草原。
目の前に、草原が広がっていた。
何故だか、色はない。
オレの目がいかれてしまったのか、
はたまた、この世界がこういうものなのか、
それとも、世界とは―――最初から、色などないものだったのか。
はて、はて。ここはどこだろうか。
こんな場所に、見覚えなど、ないのだが。
だけど、確か、何か、誰かを、捜しに来たような、そんな気がするのだが。
思い出せない。
辺りを見渡す。
白と黒と、灰色の世界。広がる草原。
オレの他には、誰もいない。
…進もう。歩き出そう。
今、ここには、何の用もない。
歩く先、進む先。見えるは毒の水。巨大な蜘蛛。昔のオレを思い出すような悪童共。
あいつらは、この世界は、オレをここから、この場から排除しようとしている。
どうやら、オレはここでは歓迎されてないらしい。
出て行けと、世界にそう言われている。
消えろと、毒の水がオレに囁く。
邪魔だと、巨大蜘蛛がオレを喰おうとする。
ここにお前の居場所はねぇよと、悪童共がオレを嗤い、石を投げる。
やれやれだ。
オレはオレで、別にこの世界に居着きたいわけじゃない。
ただ、探しものがあるだけだ。
それさえ見つければ、こんな世界に用はない。
まあ、探しものを見つけた後、ここから出られるのかどうかは、解らないのだが。
…ひとまず、その問題は、置いておこう。
探しものの、続きをしよう。
毒の水を跨ぎ、棘の山を越え。
巨大蜘蛛の足をもぎ、蝙蝠を潰し。
悪童共―――よく見たら、あいつらはガキの頃のオレだった―――を殺し、罠の解除に使い、毒の泉を渡る橋にして。
草原を進み、山を抜け。
廃墟に入り、廃屋を見つけ。
探して、探して、探して―――
―――――何かを、破った。
見えない壁―――というか、膜のようなものがあって、進むうちに破ってしまったようだ。
膜の向こうに感じるは、水の気配。
世界は薄くなり、まるで初めからそうだったかのように―――水の底に沈む。口から気泡が漏れる。
ああ、これは、毒の水だろうか。
早く出なければ、ここから早く、早く―――
世界が、白―――――…
草原。
目の前に、草原が広がっていた。
何故だか、色はない。
オレの目がいかれてしまったのか、
はたまた、この世界がこういうものなのか、
それとも、世界とは最初から色などないものだったのか。
はて、はて。ここはどこだろうか。
こんな場所に、見覚えなど、ないのだが。
だけど、確か、何か、誰かを、捜しに来たような、そんな気がするのだが。
思い出せない。
辺りを見渡す。
白と黒と、灰色の世界。広がる草原。
オレの他には―――
誰か、いた。
小さな、誰かが。
オレから見て、後ろを向いていて、誰だかは分からない。
分かるのは―――
オレが探していたのは、あの人だという事。
ああ、やっと見つけた。
こんなところにいたんですね。
まったく、こんなところで、今まで、何をしていたんですか?
オレは、結構大変な目に遭いながら、ここまで来たというのに。
…まあ、いいです。
あなたを見つけられたのだから。
あなたに近付く。
おや、片腕がないじゃないですか。
あなたという方が、一体どこに落としてきたのやら。
次はその腕を捜しに行きましょうか?
あなたに近付く。
…ああ、そうか、ここは、この場所は―――
唐突に理解した。
ここは、生の国と、死の国の間に存在する世界で。
オレは生の国から、消えたあなたを捜しに来て。
だけどここは、長く居すぎると、生の国にも戻れず、死の国にも行けない世界で。
オレを、この世界から、排除させようとしてきた奴らは、オレを正しい世界へ、行くべき世界へ向かわせようとしていて。
だけど、もう、
あの時、あの膜を突き破った時、オレはこの世界に固定されてしまった。オレはこの世界の住民となった。
オレはもう、ここから出れない。
…まあ、いい。それは、別にいい。
せめて、あなただけでも、どちらかの世界へ、向かわせる事が出来ればいいのですが。
あなたに、近付く。
あなたに手を伸ばす。
あなたはオレに気付き、
動きを止め、
振り返ろうとして―――――…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたの無事を確認する前に、世界は暗闇に閉ざされた。
次に世界を認識した時、あなたがどこにもいなければ、いいのだけれど。