「…あの、十代目…。」


「え?」



放課後ガヤガヤと賑わいだした教室内、綱吉も帰宅をしようと鞄を肩に掛けた時に背中に掛けられた声。

振り返った先には、どこか思い詰めたような獄寺の顔。

いつも満面の笑みで駆け寄ってくる彼らしからぬ表情であった。



「獄寺くん、どうしたの?」


「…その……ご相談が、ありまして。」










  この腕の中に











その後2人は部活に向かった山本に別れを告げ帰路に着いた。

綱吉は若干いつもより歩くスピードを落とし、未だ俯いてしまっている獄寺に視線を送った。

先ほどから何かを言いかけては、また口を閉じる、を繰り返している獄寺。

綱吉は黙って獄寺の言葉を待つことにしている。



「……あの、十代目」


「ん?」



ようやく意を決したように顔を上げた獄寺に、安心させるように微笑を向ける。

それを見て、獄寺の肩から少しだけ力が抜けたのが分かる。



「獄寺くん、相談って何?僕に出来る事なら何でも言ってね。」

「も、勿体無いお言葉…、有難う御座います…!…その……リボーンさん、の事なんですけど…。」

「……リボーン?」



気まずそうに視線を彷徨わせながら獄寺が言った名に、綱吉は思わず間抜けな声をあげてしまった。

まさか今リボーンの名がでてくるとは、全くの予想外だった。

しかし顔色の悪い獄寺を見ると、どうやら随分深刻な悩みのようだ。



「…リボーンがどうかしたの?獄寺くん。」


「……その…リボーンさんって…俺の事が、お嫌い、なんでしょうか…?」


「…………はぁ!!?」



思わずアングリと口を開けて固まってしまった綱吉の反応も最もだろう。


なんたって獄寺とリボーンは、もうウザいくらいにラブラブ状態なのだ。

(ここは敢えて“恋人”とは言わない。赤ん坊に獄寺を取られたのが悔しいとか、そんな事は…決して…ない、が…。決して…)

リボーンの、獄寺とその他の者に対する態度の違いときたら、それはもう…!


