暗い闇が広がっていた。


音はなく。何もなく。


どこまでも続くような黒が続いていた。


そんな場所で、何故かオレは酷い不安感に襲われていた。


動悸は激しく。


喉も唇もからからに渇いていて。


嫌な汗が流れ、身体は燃えてるようにも凍り付いているようにも感じる。


目は見開かれ、手足は震え、心が悲鳴を上げていた。


そして、その場所に縫い付けられてしまったかのように一歩たりとも動けないでいた。


…どれだけ、その場所にいたのだろうか。


不意に、目の前に気配が生まれた。


一体いつからそこにいたのだろうか。


そこにいたのは、黒ずくめの小柄な少年だった。


俯いていることと、目深く被られた帽子でその人の顔は見えないけど。その人は間違いなくあの人だろう。


オレの先生で。


憧れの人。


誰よりも信頼していて。


何よりも頼もしい人のはずなのに。


オレの心に芽生えている不安感はまったく拭えなかった。


それどころか、ますます増えたような。


身体から血の気が引き、震えが酷くなる。


何故か、オレはこの人に恐怖していた。


…と、気付く。


帽子に何か付着している。


赤い液体。命の源。それは血液。


それがべっとりと、帽子に付いていた。


誰の血だろう。


目の前の、この人は怪我を負ってない。


帽子に付いてる血は乾いておらず、帽子に染みきれず滴り落ち、今さっき付着したばかりだと言う事を告げていた。


…ふと、鋭い痛みが指先に走った。


その痛みでか、身体が自由になる。


指を見ると、赤い血が流れていた。


それに意識を向けると、目の前の気配が動く。


その人の手には拳銃が。


銃口はオレに向けられ。


あなたは顔を上げた。





「―――――…」





「獄寺くんどうしたの?」


「10代目…いえ、何でもありません」


「そう…? なんか体調悪そうだけど…」


「そうですか…?」


「そうだよ」


きっぱりとそう言い放つ10代目に、そんなに自分の顔色は悪いのだろうかと少し心配になる。


「…本当になんでもないんです」


「…そう」


10代目はまだ何か言いたげだったが、結局何も言わないでくれた。


でも、本当になんでもない。


ただ…そう、ただ単に夢見が悪かっただけ。


たったそれだけ。


その程度で10代目に心配を掛けてしまったなんて、本当に情けない。


内心でため息を吐きながら、主務室を出る。


と、扉のところでリボーンさんと擦れ違った。


「おはようございます」


「ああ」


短い、けれどいつも通りのやり取り。


もちろんリボーンさんの帽子に血なんて付いてないし、恐怖も感じない。


オレはリボーンさんを見送り、それから業務に向かった。





それから暫く何事も無く日々が過ぎ去り、オレはあの日見た夢のことなどすっかり忘れてしまっていた。


そんなある日のこと。


その日オレは休日で、街に買い物に出ていた。


その、帰り道。


(…ん?)


少し離れたところに、見慣れた人影を見つけた。


黒いスーツを着込んだ少年。


(リボーンさん…?)


