今日も平和な白蘭宅。

無邪気な子どもの笑い声と、
気持ち悪さの滲む大人の笑い声が響いていた。





「ほ〜ら、はぁくん!紙吹雪ぃ〜v」

「きゃぁぁv」

「ちょっ!!白蘭さんっ!!そっちは下に新聞紙敷いてないんですから散りばめないで下さいっ!;」

「後で掃除機かけるから良いでしょ〜?」

「誰が掃除機かけるんですか?白蘭さんですか?そんなわけないですよね?」

「うん☆勿論正ちゃんがかけるんだよ〜♪」

「それが嫌だから言ってるんですっ!!」

「正ちゃんの怒りん坊〜」

「おこっ、ぼ〜!」

「白蘭さんが怒らせてるんでしょうっ!!;‥‥はぁぁ。もう良いです;」

「え?散らかしても良いの?やったぁ〜!」

「や、ちぃぁ〜っ!」

「そういう意味じゃ有りませんっ!!;」




正一の言葉は虚しく、掃除が簡単になるようにと床に敷いた新聞紙の上以外にも紙吹雪を散らす白蘭。
それを見た隼人も自由に紙吹雪をばら撒き始める。


状況は分からないけど、取り敢えずつられてハシャグ隼人に悪意はない。
というか、心底楽しそうに紙吹雪を散らして遊ぶ隼人はすっごく可愛くて、もう何でも良くなってくるのだった。

‥‥白蘭に至っては散らかしてほしくないという状況が分かっているだろうから勿論苛立つ。


そんなこんなが有りながらもひとしきり遊び終って片付けた時、隼人は何かを見付けたのか窓に近付いて行った。




「はぁくん?どうしたの?外に何かいる?」

「あ〜‥」



隼人の見ている先に視線を向けるも、特に変わった物は見当たらない。
窓の外には青い空と白蘭宅を囲む塀が見えているだけ。
それでも隼人は窓にへばり付き、何かを必死に伝えようとしている。


「あっ!うう〜‥!」

「ん〜?なになに?スズメでも居たのかな?」

「り、びょっ!」

「え?」

「りびょ〜!」

「‥‥‥‥えええっ?」



窓に張り付きながら伝えようとしているのは、どうやら外にリボーンが居るという事らしい。
隼人は以前白蘭達と行ったデパートでリボーンと出逢った。
自分と同じ年頃の子どもと関わるのが初めてだった隼人。その事もあってか、はたまた何か通じ合うものがあったのか‥‥隼人は短時間だったというのにリボーンに急速に懐き、家に帰ったあとも『りびょは〜?』と、再び逢える事を楽しみにしている程だった。


そんな隼人の様子に勿論白蘭と正一は不満隠せず。
何とか忘れさせようと、その出逢いの日から今まで一切リボーンの名前を出していなかった。


それが今日、突然隼人が誰も居ないはずの外を見ながらリボーンの名前を口にしたのだ。


( どうしよう‥はぁくん、リボーンくんに会いたくて幻覚が見えちゃった?; )


僕が拗ねたりしないでリボーンくんを家に呼んでいれば‥!
と多大な不安を抱えつつ、白蘭はもう一度眼を凝らして窓の外を見る。
そして、塀の上に何か黒いものが動いているのに気付いた。


「りびょ〜!」

「え‥?は、はぁくん‥あれは‥;」

「ばぁーらん!りびょ、いちゃ、ねぇ〜v」

「いや‥;あれはリボーンくんじゃなくて‥;」



蟻だよ。






塀の上で動き回る蟻を指さし、『りびょ!』と喜ぶ隼人。
リボーンと会ってから数日経った今。どうやら隼人の頭では『黒くて小さい=リボーン』となっているようだった。



そして暫くすると蟻は塀の向こうへと姿を消し、隼人は寂しそうに『りびょ‥ ばぁ、ばぃ‥ 』と手を振った。



あれはリボーンじゃないけど、哀愁を漂わせる隼人の姿に、白蘭と正一は胸がキュウッとなった。







「あ!りびょ!」

「え?また蟻さん来たの?」


数秒後再び顔をパァッと明るくさせた隼人。
また蟻が戻って来たのかと思ったら、次に見えたのはダンゴムシの姿だった。



「‥‥‥‥」

「りびょ、きちゃ!」

「あ、うん。あれは‥‥本当はダンゴムシだけどね‥」



良かったねぇ〜v と、取り敢えず喜んでいる隼人の頭を撫でる。

まぁ‥ダンゴムシならお家に入れても良いかな?

