闇の中。暗い中。雨が降る。雨が降る。ザァザァと。ザァザァと。
その中走る男が一人。
細身の身体に銀の髪。
獄寺隼人。
走る走る。雨の中。闇の中。
雨が打つ。彼を打つ。髪を。肌を。服を。染みる。
その目は真っ直ぐに前を。
敵アジトのある方向を。
今獄寺は任務の最中。
敵対ファミリーの壊滅。獄寺はその先発として単身アジトに向かっていた。
雨風が酷くなる。雨に打たれる。風に吹かれる。飛ばされそうだ。
ふと、足を止める。木々の間で足を止める。木に手を付く。息を吐く。
雨は嫌いだ。と獄寺は思う。得意の武器が使いづらくなるし、鬱陶しい。
だが天候如きで任務に支障を出すわけにもいかない。仕事はいつでも完璧でなければいけない。それが10代目の右腕たる自分の勤めだ。
あと、あの人に恥ずかしくない者でもありたいし。
獄寺はあるヒットマンを思い出す。黒い人。厳しい人。
あの人もまた、どこかで任務に当たっているはずだ。
あの人もあの人らしく仕事をしているはずだ。完璧な人。憧れの人。
あの人が誇れる者でありたい。
帰ったら一緒に飲もうという約束もしてある。頼れる人。実は意外と優しい人。
ああ、楽しみだ。
その人を思い出すだけで知らず笑みが零れる。雨での不機嫌もどこかへ飛んでしまった。
さて、休憩は終わりだ。
獄寺は俯かせていた顔を上げる。
目の前にあるは敵対ファミリーアジト。
潰す。
ボンゴレの為に。10代目の為に。
…あの人の為に。
さて、浮ついた気分はもう終わりだ。
気分を切り替え、気持ちを差し替え、目の前のことに集中する。
雨はいつの間にか上がり、空を見上げれば月が出ていた。大きな満月。
その光に照らされつつ、ぽたぽたと滴を零しながら獄寺は歩き出した。
風すら止まり、まさに嵐前の静けさ。
静かに嵐を巻き起こす為、獄寺は敵対アジトへと乗り込んだ。
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逃げられると思うなよ?
リクエスト「シリアス」
リクエストありがとうございました。