はて。確か今日はリボーンさんはアジトにいるはずなのだが…


声を掛けようと思ったが、それより前にリボーンさんは人込みの中に消えてしまった。


………まぁ、いいか。


オレはアジトに戻った。










「ん? 獄寺、今日は休みじゃなかったか?」


「リボーンさん」


アジトに戻り、部屋に戻る途中リボーンさんと会った。


「はい、休みですよ。ですので街まで買い物に出ていたんです」


「買い物?」


「ええ。武器の手入れをしようと思って、その道具を」


「真面目な奴だな」


「楽しいですよ。そういえばリボーンさん、さっきは何の用だったんですか?」


「さっき?」


「街まで出ていたでしょう? 見掛けましたよ」


オレが先ほどの記憶を蘇らせながらそう言うと、リボーンさんはきょとんとした顔を作った。


「はぁ? お前は一体何を言ってるんだ?」


「え?」


「オレは今日はアジトに缶詰だ。お前だって知っているだろう」


「…街に出てないんですか?」


「ああ」


「…え?」


すると…オレが見たあの子供は一体誰だと…何だというのだろう。


今度はオレがきょとんとした顔を作ってしまった。あれは他人の空似というには、ちょっと。


「白昼夢でも見たんじゃねえのか? 休みなのに休まねえからだ」


「そうかも…知れませんね……」


そう言うが、本当にそうなのだろうか。


あのリボーンさんは…本当はいなかったのだろうか。


釈然とせず、納得も出来ないがリボーンさんがそう言う以上そうなのだろう。


変な気分を味わいながら、オレはリボーンさんと別れた。





そしてそれからだった。


もうひとりのリボーンさんが、度々目撃されることになるのは。





「あれ? リボーンさっき向こうの通路にいたのに…なんでこっちにいるの?」


「小僧…? あれ? 訓練室にいなかったか? あれ?」


「赤ん坊…キミ分身の術でも使えるの? それとも瞬間移動? あるいは双子だとか?」





会う奴会う奴首を傾げる。


それはそうだろう。オレもその気持ちは体験した。


リボーンさんは呆れ顔、あるいは怪訝顔で夢でも見たんだろとか、疲れてるんじゃないかとか。そう言ってたけど。


そんなことない。あるはずがない。


これがオレだけならまだしも、他の奴も見ているのに。


全員が同じ時間、同じ場所でもない。日付も場所もバラバラだ。


オレはまず、幻術使いを疑った。


しかし骸もクロームも…果てはヴァリアーまで赴きフランなる人物にまで確認したが、みな首を横に振った。ちなみにマーモンは不在だった。


あいつらによると幻術を使った気配はないらしい。…となると幻術師は白なのだろうか。


あいつらが結託して嘘を付いている可能性もあるが、そこまで疑ってたら何も出来ない。信じることにする。


なら…幻術じゃないとすれば……あのリボーンさんは…?


考えながら歩いていると、曲がり角で何かとぶつかった。


それは小柄な…というより子供で。黒尽くめで。っていうかリボーンさんで。


「うわ!? り、リボーンさんすみません!!」


「ん? よお獄寺」


出会い頭にぶつかったことも気にした様子はなくリボーンさんは軽く声を掛けてくる。


「………」


「ん? どうした獄寺」


「い、いえ…」


もうひとりのリボーンさんが現れてから暫く経ち、オレはすっかりリボーンさんに対して疑心暗鬼になってしまった。


…このリボーンさんは本物っぽいな……


偽物…というか、もうひとりのリボーンさんは声を掛けてくることはない。そもそも見えるのは後ろ姿とか遠目とかだけでここまで近く接することもない。


…今のところは、ではあるが。


「そういやお前、オレについて聞き回ってるらしいな」


「リボーンさんのことと言いますか…」


なんと言えばいいのか…言葉に困る。


「他人の空似かなにかだろ」


「リボーンさんのような体格の持ち主はリボーンさんしかいませんよ」


「子供が紛れ込んでるだけだろ」


「…スーツを着込んだ子供がマフィアのアジトにですか?」


それはそれで不味い話だ。そうだとしたら恐らくそいつは鉄砲玉としてどこからか派遣された少年兵だろう。いや違うだろうけど。前提が。


「そんなに気になるのか?」


「ええ」


明らかにいるもうひとりのリボーンさん。


今のところ害はないが……どうにも気になる。


「まあオレが気になるのもいいんだが、」


「いえ、オレが気になるのはリボーンさんではなく」


ん? あれ? リボーンさんでいいのか? どう言えばいいんだろう。


「もう少し自分の周りのことも気にするんだな」


「…はい?」


ほれ、とリボーンさんが何かを手渡してくれる。それは…


「…あれ? オレのナイフ?」


「落ちてたぞ」


「え!?」


慌てて懐に手をやるが…ない。確かに仕舞ったはずなのに。冷や汗が流れる。


「す、すいません…」


「ああ」


オレは受け取ったナイフをポケットに入れる。


…確かにリボーンさんの言う通り、自分の身の回りのことも注意しなければいけないな。


オレはリボーンさんと別れた。


その日、もうひとりのリボーンさんは見掛けなかった。





そして。


部屋に戻り、夜も深けオレは眠りに付き。


目が覚めると、そこには―――――





暗い闇が広がっていた。


音はなく。何もなく。


どこまでも続くような黒が続いていた。


そんな場所で、何故かオレは酷い不安感に襲われていた。



オレは…この場所を知っている?



