獄寺はオンとオフの差が激しい。


ボンゴレ10代目の右腕、嵐の守護者ともなると誰にも隙を見せるわけにはいかないらしい。


常に放たれる鋭い視線、凛とした態度、抗争となれば常に前線に立ち敵を屠り、味方を守る。


そんな獄寺の姿を素の姿だと思う輩も多い。


だが……





「…リボーンさん……」





獄寺の素は…少なくともオレと二人きりの時の獄寺には、いつもの影はない。


オレに抱きつき、頬に頬ずりし、眼を蕩かせ、甘い声を囁く。


オレが頭を撫でてやると、身体の力を抜き身を任せてくる。


常に気を張ってないと務まらない仕事中の獄寺からは想像も付かない姿。


今オレの前にいるのは、甘えん坊な恋人が一人だけだ。


獄寺は額と額を合わせ、擦り寄せ、指を絡ませ、そうかと思うとまた抱きついてくる。





「リボーンさん…好き……好きです…」





幾度となく囁かれる愛の言葉。


それと対照的に、甘え方はまるで幼子が母親にするように。


あるいは、小さな動物が飼い主に甘えてくるような。


獄寺は家庭に難があったから、甘えることも出来なかったのだろう。


その分の反動が、今オレに来ている。


とはいえ、それぐらい受け入れられなくて何が恋人か、という話だが。


獄寺は獄寺の甘えたいように甘えればいい。


オレはそれに応えよう。


抱きしめ返すと、獄寺は嬉しそうに表情を綻ばす。


珍しく、獄寺の方からキスをしてきた。


触れるだけの柔らかなキス。


くすぐったさを覚えるほどの、甘いキス。


明日は柄にもなく自分から甘えてみようか。


そんなことを思った、夜の話。





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そう思うぐらい獄寺は幸せそうに微笑んでいた。