで良い。敬語は嫌いなんでな。」 「リボーン・・・さん?」 「・・・まぁいいか。」 俺は仏頂面だったと思う。 そんな俺に少し怯えた様子だったが、綱吉の紹介だという事で安心をしているのか、 少し戸惑ったような顔で曖昧に微笑んだ。 本を閉じて横に置き、立ち上がってペコリとお辞儀をした、少年。 「はじめまして。獄寺隼人です。宜しくお願いします。」 最高のバースディプレゼントだった。 今までの中で、綱吉に感謝した瞬間だった。 「宜しく」 俺は仏頂面でそう答えながらも、内心は舞い踊るほどだった。 それから俺が、ハヤトに手を出すのは、1年後。 法律はきちんと守りましょう! END
熊さんに捧げた家庭教師番外編。リボーンさんのキャラが!(爆笑) |