白蘭はそう思い、窓を開けようと手を掛けた。


もし本当にリボーン本人だったら家には入れないけどね。


すっかりリボーンを恋敵のように思っている白蘭。
これ以上隼人と親密にはさせない!と決意(&嫉妬)し、白蘭は会いたがっている隼人には悪いが、リボーンを家に招く事はしないでいたのだ。


「あうっ、りびょ〜っ!!」

「へっ!?」



リボーンと隼人が仲良く遊んでいた時の忌々しい記憶を思い出していると、突然隼人が先程よりも大きく、興奮気味でリボーンの名前を呼び出した。

そして慌てて窓に眼を向けると、今一番見たくなかったリボーン本人の姿があった。




「ばぁ〜らんっ!りびょ〜っ!」

「は、はぁくんっ!!見ちゃ駄目っ!!;呪われるから‥!!」


サラリと酷い事を口にして隼人の視界を塞ごうとする白蘭。
だが時既に遅し。バッチリ塀の上を歩くリボーン(おそらく散歩中)の姿を見てしまった隼人。

両手で窓をバンバンと叩き、白蘭にリボーンの存在を知らせようと必死になっている。

‥‥そんな隼人を見て、誰が見ない振りを出来ようか。





白蘭は隼人をゆっくり窓から離すと、無言で窓をカラカラと開けた。
そしてその気配を感じて動きを止めたリボーンに声を掛ける。


「やぁ、久し振り。リボーンくん」

「ん?お前は‥。なんだ?此処がお前の家か?」

「はははっ、知ってて通りかかったんじゃないの?」

「いや、偶然だが‥」

「あのね、出来れば遠慮してほしいんだけど‥家に上がってかない?」

「‥それは招いてるのか去れと言ってるのかどっちだ?」

「ん?僕は招いてるよ〜♪はぁくんがリボーンくんに会いたがっちゃっててさぁ」

「隼人が?」



その言葉にピクリと明らかに反応を示すリボーンくん。
ああ、はぁくんと同じ子どもなのに何でこうも小憎たらしく見えちゃうんだろう。




「あ、でも無理にとは言わないよ。リボーンくんは忙しいもんね!うん、わかったよ。はぁくんにはそう言っておくから気にしないで!引き止めてごめんね☆」

「そこまで言うなら邪魔してやるか」

「聞いてない‥。僕の話し聞いてないでしょ?」




『忙しいんだから無理しなくて良いんだよ!』と必死な白蘭を軽くスルーでリボーンは塀から窓枠へと飛び移る。
流れを呆然と見ていた隼人は、突如近くに来たリボーンに驚き眼を丸くする。


「りびょ〜っ!」

「チャオッス。隼人、久し振りだな」



隼人の側まで行き、優しく頭を撫でるリボーン。
家の中に来たリボーンに驚きながらも、隼人は頭を撫でられて嬉しそうにニコニコしている。








「ばぁーらん!りびょっ!」

「そうだね〜。リボーンくん遊びに来てくれたねぇv良かったね〜v」

「よか、ねぇ〜v」



自分は全然良くはない。
でも、隼人が喜んでくれるのは凄く嬉しい。




複雑な心情で顔を歪ませている白蘭を見て、リボーンは口を開いた。



「おい。後は若い者同士で‥って事で席をはずせよ。気の気かねぇ保護者だな」

「これお見合い!?そんな事するわけないじゃないっ!!はぁくんが食べられちゃわないか心配だからね!ずっと見てるからっ!!」

「たべりゅ〜?」


その言葉に首を傾げる隼人。
白蘭は笑顔で『何でもないよ〜v』と告げると、二人に間違いが起きないよう見届ける為その場に腰を下ろした。(互いに乳児の二人になんの間違いが起きるというのだろうか)


そして先程から反応を見せない正一はというと‥
リボーンの再登場に胃と眼鏡が悲鳴をあげ、藁人形でも作ろうかと本気で思案していたのだった。







「うう〜vりびょ〜v」

「ははは、相変わらず可愛い奴だな」


そう言い更に隼人を撫でるリボーン。
初めは優しく髪を梳くように撫でていたリボーンだが、その手つきはガシガシワシャワシャといったものに変わり‥‥傍目には擦り寄る動物を撫でるムツ○ロウさんに見えた。



