「どうかオレを許して下さい」
そう言って、あいつはオレを抱きしめて泣いた。
- あなたを守る力 -
寒い道のりを歩いてた。
辺りには誰一人としておらず、体内から吐き出される白い息を見ながら歩いてた。
―――と、遠くから子供の喚き声。
聞きなれた声と名前が放たれたような気がして。思わず振り向いた。
振り向いた先は、見知らぬ森が広がっていた。
「―――…」
暫し思考が停止する。
恐らく10年バズーカで撃たれたのだろう、と思い立ったのは何秒経ってからだろか。
先程聞こえてきたのは予想に違わずアホ牛だろう。聞こえた名前はリボーンさん。
そしてあの馬鹿はいつものように10年バズーカを撃ち、あの人はいつものように避けて。…オレが被害を被った。
…そろそろ躾とかないと一般人にも被害が出るんじゃなかろうか。
そう思いながら、オレは前に向き直った。
思考が全部吹っ飛んだ。
暫くして視界が現代に戻った。いつもの見慣れた景色が現れた。
そして…オレのすぐ傍にはあの人がいた。あの人はただ黙ってそこにいた。
…10年後のオレとは会ったのだろうか。何か話でもしたのだろうか。
そう思ったが口にすることは出来なかった。何があったのかなんて恐ろしくてとても聞けなかった。
…オレは決して震えないようにと努めながら、言葉を放った。
「リボーンさん」
「なんだ」
リボーンさんはそんなオレに気付いているのかいないのか、いつも通りに淡々と答えた。
「その、ですね。…突然なんですけど、一つお願いがあるんです」
「言ってみろ」
「…出来る限り、ずっとお傍にいさせてほしいんです。誕生日は特に」
「好きにしろ」
「ありがとうございます」
ほっと息を吐いた。
けれど重要なのはこれからだった。
…あの未来を、オレは回避出来るんだろうか。
10年後の世界でオレが見たもの。
暗く茂る森の中。
重々しい墓石に、一番相応しくない単語が刻んであった。
あの人の名前。それとあの人の誕生日が刻んであった。
オレはあの未来を回避出来るんだろうか。
それが分かるのは、きっと10年後の話。
オレはこの人を守れるだけの力を手に入れられるだろうか。
それが分かるのも、きっと10年後の話。
10年後のあいつが泣いて謝って来たことにも、顔面を蒼白させて戻ってきた獄寺にも。特に心は動かされなかった。
我が身に起こることぐらい。とっくの昔に理解している。
気丈に振舞う獄寺は見ていて痛ましかった。
出来ることならこいつの願いを叶えてやりたいが、きっと全ては既に決まっている道筋。
恐らくこの獄寺は10年後、あいつと同じ言葉をオレに言うのだろう。
初めにオレを見て「ごめんなさい」と。
そして「どうかオレを許して下さい」と。
涙を流して言うのだろう。
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それは繰り返される悲劇。
オレにお前を守れるだけの力があればよかったのに。