あなたの声が聞きたくて。


懐に仕舞ってある携帯電話に手を伸ばした。


数回のコールのあと。


いつものように、変わらずに。


当然のように、あなたが出た。





「何だ?」


「あなたの声が聞きたくて」


「そうか」


「ええ」



いつも通りのあなた。


変わらぬあなたに、思わず笑みが零れる。



「ああ、丁度いい、獄寺」


「はい?」


「今度、お前のピアノを聞かせろ」


「…はい?」



思わず間抜けな声が漏れる。


このお方は、今なんと?



「前から興味があった。聞かせろ」


「…はぁ」



オレはなんと言ったらいいのか分からない。


いや、聞いていただけるのなら、嬉しいのだけれど。


リボーンさんにオレのピアノ…か……


想像して、なんだかこそばゆいような、嬉しいような、浮かれる気持ちになる。


やばい、すごく、弾いてみたい。


それが出来たのなら、きっとすごく幸せだろう。


…それが、出来たのなら。


オレの心情を知ってか知らずが、リボーンさんは更に言葉を続ける。



「いつにする? オレの都合で誘うんだ、ピアノのあとは食事でも奢ろう」


「まるでデートのお誘いですね」


「そうだな」



言いながら、その光景を想像して心があたたかくなる。


きっと、幸せだ。穏やかな時間。あなたとの二人だけの時間。


…過ごしてみたい。そんな時間。



「…デートでも何でもいいから」


「はい」


「生きて、帰ってこい」


「―――――、」



思わず、息を呑んだ。


そして苦笑する。


やっぱりこの人には敵わない。


隠し事なんて出来っこない。



だけれど、



オレの身体に力はもう入らず。


オレの身体から流れ出る血は止まらない。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オレの死はもうすぐそこ。