「ちょ、リボーンくん?はぁくんは犬とかじゃないからね?」

「ん?そんな事はわかってるぞ」

「りびょ!」

「なんだ?遊びたいのか?ちょっと待ってろ‥」


そしてリボーンくんは部屋を見渡し、部屋の隅に置かれていたボールに眼を止めてそれを手に取った。




「隼人、ボールで遊ぶか」

「あいっ!」

「よし、いくぞ? ほら‥‥取ってこい!」

「ぼぉりゅ〜!v」



リボーンくんの手から離れてコロコロと転がっていくボール。
はぁくんは眼を輝かせて懸命にそのボールを追う。






「あはははは!隼人は本当にボールが好きだなぁ!」

「‥‥‥‥」



いや、だからっ‥!!



犬扱いしちゃ駄目ぇ!と言いたい。ツッコミたい。
でも白蘭は制止を掛けられずにいた。


完璧犬扱いだけど‥
今まで普通にボールの受け渡しで遊んだ事しかなかったから気付かなかったけど‥‥
ボールを追い掛けるはぁくんのこの可愛さは何事っ?!



転がり進んで行くボールを一心に追い掛けるはぁくんはめちゃめちゃ可愛いっ!!
『まっ、ちぇ〜!』とか言いながら息を乱して突き進んでいく。
勢い良く転がされたボールはスピードも速く、足取りが拙い為に途中蹴躓いて『あうっ』って転びながらもはぁくんは再び起き上がってボールを追う。


あ、なんか鼻が熱くなってきた。
ついでに液体が垂れてくる感触。


ヤバイ、ティッシュ‥と探していると、
リボーンくんが何やら蹲って緑色の小さい生物を床にバシンバシン叩きつけてるのが眼に入った。(リボーンくん‥もしかして萌えてる?)



まだ見た事なかったはぁくんの可愛い姿に、いつの間に復活したのか、正ちゃんは呼吸荒くカメラのシャッターを響かせまくっていた。







「隼人君、可愛っ!!こっち向いて〜!」

「う?」

「は、はぁくん‥最高!//」

「なんだ?この遊びは不満だったんじゃないのか?」

「 そ ん な の 過 去 の 話 だ よ ! ああ〜// あんなにボールに翻弄されちゃって‥// はぁくんは何しても可愛いよぉ〜!//」

「お、ようやくボールに辿り着いたか。」



壁にぶつかって動きを止めたボール。
そのボールにようやく追い付いて、隼人は嬉しそうにボールを持ち上げる。



「ぼぉーりゅ〜v」

「凄いよ!隼人君!」

「やっと捕まえられたねっ!」

「よく頑張ったな!」


ボールを捕まえられた隼人は3人にボールを見せる。
今隼人の手に抱えられているのはまさしく汗と努力の結晶。

隼人はそれを『凄い!』と褒められて嬉しくも照れたように笑う。



「はぁくん、しゅこ、い?」

「うん!凄いよ〜!v」

「天才ですね!オリンピックも夢じゃないです!」

「将来は最強のマフィアになれる力量だなっ!」



完全に褒めすぎだと思われる。

だが、皆隼人に骨抜きな今、それにツッコむものは誰も居なかった。




そして暫くボール遊びを繰り返し、気付けば時刻は昼時となっていた。



「あ、もうお昼ですね。隼人君、ご飯にしましょうか」

「あいっ!」

「リボーンくんは‥‥勿論お家に帰ってご飯食べなきゃだよね‥?」

「そこまで言うならご馳走になっていってやるか」

「 なにも言ってないんだけど? 」



誘うまでもなく一緒にお昼にする気満々のリボーン。
隼人は一緒に食卓に着くリボーンに『りびょも?りびょも?v』と眼を輝かせている。



「今日はオムライスですよ〜」


そして暫くした後、昼食を作り終えた正一が全員分の食事を机に並べた。
子ども用の椅子に座る隼人とリボーンの前に湯気が立ちケチャップでウサギの絵が描かれたオムライスが置かれた。正一の器用さにリボーンは『ほぉ。』と感嘆の声をあげる。


