ねえ、10代目。 覚えてますか? 夏のあの日。 二人して遠くまで出かけて、 たまたま通りがかった境内での夏祭り。 子供みたいにはしゃいで、わたあめ食べて。 りんごあめ片手に、それから金魚すくいもして。 疲れたねって楽しそうに笑った顔、忘れません。 東京では見れない蛍を見に、知らない道を歩いて 小さな綺麗な水のあるところまで行きましたね。 一斉に光るそれを見たとき、その手を伸ばして 一生懸命捕まえようとした何度目かの空の手の平。 苦笑して、あなたの背の後ろで一つの光を捕らえて、 「10代目」ってそっと開いてみせた時。 まるで宝箱でも開くようなそんな気持ちで、ずっと あなたの嬉しそうな横顔を見ていました。 秋のある日。 風が綺麗に木の葉を舞い上げて通り過ぎるのを 横目に、あなたは何かを探していましたね。 オレはずっとそれが何なのか分かりませんでした。 季節は移ろい手の形をした赤い葉を手にして、 小さく笑った顔がとても悲しそうで。ひらりと 指から擦り抜けて落ちていくそれを目で追いました。 あなたが探しているものが分かったとき、オレは あなたを想いました。ふわふわと風に揺れるそれは とても似ていたので、思わず笑って手で触ってみました。 やさしい、秋の匂いがしたのを覚えています。 冬の寒い日。 滅多に見られない雪が空を漂っていました。 それはほんの15分くらいで止み終わってしまったけれど。 あなたは雪が手に乗らないかと灰色の雲の空を見ていました。 オレはあなたより高いところに手を伸ばして同じようにして 雪が自分の手の平に乗るのを待ちました。雪が降るくらいの 低い気温です。あなたは白い息をはあっとその手に吹き掛けて 凍える指先を温めていました。でもオレはどうしても、 あなたに雪をあげたかった。だから凍るような冷たい手も そのままに「寒いですね」ってそっと指を折り曲げて。 あなたの目線のままにゆっくりとそれを解きました。 オレの手は冷たかったからちゃんと雪は形を残して、 やがて綺麗な一粒の水滴となっていきました。 雪を間近で見たあなたは目を細めて、すごいねって ちゃんと結晶が見えるんだねって笑って言いました。 春の風の強い日。 学校の桜の木のやっと咲き始めた小さな花弁が 強い風に煽られていくつもひらひらと舞っていました。 それは重そうに咲き乱れている時のそれよりも、ずっと 寂しげなものだったけれど、あなたはしばらくの間そこで 立ち尽くしていました。オレはその時のあなたが酷く儚げで 何を考えているのか痛いほどによく分かっていたのです。 けれど声さえ掛けれず後ろからあなたの背を見詰めるしか なかった。いつしかあなたは両手を空に伸ばし瞳をすっと 閉じました。まるであなたが桜の祝福を受けているように 思えて、まぶしくてオレは目を細めました。あまりに綺麗で …消えてなくなってしまいそうで。そうすると、ふわりと あなたの肩にひとつの花弁が舞い降りました。オレは自然に それを手に取りました。気付いたあなたが笑って言いましたね 「獄寺くんにも花弁ついてるよ」って。オレは泣きそうになって そっとあなたを抱きしめました。ずっと。ずっと。 …四季が巡るたびに あなたを思い出します。 オレはあなたの隣でずっと笑っていました。 あまりに幸せで、長くは続かないと知りながら その時ばかりは永遠のように感じていたんです。 言葉にしなくても あなたはきっとオレの気持ちに気付いていたでしょう。 あなたの傍にいない今 やっと言葉にすることが出来ます。 好きです。10代目。 二度と会えないかも知れません。 この言葉はもう届かないかも知れません。 けれどオレはずっとあなたを想っていました。 …オレは本当に幸せでした。 あなたに出会うことができてよかった。 伝えたいことはどれも感謝の気持ちです。 お話したいことも、沢山あるんです。 でも。 …ねえ、10代目。 オレと過ごした日々。 覚えていますか-----------? ******** (……BGM : 「diary2」 / BGMの小箱 さま) だいすきなあのサイトさまに。 |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ す、素敵過ぎる・・・! ていうかすごい切ないです・・・!! もう熊は最初の「ねぇ、10代目。」時に聞こえてくる音楽で既にノックアウトです!(早っ) この話、死んでいるのはツナっぽいですが実は獄寺くんが死んでるらしいですよ! 素敵!!(え) 四季の思い出を語る獄寺くん。その一つひとつが幸せなもので。そしてとてもとても大切なもので。 幸せは長く続かないものだと知りながら、それでも幸せだった獄寺くんに全部持ってかれました! 獄ツナでもこういう話なら熊は全然おっけー! もう全てが理想です!! ありがとうございました!! |