昨日だって綱吉は就寝前にリボーンに散々惚気を聞かされたのだ。

獄寺が可愛かったとか可愛かったとか可愛かったとか…。


それなのに、この獄寺の質問はどういう事であろう…。

リボーンが獄寺を嫌うなど、天と地がひっくり返ったって有り得ないだろうに。



「ご、獄寺くん?何言ってんだよ。そんな事あるわけないじゃん。」

「で、でも…!!」



顔を引き攣らせながら言った綱吉に詰め寄る獄寺。

その瞳が若干潤んでいるように見えるのは錯覚じゃない。



「リボーンさん…俺には抱っこさせてくれないんすよ!?」

「…は?」

「十代目や姉貴や、ましてやあの野球バカにだって抱っこさせたり肩に乗ったりしてんのに…!俺にはまともに触らしてもくれないんです!!」

「……あー…そういえば…」



確かにリボーンが獄寺の肩に乗ったり、抱っこされたりしてることはあまり見たことがない。

改めて考えみると、何故なのだろうか…。



「この前だって俺が抱っこしようとしたら、思いっきり鼻に蹴りを喰らって鼻血騒ぎになったり…。十代目、どうしてリボーンさんは…。」


「ご、獄寺くん!そんなに落ち込まないで!大丈夫だよ!リボーンにだって何か理由があるんだって!アイツが獄寺くんを嫌いだなんて、絶対有り得ないから!」


「ほ、本当すか?」


「もちろん!(認めたくないけど)…そうだ、今日帰ったらリボーンにそれとなく聞いてみるからさ!だから心配しないで。」


「十代目…有難う御座います…。」



グスッと鼻を啜った後、獄寺は一礼をして綱吉に別れを告げた。

その背を見送って、綱吉は今更ながらため息をつく。



「…はぁ…面倒な事になったな…。」



ガックリと肩を落とし、綱吉は自宅の玄関へと向かった。










***



「……は?獄寺がそんな事を?」


「そうなんだよ。リボーン、何とかしてあげてよ。」



自宅に上がり部屋へと向かうと、そこにはいつもように小さな家庭教師が我が物顔で寛いでいた。

綱吉は鞄を床に放り投げて早速例の件を持ちかける。

それを聞いたときは、さすがのリボーンも多少は驚いたようだった。


「…アイツ、そんな事気にしてやがったのか。バカな奴だな。」

「でも獄寺くんは真剣に悩んでたんだぞ。なぁ、リボーン。どうして獄寺くんには触れさせてやらないんだ。」

「・・・」

「リボーン!」


だんまりを決め込んだリボーンに綱吉は思わず声をあげた。

綱吉の真剣な瞳を横目で見て、リボーンは大げさにため息をついた。


「ツナ、獄寺をここに呼べ。」

「え、へ…?」

「今すぐだ。」

「え、あ、うん…!」


訳が分からずも慌てて獄寺の携帯へと電話をかける。

電話越しに今から来るようにとだけ告げると、「すぐに行きます!」とキンと響く大声で言われ、次いでブツッと通話が途切れた。

獄寺が来るまでの間、綱吉はジッとリボーンの様子を窺っていたが、相変わらず考えが全く読めない赤ん坊だ。

そして5分ほどして獄寺がやって来た。

獄寺は奈々に軽く挨拶をし、階段を昇り綱吉の部屋へとやって来る。


「いらっしゃい、獄寺くん。まだ帰る途中だったでしょ?ごめんね、急に…。」

「い、いえ!とんでもありません!」


申し訳なさそうに言う綱吉に獄寺はピンと背筋を張って応えた。

しかしやはり視線はリボーンの方へと自然と流れていってしまう。


「よく来たな、獄寺。まぁ座れ。」

「あ、はい…」


気まずさから少し俯いて大人しく正座をする。

ズーンと重たい空気を背負っている獄寺に、リボーンがヒョコヒョコと歩み寄っていった。


「おい、獄寺。」

「は、はい。」

「俺はお前を愛してるぞ。」

「!…リ、リボーンさん…!」

「(…赤ん坊のくせに…)」


サラッと臭い台詞を言い放った赤ん坊に綱吉は呆れ返ったが、獄寺は素直に感動しているらしい。

頬を赤らめて瞳を潤ませてリボーンを見つめている。



「…でもな、だからこそ俺はお前の肩には乗らない。」

「え…」

「抱っこさせたりもしない。」

「……どうして、ですか…」



しかし次いで告げられた言葉に、獄寺の顔色がどんどん青褪めていく。

震える声で問いかければ、リボーンは珍しくも少し言いよどんでいた。



「…言わなきゃ分かんねぇのか?」


「っ…、す、すいません…!でも俺…何か悪い所があるなら直しますから…!!」



縋り付くように必死に詰め寄る獄寺に、リボーンは大きなため息をつく。

綱吉が心配そうに見守っている中、リボーンは言い難そうにしながらもようやく口を開いた。




「お前が悪い訳じゃねぇぞ。…だがな、好きな奴に軽々と抱っこされて嬉しい男がいるか?」



「……え?」



「お前の肩に乗れば、俺がどれ程お前より小さいかが思い知らされるだろうが。」



「「・・・」」




あまりに予想外の事に獄寺も綱吉もポカンと呆けてしまった。

珍しくバツの悪そうにしているリボーンに、ようやく先ほどの言葉の意味を理解する。



「……プッ、アハハハ!!リボーンってば、一応自分が赤ん坊だって事気にしてたんだ!!アハハハ!!」


「…うるせぇぞ、ツナ。」


「へぶ!!」



腹を抱えて笑い転げている綱吉の頭にリボーンの蹴りがヒットし、綱吉は顔面から床に沈んでしまった。

その間にも獄寺は未だにポカンと動けずにいる。



「…そんな訳だから、お前を嫌いになった訳じゃねぇぞ。」

「リボーンさん…」

「もうくだらねぇ事気にすんじゃねぇぞ。」

「は、はいっ。」



そこでようやくハッと我に返った獄寺。

しかし未だに何か言いたそうにリボーンに視線を送っていた。



「リボーンさん、すみません。俺、早とちりで…。でも、あの…ひとつだけ、お願いしてもよろしいでしょうか?」


「…なんだ?」



期待の眼差しを向ける獄寺に何となく嫌な予感がして、リボーンは僅かに眉を寄せた。



「その…1回だけ、抱っこさせていただけないでしょうか?」


「…おい」


「1回だけでいいんです!そしたらしばらくは我慢しますから!…だって、やっぱり、他の奴らがリボーンさんにいっぱい触れてるのに俺だけ…なんて、悔しい…。」


「……1回だけだぞ。」


「!は、はい!」



何だかんだ言っても、結局は獄寺に弱いリボーン。

縋るような瞳で言われ、ため息をつきながらも承諾をした。

獄寺は顔を輝かせ、ゆっくりとリボーンに手を延ばす。

リボーンの体に手を回して大事に大事に持ち上げ、自分の胸元に寄せてギュッと抱きしめた。

この小さな温もりが今自分の腕の中にある事実に、獄寺の胸に歓喜が溢れてきた。



「大好きです、リボーンさん!」


「…全く、今日だけだぞ。」


「分かってます」


「…待ってろよ。すぐにお前より大きくなって、俺がお前を抱いてやるからな。楽しみにしてろ。」


「はい!」





(………なんなの、このバカップル)





完全に存在を忘れられてる綱吉は、砂を吐きそうな程の甘いラブシーンを目の当たりにして魂が抜けるような思いだった。



(赤ん坊が何気障な事言ってんだよ。獄寺くんもそれにトキめいちゃってるしさぁ…)



もういっその事部屋から出て行きたい気分だが、下手に物音をたててこの雰囲気をぶち壊し、リボーンに恨まれては元も子もない。

大人しくこの恋愛ドラマが終わるのを待っているしかないようだ。




(…頼むから他所でやってくれよ…。)




綱吉のそんな心の声は、完全に自分たちの世界に浸っている2人には当然届かない。












END


熊侍さんに捧げる相互リク小説のリボ獄でした。
…ありきたりな内容ですみません(汗)
原作であまりにも2人のスキンシップが少なくて寂しいもので…!
それで勝手にこんな理由を考えてみました!…という感じで。
しかもキャラ違いまくりで…。
相変わらずの駄文ですみませんっ(涙)
熊侍さん、このようなものでよろしければ、どうか貰ってやってください!
相互有難う御座いました!



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fragmentの天谷様より書いてもらいました!! リボ獄←ツナです!!
き…きゅー! 超ラブラブリボ獄キター!! 獄が大好きリボーンさん! 獄には甘いリボーンさん!! きゃっほう!!
あまりのラブさにツナもうざがってますね! リボ獄においての被害を被るのは大方ツナです。(笑)
ありがとうございました! 駄文なんてとんでもないです!! 激萌え文でした!!

…つか、相互リク申請のとき「どんな話が良いですか? マイナー獄受け以外なら書けます」というお言葉に対し、
「あ、じゃあリボ獄でお願いしますv」と返した熊に見限らないでいてくれてありがとうございましたv
切り返しに「分かりました! リボ獄はマイナーじゃないですからね!!」といって下さった天谷様が素敵で仕方がないですv