「ぴょん、ぴょん〜v」

「お前、意外に器用だな。なかなかやるじゃねぇーか」

「え?そ、そうですか?// 有り難う御座います」



素直に礼を言う正一。
さっきまでリボーンを隼人に集る悪い虫として見ていたのだが、普段褒められ慣れしていない正一は素直にリボーンの言葉に喜んだ。

リボーンさん‥そんなに悪い人じゃないかも// と正一はジーンと感動に浸ったり自分も席に着いた。



「ばーらん、あ〜んv」

「ん、ありがと☆」


いただきます、をした後、隼人は白蘭に自分のオムライスを食べさせた。

「はぁくんも、あ〜んv」

「あ〜‥、ん、ぉいしっv」


パクン、とお返しに白蘭がスプーンに乗せて差し出したオムライスを食べて御満悦の隼人。
ここまでは日常の光景。いつも白蘭と隼人の食事は互いに食べさせ合ってから始まるのだ。

だが、次に起こった事に白蘭は盛大に噴き出した。


「りびょ、あ〜んv」

「ん?‥‥しかたねぇな」


し か た な い じ ゃ な い だ ろ ! !



そのどこがしかたないって顔だ!?
締まりなくデレデレした顔しやがってっ!!


憤る白蘭を余所に、リボーンは隼人からオムライスを食べさせて貰う。
正一は『本当仲良しですね〜』と呑気に口にしていた。どうやら先程の言葉ですっかり懐柔されたようだ。






「味も良かったぞ。やるな、正一」

「有り難う御座います!リボーンさん!//」




食事が終わり、次は隼人はお昼寝の時間となるので、正一が皿を片づけている間に白蘭は布団の準備をする。



「はぁくん、お布団敷けたからお昼寝しよ〜♪」

「あいっ!‥りびょもっv」

「俺もか?」









敷かれた布団を見て、隼人はお昼寝だと分かり布団に向かう。
そして自分と同じく小さいリボーンも当然一緒に寝るものだと思い、リボーンの服を掴み布団に入るよう促した。




「りびょ!ここっ、ねぇーねっ!」



白蘭の家に来るのが初めてなリボーン。
きっとリボーンは場所とかが分からないだろうと思い、自分が教えてあげなきゃ!と張り切るように布団をバシバシと叩いて隼人はリボーンに寝るよう伝えた。



「りびょ!ここっ!」

「分かった分かった」



そんな一生懸命な隼人に逆らえるわけはなく、リボーンは隼人の示した布団に潜った。



「はぁくんのお布団なのにぃ〜(泣)」

「しかたねぇだろ。隼人が俺に寝ろと言うんだ」

「りびょ、いぃ〜こぉ〜v」





それだったらリボーンくん用にもう一つ布団敷くのにぃ;と嘆く白蘭を余所に、隼人はいつも自分がされているように、素直に布団に入ったリボーンを『良い子』と褒めて頭を撫でた。

そして迷うことなく自分もその布団に入り、リボーンと一緒にお昼寝体制に入った。




「ねん、ね〜!りびょ〜v」

「‥‥‥‥」



隼人は毛布から小さい手を出すと、寝かしつけるようにリボーンをトントンと軽く叩きだした。

チラリと顔を横に向ければ満面の笑顔の愛らしい隼人。
自分を眠らせようと小さな手で身体をトントンしている。
身体はピッタリとくっつき、隼人の高めな子ども体温が伝わりとても暖かい。



今までこんな安らかに昼寝に入れる環境があっただろうか?

いや、ない。



「りびょ?」




リボーンは気付けば毛布に顔を埋め、これが幸せというやつか‥と一人噛み締めていた。




「りびょ、ねんね〜たね〜」

「うん、(多分) 寝たね〜」

「ばぁーらん、はぁくんも‥とんとんて〜」



毛布に潜り、小刻みに震えながらも動かなくなったリボーンを見て、隼人はリボーンをが寝たのだと喜んだ。

そして次は自分にトントンして?と白蘭におずおずとお願いした。
控え目に少し伏せられつつも縋る様な輝きを放つ瞳で見詰められ、白蘭は隼人を抱き締めて転げ回りたい気持ちを必死に抑え、次は隼人を寝かせる為に軽く叩いた。


