むかしむかし、あるところに とってもかわいいひとりの獄寺くんがいました。


獄寺くんは赤い頭巾を誰かに貰ったわけでもいつも被っていたわけでもないので、別に赤頭巾ちゃんとは呼ばれていませんでした。


ある日のこと。獄寺くんはいつも眼鏡を掛けている姉のビアンキからお使いを頼まれました。



「ねぇ隼人。悪いのだけれどこのワインとケーキを何故か山奥で一人休養しているツナに渡してきてくれないかしら?」


「えー…」



獄寺くんはいきなり乗り気じゃありませんでした。


というのも別に何故か山奥で一人休養しているツナこと10代目に会うのが嫌なわけではありません。


ただ単に単純に純粋に、ビアンキの料理を運ばなければならない。その一点だけが嫌なのでした。


そんな獄寺くんの様子をどう受け取ったのか、ビアンキは頷きました。



「そうよね…一人山奥に行くなんて嫌よね。虫もいる中わざわざツナに会いに行くなんて…何のメリットもないわ。そうね、これから二人でお茶会にしましょう


「じゃあオレ行ってくる」



獄寺くんはビアンキからバスケットを奪い取り、しゅたっと片手を挙げて素早く走っていきました。


危ない危ない。あの姉とお茶会なんてしたら命がいくつあっても足りません。


そもそも姉と一緒にお茶会なんて話が違います。そんなことをしては白いうさぎを追いかけてワンダーランドに行ってしまいそうな悪寒がします。


ともあれ獄寺くんは逃げるようにというか、むしろ山奥に逃げていきました。



「最近山には人食い狼が出るという噂があるから気を付けるのよー!!」



とかなんとかビアンキが言っていましたが、獄寺くんは聞いていませんでした。


何故なら獄寺くんの頭の中はビアンキから一刻も早く距離を置くことと、手に持った毒物をどこに処理しようということしかなかったからです。





そう思いながら場所は山奥です。手には相変わらず毒物バスケットを常備です。


無論、出来ることなら一刻も早く捨ててしまいたい獄寺くん。


しかしビアンキとは生まれたときからの付き合いの獄寺くんです。下手なところに捨てたらどうなるかは身をもって知っています。環境破壊どころではありません。


どうしようかとかなり真剣に悩む獄寺くん。それを影から近付く不審な影がありました。


そう。それはビアンキの言っていた人食い狼なのでした。獄寺くんピンチです。



「おい」


「はい?」



急に掛けられた声に答えつつ獄寺くんは振り向きます。二人の目が合いました。



「………」


「………」


「……………」


「……………」


「…………………」


「…………………」



バタリ。



獄寺くんは倒れました。



「!?」



慌てたのは声を掛けた本人です。


まさか声を掛けただけで卒倒されるとは予想外。



「おい、大丈夫か!?」


「大丈夫…です…」



ふらふらとしながら、頭を抱えながら獄寺くんは立ち上がります。そして話し掛けてきた相手を見据えます。


獄寺くんに話し掛けたのは、小さな小さな仔狼でした。


まだ子供…いいえ、もしかしたら赤ん坊ともいえるかもしれません。(その割にはしっかりしてますが)


小さな身体。くりくりのおめめ。三角の狼お耳にふさふさ尻尾。


そんな仔狼を見て、獄寺くんは心の底から思いました。



(超可愛い…!!!)



どうやら獄寺くんのハートが撃ち抜かれたようです。



「あ…あの!!」


「ん?」


「お菓子買ってあげますから家に来ませんか!?」



まさかのナンパが始まりました。


仔狼のお耳がぴくりと動きます。



「お菓子?」



そして釣れました。





そして。





「隼人…遅いわねー…変な虫に付きまとわれてないといいけど……」



ビアンキが毒物…もとい、夕飯の支度をしながら獄寺くんの身を案じてます。


ビアンキは料理の腕はあれですが獄寺くんを思うその心は本物です。嫌われていても気にしません。


そんな愛しい可愛い獄寺くん。もし悪漢などに襲われていたらと思うと…



「・・・・・・・・・」



ビアンキの感情に反応するかのようにビアンキの手にした食材が毒々しく変色していきます。


と、そのときでした。



「ただいまー」



獄寺くんが帰ってきました。


危ないところでした。もう少し遅かったらいもしない悪漢のために世界最悪の毒物が完成するところでした。



「お帰りなさい隼人!!」



ビアンキが満面の笑みを浮かべつつ玄関までお出迎えに行きます。


玄関では獄寺くんがビアンキに負けないぐらいの満面の笑みを咲かせていました。



「姉貴!」



獄寺くんが胸に抱いていた仔狼をビアンキに突き出します。



「これ飼いたい!!」


(家畜扱いされた!?)



胸に抱かれていた仔狼ことリボーンさんはさり気にショックを受けてました。



「まぁおいしそうね!!」


(食われる!?)



リボーンさんは身の危険を感じました。そのままの意味で。


獄寺くんは慌ててリボーンさんを抱きしめました。



「リボーンさんは食材じゃねぇよ!! てかこんなに可愛いリボーンさんを食うとか頭おかしいんじゃねーのか姉貴!!」


「あらごめんなさい」



とりあえず食べられはしないらしいことにほっとリボーンさんは安堵の息を吐いたのでした。


こうして、獄寺くんとビアンキの家にめでたく家族が一人増えたのでした。







一方。



「やっほー綱吉くん。さっき隼人ちゃんに会ってこれ届けてくれって」


「なんで狩人役が白蘭なんだろう…」



と、10代目が有毒ガスを発生しそうになってるビアンキ特性毒物を受け取っていましたとさ。





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せめて赤頭巾コスの獄寺くんが見たかった!


リクエスト「狼リボ×赤頭巾ごっくん」
リクエストありがとうございました!