「獄寺、死ぬなーーっ!!」

「うっ‥ リボーン‥さん‥‥」

「馬鹿野郎っ!!また無茶しやがってっ!!」

「すみません‥、でも‥良かったです‥」

「 !? 」

「リボーンさんにこうして看取って頂けるなら‥俺は幸せです」

「獄寺‥ っ、この大馬鹿者めっ!」




何が一体どうしてこうなったんだろう。
まるで映画の主人公とヒロインの様な展開を繰り広げるリボーンと獄寺君。

場所はボンゴレアジトの地下にある訓練場。
他の部下は全員出払い、此処には今、俺達しか居ない。


今日はリボーンにより、俺、獄寺君、そして雲雀さんに京子ちゃんのお兄さん。そしてどうやって連絡を取ったのか‥骸という、ボンゴレ守護者メンバーが集められていた。(ランボはウザいからと呼ばなかったらしい)

集められた理由は修行。
最近特別な抗争もなく、幾分平和を保っていた。そんな中で腕が鈍らないようにとリボーン直々に修行相手になってやる、という何とも傲慢で上からで勝手な理由からだった。
(まぁ、真の理由はリボーンの暇潰しだと踏んでるけどね)


そしてリボーンが相手をしてくれるならと、雲雀さんはヤル気満々。
集められたメンバーに骸がいるという事もあり、これは一気に不要物を片付けられると思い至り‥場は修行という名目のもと、敵味方関係なしの誰が生き残るかというバトルマッチへと雪崩れ込んだ。


好き勝手に戦う雲雀さんに骸、そして小さい身体で攻撃を仕掛けるリボーン。
それに触発されたのかただの遊びと思ってるのか山本も刀を抜き参戦し出した。


唯一獄寺君だけは俺を守るように起ち動き、飛び交う攻撃から俺を守ってくれていた。




「10代目っ!大丈夫ですか!?」

「う、うん‥っ;」

「くそっ、雲雀達め‥。好き勝手に暴れやがって!10代目が怪我したらどうすんだ!!」

「獄寺君、俺は大丈夫だから、獄寺君こそ怪我しないでね‥?」

「はい!有り難う御座いますっ!」




俺の言葉にニコッと笑う獄寺君。
それはいまや戦場と化した訓練場に咲く一輪の花の様に愛らしく、俺の心を癒してくれた。

獄寺君の笑顔を見てると本当戦いなんて馬鹿らしく思えてくるよ‥。(しみじみ)


場にそぐわぬだろう感銘を受けていると、リボーンが高く空中に跳ねあがり、数発の砲弾を乱射したのが見えた。

その中の一発の砲弾がこちらに向かって飛んでくる。


咄嗟の出来事に動けなくなる俺と獄寺君。
ここで動けないとか、確かに最近平和呆けして修行が足りていない証拠だろう。

そうこうしている間にも砲弾は間近に迫り、俺達の足元に着弾した。
着弾し破裂する砲弾。巻き起こる土煙。身を焼くような火花。

弾圧で起こる風圧に吹き飛ばされるのも覚悟したが、いつまで経ってもその衝撃は訪れなかった。


俺は着弾した瞬間固く閉じてしまった眼を、恐る恐る開く。
すると、即座に見えたのは地に伏せる銀。そしてそれにひっつき小刻みに震える黒団子。


銀の方は直ぐに獄寺君だと分かった。
俺を庇って被弾を全て身に受けたのだろう。
全身砂埃を被り髪は輝きを損ない、身体は所々火傷を負っている。

ああ‥俺なんかの為に‥。
だから獄寺君も気をつけてって言ったんだ‥!


そう後悔の念が寄せるも、やはり一番罪があるのは俺自身だろう。
獄寺君が守ってくれるのに、どことなく甘えてしまっていたんだ。
10年前から獄寺君が自分の身を犠牲にするのは変わってないって分かってたのに‥。
俺が‥ 俺が前に出て獄寺君の盾になっていれば‥!!