たまになかなか寝付かなかったりもある隼人だが、今日はリボーンが来て大ハシャギだった為すぐに寝付く事が出来た。

すやすやと眠りにつきつつも隣に居るリボーンにギュッとしがみ付く隼人。
まだ寝たわけではなかったリボーンは毛布の中で心臓をバクバクと高鳴らせていた。痛いほど鳴る心臓を抑えて隣をチラッと見れば天使の様な隼人の寝顔。
滑らかで白い肌はとても触り心地が良く、ツンと頬をつつけば張りがあり柔らかく弾力のある感触に頬が緩む。



「お、なんだこれは?実は頬に見せかけた白大福なんじゃないのか?そうか、隼人はお菓子で出来てるんだな?この俺の眼は誤魔化せないぞ〜」

「ん‥ りびょぉ‥」

「おいおい、夢にまで俺が居るのか?夢にまで俺を出張させてるんだな?モテる男は辛いぜ。少しは俺を休ませてくれ」

「ぁぅ〜‥。しゅ、きぃ〜」

「安心しろ。俺も愛している。‥‥って。おい!隼人!」

「うう〜‥」

「この‥いっちょまえに誘ってんのか?俺の指を舐めるなんて‥やるようになったもんだな。っ、そんなに強くしゃぶるな。指がふやけちまうだろう?はははっ、分かった分かった、隼人の想いは分かった‥。そうだな、あと10年したら相手してやっても良いぞ」

「ぅ、ゃぁ〜っ」

「何?そんなに待てないってか?あはは、困った奴だなぁ☆」



後10年しても隼人は11、2歳だからまだ犯罪だ。とツッコむ者もなく、
はははは☆と指をしゃぶりつくされながらももう片方の手で隼人の頬をムニムニと捏ね繰りながら愛人のビアンキですら見た事のない様な顔で笑う最強のヒットマン。
あまりの安らぎに少々キャラを見失いつつあった。








そしてそんな安らぎに心解されすぎたのか、隼人を見ながらリボーンも眠りについた。なんと熟睡。隼人の愛らしさに自分はいつ誰に命を奪われるか分からないヒットマンだという事が頭から飛んだようだ。危機感崩壊させ過ぎだろう。


その失態と言える出来事にリボーンは‥
『 隼人の寝顔は世界大戦も治めるぐれーの威力だったからな 』
と、後に語る。






だが‥平和の象徴になりえる寝顔に気を抜き過ぎた為‥‥
一つの衝撃がリボーンに襲い掛かるのだった‥。













「 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! 」



まるで地を揺るがすような声。
突如聞こえた悲鳴に、リビングで寛いでいた白蘭と正一は眼を見開き驚いた。



「な、なんですかっ!?;」

「今の‥リボーンくん!?;」



その悲鳴は聞き覚えのある声で‥
隼人とリボーンが寝ているはずの寝室から聞こえてきた。



「ひ‥う‥、うぁぁぁぁぁぁんっ!!;;」



悲鳴の後に聞こえたのは隼人の泣き声。
一体何事!?と、白蘭と正一は急いで寝室へと向かった。




「はぁくん!?リボーンくん!?」

「どうしたんですかっ!?」




バンッ!!と勢い良く扉を開ける。
すると、そこには『うぁぁぁぁぁ‥』と泣きじゃくる隼人と、布団の上に横になったままピクピクと痙攣の様なものを繰り返すリボーンの姿があった。



何が何だか分からず唖然となる白蘭と正一。

こうなった原因は‥およそ30分程前に遡る‥‥











********





「ん‥ばぁらん‥‥」



30分程前に隼人は眼を覚ました。
そして辺りを見て白蘭を探したが見当たらず、布団から出て探しに行こうとした時‥隣でリボーンが寝ているのに気付いたのだ。




「りびょ〜v」



大好きなリボーンが隣で寝ていた。(幼い為寝る前の記憶は薄れる)
その事に喜び、隼人は再び布団に潜ってギュッとリボーンに抱き付いた。



「りびょ、ねんね〜?」



まさかの熟睡をしているリボーンは隼人が抱き付いても頬をペチペチと叩かれても眼が覚める様子はなかった。(綱達が見たら凄まじく驚くだろう)


