最近、獄寺くんがリボーンの部屋で寝泊りしているらしい。
…まぁ二人の関係はオレも知っているし、そんな日が来るのも…まぁ分かってはいたけど…
でも…なんだ。やっぱりまだ早いような。だってリボーンって日本だとまだ小学生な年齢じゃない。
いや、あいつには常識は一切通用しないなんてこと承知しているけどさ。でも…さ。ねぇ。
「やっぱりまだ早いと思うんだ」
思わず口に出たのは、リボーンの寝室からリボーンと獄寺くんが出てくるのを目撃した直後だった。
- 朝の風景 -
「………はぁ。早いですか」
「お前にそんなこといわれる筋合いはねーぞ」
思わず口から飛び出た言葉とはいえそれは小さな声というわけでもなかったから二人がそれぞれに反応を反してくる。
ていうかリボーンが獄寺くんの腰をさも当然のように抱いているのがすげーむかつく。この野郎。じゃなくて。
「うん。…やっぱりいくら考えても早いよ獄寺くん」
「オレは無視かよ」
無視。
「…そんなことはないかと思いますけど」
何を仰いますかこの右腕は。
自分が何を言っているのか分かっているのか。
「お前こそ自分が何言ってるのか分かってんのか?」
無視。あと思考に突っ込みするな。
「…えーと。あの10代目。なんだか誤解をしていませんか?」
「誤解…? …えと、オレ獄寺くんがリボーンと一緒に寝てるって言う噂聞いたんだけど…」
「寝てるな」
「寝てますね」
って誤解じゃないじゃん…!
「って10代目項垂れないで下さい!!」
項垂れずにいられるか…! う、うぅ、獄寺くんが…!
「なんだお前は添い寝すらアウトなのか。別にいいだろそれぐらい」
無視。ていうか添い寝って…ん? 添い寝?
「は…? まさか寝てるって…本当にただ寝てるだけ?」
「はい」
「お前なんだと思ってたんだ?」
え…そりゃあ俗に言うあんなことやこんなことですけど…だって獄寺くんを前にただ寝るだけって人間に出来ることなの!?
「リボーンさんってば仕事が終わるとデスクの上でも床でもすぐに寝ちゃうんですよ」
そういえば夜よくソファに寝そべっていたりしていたっけ…赤子の頃から睡眠欲には弱いらしい。
「放っておけばいいものを…」
「何言ってるんですか。そんなこと言ってリボーンさんが体調を崩したらどうするんですか10代目」
大丈夫だよ獄寺くん。それありえないから。
あと万が一億が一リボーンの体調が崩れたらオレ小躍りするから。
「お前今ろくでもねーこと考えただろ」
無視。
「なのでオレがリボーンさんを自室まで連れて行っているというわけです。これが噂の真相ですよ」
「…なるほどね…って、別に朝まで一緒にいなくてもいいんじゃ…」
「まぁ…それはそうなんですけど…」
獄寺くんはちょっとはにかんだ笑みを見せてから、
「…リボーンさん、オレを離してくれなくって…」
そう言って少し頬を赤らめてみせた。
うん。結局惚気か。
「それにリボーンさんの寝顔を見るのも楽しいですし、リボーンさんが寝ているときならほっぺたを突いてもいたずらのキスを仕掛けてもリボーンさん無抵抗ですから」
なんか今獄寺くんが物凄いことを言った気がする。
…いたずらの何?
「ちなみにオレは気付いていたぞ獄寺」
「え? そうだったんですか? …もう、恥ずかしいです…」
恥ずかしいのはこっちだよ獄寺くん。
「でも…まぁ、寝てる…だけか。それならまぁ何とか…」
何とか…何とか…ぎりぎり……アウト?
「駄目じゃねぇか」
無視。
「オレとしては少し物足りないんですけどね」
獄寺くんがまたなにやら今物凄いことを言った気がする。
獄寺くん、どれだけリボーンにぞっこんなのさ。
「死語だな」
無視。
「じゃあ誤解は解けましたよね。それではオレたちはこれから仕事ですから」
そう言って、獄寺くんはにこやかに笑いながらリボーンと共にこの場を後にしてしまった。
それからまたある日の朝に、なにやら色気とか艶とかがとんでもないことになってる、けれどどこか嬉しそうな獄寺くんをリボーンの部屋の近くで見かけるのは…
………かなり残念なことに、そう遠くない未来のこと。
畜生。
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まさかこんな子供に先を越されるなんて。