「獄寺、死ぬなーーーーっ!!!!」




取り返しのつかない悔いに思考を費やしていた時、正直忘れかけていた‥今なお正体の掴めない黒団子が叫んだのだった。




「獄寺‥、お前は‥ また無茶しやがってっ!!」

「リボーンさん‥泣かないで下さい‥」


あ、それリボーンだったの?
すっごい小っさく蹲ってるから団子のようにしか見えなかった。


収まる砂煙の中良く見れば、それは確かにトレードマークとも言える帽子と揉み上げを装備したリボーンだった。


まぁ、二人が人目を憚らずイチャつくバカップルなのはこの10年で慣れてきてたから耐える事は出来たけど‥。(山本達もまた始まったか‥的な諦めの眼をしている)
もう一つだけ聞き流せない言葉が‥
リボーンが‥泣いてる‥‥?



「この‥グジュ‥っ、お前に何かあったら‥ヒック、俺は‥うぐっ‥どうしたら良いんだ‥!うぁぁぁぁ‥!

あんなカスツナなんて放置しておけば良いだろうっ!!」


うわー。なんか酷い言われよう。カス‥って、まだダメツナのが柔らかい。
嫌な渾名だったけど、初めてダメツナがマシに思えたよ。
ってか、リボーンは気付いてるのかな?獄寺君に傷を負わせたのが自分だって。



というか本当に泣いてるよ。
初めて聞くリボーンの嗚咽(後半完全泣いた)に呆然としつつ、どうする事も出来ず流れを見るしかなかった。




「そんな‥、駄目ですよ。10代目はリボーンさんが選んだお人でしょう?」

「そんなん適当に決めたに決まってるだろ!!まぁ、コイツしか後継者残ってねーみたいだし‥ってノリだ!!最近ザンザスも力つけてきたしいざとなればそっちでも良いかと思ってきたとこなんだ!

だが‥お前の変わりは何処にもいねぇだろーがっ!!」



痛い痛い痛い痛い!痛すぎるよ!!
なにこれ!?本当に聞きたくなかったんだけどっ!!

え?なに?別にザンザスでも良いわけ??初耳だよっ!!
くそっ、俺だって別にボスとかなりたかったわけじゃないんだからなっ!!
でもそこまで言われたら悔しいから強くなってやるけどもっ!!!!



「くっ‥。お前にこんな怪我させやがって‥。許せねぇ‥」


だからそれリボーンがやったんだってば。


「ダメツナめっ!!今こそ地獄を見せてやるっ!!」


やっぱり!!?
薄々感づいてたけどやっぱ俺のせいになるわけっ!??




「やめて下さいリボーンさん!!これは俺が勝手にした事で‥、10代目は悪く有りません!!」

「いや、アイツがダラシねーのが原因だ」


バッサリ言い放ちやがって!!
(間違ってない分凹むけど)






「でも‥、駄目ですリボーンさん‥!」



獄寺君‥否定はなしなんだね‥(遠い目)





「最強のリボーンさんが格下相手に手を汚す必要なんて有りません!!
どうしてもと仰るなら俺に命令して下さい‥!」

「獄寺‥」


え?そこジーンとする所?
確かに俺もジーンとは来たけどね!リボーンとは確実に別の意味で!!
てか一応ボスになったのに格下!?


「リボーンさん‥最期に、一つだけお願いを聞いてもらえますか?」


ああ‥、完っ璧雰囲気に呑まれちゃてるんだろうけど‥
最期って‥ 確かに獄寺君火傷とかでボロボロになっちゃってるけどぶっちゃけピンピンしてるよね?火傷と衣服の汚れを除けば完全健康体だよね?


‥‥‥‥リボーンもそんな信じられない、って顔してんなよ。



「なに‥言ってんだ?獄寺、お前が死ぬなんて有り得ねーだろ‥」

「‥自分の事は自分がよくわかってますので‥‥」



だからそんな驚愕に眼を見開くなって、リボーン。
リボーンの言う通り今の獄寺君が死ぬとか有り得ないから。
獄寺君はちょっと雰囲気に酔っちゃってるだけだから。
ほら‥獄寺君って、少し頭が残念でしょ?