「りびょ、い〜こねぇ〜v」



隼人はぐっすり眠っているリボーンを良い子と褒め、よしよしと頭を撫でた。
そして枕元に置かれていたリボーンの帽子を被ってみて「りびょの〜v」と嬉しそうに頬を染めたり、リボーンのクルンとしたモミアゲを触ったりして遊んでいた。


だが、やはりそのうち段々と飽きてきて、リボーンの眼覚めを待つようになった。




「りびょ〜、おーきぃ〜」

「‥‥‥‥」







軽く揺さぶるも全然起きないリボーン。
一体どれだけこの状況に安心しきっているのだろうか。




「りびょ‥」



全く起きないリボーン。
隼人は徐にリボーンに近付くと、その頬にチュッとキスをした。



「きゃあv」



自分からチュウをしたくせに、恥ずかしそうに赤くなった顔を両手で隠す隼人。
暫く一人照れた後、再びリボーンに近付くと、チュウゥ〜〜ッと痕が残るぐらいのキスをした。

そしてまた『きゃあ〜っv』と高い声を出して顔を隠し恥ずかしがった。



ここから心を開いた者にはキス魔になる隼人の攻撃が始まったのだった。




「しゅき、よぉ〜v」



隼人はニコニコと笑顔で寝ているリボーンに、んしょっ、と圧し掛かる。
幼い両手でガシッとリボーンの頬を挟むと、躊躇いなくその唇にぶちゅ〜っとキスをぶちかます。


押し当てるだけのチュウだが、その圧迫力はハンパない。
しかもなかなか離れることはなく、自分の涎が滴り、リボーンの口やら頬がベタベタと湿ってくるのもお構いなしに接吻は続いた。


「りびょvかぁい〜v」




ぷはぁ、とようやく離した後、隼人は次にリボーンのおでこ。次は鼻。
と次々に全力のチュウをしていった。
おかげでリボーンの顔は良い具合にテカリを帯びていったのだった。


勿論リボーンは苦しそうに『うう‥』と唸ったが、眼覚めたわけではないので隼人の攻撃は止まない。 そして再び狙いを唇に定め、両頬を手で抑えてブチュッと吸い付いた時にようやくリボーンは意識を覚醒させた。



ぶちゅ〜〜〜〜っ

「!?‥‥‥‥!?!?」





なんだこれは!?



眼が覚めたリボーンは軽くパニック状態に陥った。
リボーンは先程まで敵マフィアに囲まれ、何故かストローのような細長い筒状のもので顔中吸われまくるという攻撃を受ける夢を見ていた。

全く意味の分からない攻撃に不快と恐怖を覚え、涙ながらに眼を覚ましてみれば、眼前には自分をまっすぐに見詰める翡翠の瞳。


驚き声を出そうにも何故か声は出せず、両頬がやけに痛くて身動きが取れない。



この状態で現状を把握するのは無理だった。








「ぷはぁっ、あう〜」

「な‥っ、な‥‥っ;;」

「りびょ、おきぃ〜v」




たっぷり数十秒した後、ようやく息苦しさから解放されたリボーン。
涎塗れで汗だくだく。顔を上げれば汁が顎まで滴るという状態のリボーンを隼人は満面の笑顔で見詰める。




「りびょ〜v」

「隼人‥;なにを‥;」

「きゃぁっv」


チュウがリボーンにバレた!と恥ずかしがるように再び愛らしい高い声を上げる隼人。
だが、勿論リボーンはチュウされた事には全く気付いておらず、もしかして俺は殺されそうになってたのか‥?とすら浮かぶ始末だった。




「りびょ、かぁ〜いぃ〜v」

「なにがだ?死にそうになってた俺の顔は可愛いのか?」

「うう〜vもっかい〜v」

「え?おい‥;もう一回ってなにを‥;!?」


隼人はその問いに答える事はなく、行動で分かってvとでも言うように再びリボーンの唇を奪った。



今まで多くの敵をあの世に送ってきた最強を誇るリボーン。

初めて天国を眼にした瞬間だった。



小さく柔らかい唇。
決して閉じられることなく痛いぐらい見詰めてくる翡翠の眼。
凭れかかるように自分に預けている幼く柔らかい身体。
それは酷く軽くて白い肌は滑らかでプ二プ二していて‥。





「ぎ‥」

「う?」

「ぎやぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁっ!!!!」








********



‥‥というわけで実はナイーブな心の持ち主だったリボーンはまさかの事態に耐え切れず、口を離されたと同時に堪え切れない叫びを上げたのだった。


そしてそれに驚いて隼人が泣き出した‥‥というのが事の真相だ。






「‥はや、隼人が‥、はやっ、俺の寝込みを襲っ‥」

「うぁぁぁぁ‥っ;」

「ちょっ、ふ‥二人とも落ち着いてっ;」

「って、リボーンさん!?;その顔どうしたんですかっ!?;」


「う‥; ひっ‥ぐずっ」

「うぁぁぁぁぁっ」

「うわぁぁぁぁぁぁ‥!!」

「うぁぁぁぁぁぁんっ」



泣 い た ‥ !!!!




