クリムゾンの悪夢(10年後設定) 「すべて俺のせい、です・・・」 いつもと変わらないはずなのにやけに重苦しい空気に満たされたそこは、主のいないボンゴレファミリーボスの執務室。 そこで獄寺は、頭を垂れたまま喉の奥からようやく声を絞り出す。苦渋に満ち自責の念に囚われたその姿は、普段からは想像もできないほどに弱々しく、頼りなくさえ見えるほどだ。 それを革張りのソファに身を沈め、長い脚を持て余すように執務机に投げ出していたリボーンは懺悔にも似た独白にちら、とだけくすんだ銀髪を一瞥し、「それで?」と冷やかに言葉を紡ぐ。 「確かに今回の一件は、ツナの護衛をしていたお前の落ち度といえるだろう。しかし殺し屋の身柄を確保し、そいつを雇った裏切者も拘束済みだ。病院に搬送されたツナの怪我もたいしたことなく生きながらえてる。お前がとっさにツナをかばったこともだが、部下に的確な指示を出し短時間で事態を収拾したのは他でもないお前の功績だ。―――頭の固いジジィどもになに吹き込まれたのかは知んねーが、責任とってどうとかつまんねぇこと考えんじゃねーぞ」 リボーンの言葉に獄寺は、うつむいたままこの人には敵わない、と声もなく苦笑する。 「昔からお前は、ツナを中心に物事を考えすぎだからな。お前があいつの前から姿を消したところでツナのためどころか、逆効果でしかないことくらい・・・・・・お前のことだからわかってねーんだろうなあ・・・」 顔を上げ、その言葉に小首を傾げる獄寺の様子にリボーンは息をつく。昔から自分のこと―――特に色恋に関しては、獄寺に思いを寄せる連中が哀れに思えるほど鈍かったことを思い出したからだ。 「つーかお前、ツナが撃たれた日からろくに寝てないんじゃないのか?」 それに食事も、と指摘され、獄寺は緩い笑みを浮かべてみせる。 「あなたに隠し事はできませんね」 「当たり前だ」 淡々と返された言葉。が、その深い漆黒の瞳は獄寺の身を案じているのだと饒舌に語り、獄寺はじわりと胸が熱くなるのを感じた。 「食欲がないのはともかく、寝ようとしても眠れないんです。目を閉じるとあの光景が浮かんでくる。ほんの一時まどろむことができても、嫌な夢ばかり見てしまって…」 深く濃く濁った赤色の、夢とも現実とも区別のつかない悪夢。 クリムゾンの視界に倒れるツナの姿に飛び起き、こらえきれず嘔吐したこともある。 とはいえ吐くものなど胃液くらいしかなく、震えのとまらない身体を自分の腕でかき抱き、これなら寝ないほうがマシだと氷のように冷たい手で口元をぬぐった月のない夜。 「来い」 短く促された獄寺は、リボーンと視線を絡ませると言われるがままその距離を縮めていった。毛足の長い絨毯にその靴音は吸い込まれていく。 2人分の体重を支えることとなったソファはかすかに軋むが、音を立てることはなかった。 それでもその膝の上で、リボーンの胸元に頬をつければ聞こえてくる心音。 さらさらとした手触りを楽しむように髪を梳かれ、獄寺が穏やかな睡魔の到来にそっと目を閉じればその指先に上向かせられ、やさしい口付けを与えられる。 それにふわりと穏やかな笑みを唇に乗せ、獄寺は静かな眠りへと落ちていった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 熊が世と原作のリボ獄の無さに嘆いていたらアネモネ の雨宮さんが熊の為に書いてくれました! 感謝感激雨霰って奴ですね! きゅーきゅー!! 雨宮さんのお話は相変わらず素敵ですね! 素敵素敵ってお前それしか言葉知らないのかよって言われそうですがだって素敵なんだよ!!(逆切れ!?) はぅ…ありがとうございました! このお話を糧に熊は今日も生きて行きたいと思いました! 獄寺くんを心配するリボーンさんてレアですよね☆ はぅはぅv |