「あの‥最期に、リボーンさんから‥キス、してくれませんか‥?」

「獄寺‥っ」

「そしたら俺、なんの悔いもなく旅立てると思うんです‥」



ニコリ、と弱々しく微笑む獄寺君。
その微笑みは酷く哀愁を帯びていて‥憂いに満ちた表情は儚げで綺麗だった。

そんな笑みを見せられて願いを断れる者はいるのだろうか。
いや、いないだろう。
最強を誇るヒットマンさえその微笑みに心の蔵やらなにやら鷲掴みにされたらしく胸を抑えて蹲っているのだから。


ナチュラルにあれだけ散々豪語して叶った俺の右腕よりリボーンのキス。となっているのももうツッコまないよ。
ここでキスの一つや二つしてやらないと漢じゃない!!
いけ、リボーン!!



ついには沢田も雰囲気に呑まれ始めた。
そうなればもう二人を止める人物はいないだろう。





蹲っていたリボーンはゆっくりと立ち上がる。
立ち上がっても倒れている獄寺君とたいして目線が変わらないのが流石だ。
むしろ獄寺君が倒れて初めて二人の視線が揃う。


そしてリボーンは照れ隠しなのか帽子を深く被り獄寺君に近付く。

あと数センチ‥

あと数ミリ‥


そして二人の距離がゼロになる。
チュッ、というリップ音の後、初めて見るほど顔を真っ赤にしたリボーンと獄寺君の姿がそこにあった。



「‥これで満足か?」

「は、はい‥っ!!」


そう言った後、獄寺君は顔を赤くしたまま俯きポツリと呟いた。



「で、でも‥出来れば口が良かったです‥‥」

「それは部屋に戻ってからだ」

「!!?? で、では‥今部屋に戻ったら‥」

「してやらなくもない」

「行きましょう!!早くお部屋に行きましょう!!」


パッ、と顔を上げ眼を輝かせる獄寺君。
それはとても24歳には見えない程無邪気で可愛らしい笑顔だった。

心から喜ぶ獄寺君に、リボーンは恥ずかしくて眼も向けられないのか再び団子状態になっている。でも、その隙間から見える顔は真っ赤で、リボーンも嬉しいんだな‥という事を悟る。



獄寺君は立ち上がって服の汚れを叩くと、団子状態のリボーンをひょい、っと抱き上げた。

やっぱり獄寺君は健康体そのものだった。


「俺、この前リボーンさんの好きなコーヒーを買ったんです。ですから‥俺の部屋でも良いですか?」

「別に構わねーぞ」

「良かったです!では、行きましょう!」




霧属性はないはずの獄寺君だけど、周りに花が咲いているように見える。
眼を擦ろうともその幻覚は消えず、結局二人は俺達に声を掛ける事もなくこの場を去って行った。

きっと俺達の存在は途中から完全消去されていたのだろう。



そして俺はこの後、延々とバカップルを見させられた事により鬱憤の溜まった雲雀さん達の相手を死ぬ気でする事になったのは‥‥言うまでもない。










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後書き



熊侍様に捧げる相互記念小説です!


お互いしか見えてなく‥甘い感じになってるか不安だったのですが‥。
笑って頂けましたら光栄で嬉しくて幸いですv

感謝とお礼の気持ちは膨大に詰め込ませて頂きました!

それでは、この度は相互して下さり本当に有り難う御座います!





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青嵐の月虹さまに書いていただきました!! 1×24です!! っきゅー!! 素敵です!! 親子カップルキターーー!!!

ちょ、黒団子…!!  ちみリボ様に新たな呼び名が出来ました! 黒団子です!! 黒団子!!(気に入ったらしい)
泣く黒団子と押せ押せな24(受)に萌えました。はぁはぁしました。てか頭が残念な子…!!(爆)
年の差も性別の差も越えて二人は愛し合っています。愛ですね!!

こちらこそ相互してくださり本当にありがとうございました!!