隼人は部屋に来た時から泣いていた。
響く泣き声は一つだったのに、今では輪唱となっている。
リボーンがまるで隼人につられるように泣き出したからだ。









「ああ‥隼人君にリボーンさんっ;」

「何があったかイマイチよくわかんないけど、泣かないでぇ〜;;」






これには流石に慌てる。
因みにリボーンが泣き出した理由としては、隼人に襲われた時を思い出して恥ずかしくて堪らなくなったからだ。
なので恥ずかしさが治まればピタリと涙は止まり、まだ泣き続けている隼人へと近付いた。




「隼人‥」

「うう‥、ぁぁぁぁっ;りびょぉ〜;」



泣きながらもリボーンにしがみ付く隼人。
リボーンは顔だけではなく黒スーツも隼人の涎と鼻水と涙とで湿りを帯びていった。
だが、リボーンはそんな事は全く気にせず、泣きじゃくる隼人の頭を優しく撫でた。




「驚かして悪かった‥」

「りびょぉぉ〜っ;;」

「‥‥これで許してくれるか?」

「うう?」



チュッ、

小さいリップ音と共に贈られたのはリボーンから隼人のキス。
隼人は突然の事に眼を丸くし、しゃくりをあげているものの何とか泣きやんだ。




「大きな声を出してすまなかったな‥。泣かせるつもりじゃなかったんだ‥‥」

「りびょ‥」

「お前に涙は似合わない。謝るからどうか笑ってくれ」

「りびょ〜〜〜っv」




リボーンの言葉に応えるかのように笑顔になる隼人。
リボーンがチュウをしてくれてスッカリ機嫌が直ったのだ。





「もっかぃ〜v」

「ね‥熱烈だな‥//」




ぶちゅうっvと今度は隼人からリボーンに激しいチュウをする。

リボーンは破裂しそうなノミの心臓を奮い立たせてそれを受け止める。


ああ‥ やっぱり二人を会わせるんじゃなかった‥

二人の背後には後悔の涙を流す白蘭。じゃれ合う隼人とリボーンを『二人とも可愛い‥!!』と正一の構えるカメラのシャッター音が部屋に響き渡っていた。








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神様に勝手に送り付けてしまったお話v(すみません)





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青嵐の月虹さんに最強赤子の続きを書いてもらいました!! ありがとうございます!!
あのデパートで運命の出会いを果たしたリボ獄…!! 隼人はリボーンさんのことが忘れられず毎日毎日リボーンさんのことばかりを想っていたのですね…!! そして会えない寂しさから隼人はアリや団子虫をリボーンさんだと………!!! たぶん今度から熊もアリや団子虫を見たらリボーンさん!! と思うと思います!!(!?)

そして入江くんの懐柔ナイスですリボーンさん!! 恐らく無意識のうちというか本人からしてみれば懐柔の気すらないんでしょうがあっさりと入り江くんをゲットした辺り白蘭様の日頃の行いとリボーンさんのカリスマさが垣間見えますねv
そしてお昼寝隼人にリボーンさんのキャラが壊れた!! しかしお気に入りのシーンでもあります。ああリボーンさん可愛い…vv
そしてメインイベント、ちゅーです!! 前回はリボーンさんがしましたが今回は隼人から!! しかも熱烈なのが贈られました!! むしろ熱烈すぎですー!!
そして泣いた…!! あのリボーンさんが泣きましたよ!! はぁああああああああんかわいいーーーーー!!!(ええええ)
はぁはぁ…あ、あの、あのリボーンさんが…リボーンさんが泣き…やばいです。この効果は熊には抜群で熊はどうすればいいですか!?

月虹さん、本当にありがとうございましたv