動悸は激しく。


喉も唇もからからに渇いていて。


嫌な汗が流れ、身体は燃えてるようにも凍り付いているようにも感じる。



オレは…この感覚を知っている……



目は見開かれ、手足は震え、心が悲鳴を上げていた。


そして、その場所に縫い付けられてしまったかのように一歩たりとも動けないでいた。



オレは………



…どれだけ、その場所にいたのだろうか。


不意に、目の前に気配が生まれた。


一体いつからそこにいたのだろうか。


そこにいたのは、黒ずくめの小柄な少年だった。


俯いていることと、目深く被られた帽子でその人の顔は見えないけど。その人は間違いなくあの人だろう。



…この方は…この人は……



オレの先生で。


憧れの人。


誰よりも信頼していて。


何よりも頼もしい人のはずなのに。


オレの心に芽生えている不安感はまったく拭えなかった。


それどころか、ますます増えたような。



オレは前にもここで、この人と―――



身体から血の気が引き、震えが酷くなる。


何故か、オレはこの人に恐怖していた。


…と、気付く。


帽子に何か付着している。


赤い液体。命の源。それは血液。


それがべっとりと、帽子に付いていた。


誰の血だろう。


目の前の、この人は怪我を負ってない。


帽子に付いてる血は乾いておらず、帽子に染みきれず滴り落ち、今さっき付着したばかりだと言う事を告げていた。



オレはポケットに入っていた手を出そうとして…



…ふと、鋭い痛みが指先に走った。


その痛みでか、身体が自由になる。


指を見ると、赤い血が流れていた。


それに意識を向けると、目の前の気配が動く。


その人の手には拳銃が。


銃口はオレに向けられ。


あなたは顔を上げた。





「―――――…」





そこに見える顔は紛れもなくリボーンさんで。


けれどその身に纏う雰囲気は決してリボーンさんのものではなくて。


そしてその目に宿る光もリボーンさんとは違うもので。


だからその人はリボーンさんではなくて。


リボーンさんではない誰かがオレを撃とうとする。


折角動けるようになったのに、オレの身体はまた硬直する。


その人の引き金に掛かる指に力が入り…





「―――――獄寺!!」





リボーンさんが現れた。


闇が消え光が灯り場に世界が戻ってくる。


オレの部屋。そこに同じ容姿をした人間が二人。リボーンさんが二人。


現れたリボーンさんは肩から血を出していた。となるともうひとりのリボーンさんに付着している血はリボーンさんの血か。


リボーンさんは己の身体から流れ出る血をまったく気にすることなくもうひとりのリボーンさんを睨みつけている。もうひとりのリボーンさんは…笑っていた。


もうひとりのリボーンさんがオレに飛び掛る。オレの身体は金縛りにあっているかのように硬直したまま動けない。


「獄寺!!」


リボーンさんの叫びが向こうから聞こえる。そしてオレのすぐ近くにもリボーンさん。


もうひとりのリボーンさんとオレの距離が近くなる。触れられるほど近く。


そしてもうひとりのリボーンさんが口を開く。



「―――悪いな、獄寺」



…は?


喋った…?


え、このリボーンさん喋れるの? 当たり前かも知れないけど声もそっくりだな…


なんてあまりにも場違いなことを考えていたら。


「だが…まあ、勘弁してくれ。お前だってあいつの恋を応援してくれるだろ?」


「…は?」


こ、恋…?


あいつって…それって……?


「あいつは本当に自分に鈍いからな。周りの思いには鋭いのにそれに比例して自分の気持ちがまるで分かってない」


ああ、うん。それはなんとなく分かる。分かるけど…


それと今の状況と、一体何の関係が?


混乱するオレをよそにもうひとりのリボーンさんは悪戯っ子のような笑みをしてオレの肩を掴み引き寄せオレの頬に顔を寄せた。



「ご―――」



慌てたようなリボーンさんの声が遠くから聞こえる。



「あいつを、よろしく頼む」



無邪気なリボーンさんの声が近くから聞こえる。


言われた言葉の意味を考える暇もなく。


気が付いたらリボーンさんはオレたちへと距離を一気に縮めもうひとりのリボーンさんをオレから引き剥がしていた。


そしてリボーンさんはもうひとりのリボーンさんを床に叩き付け足で踏み付け手にした拳銃で容赦なく撃った。


…うわ。


リボーンさんがリボーンさんを殺してる…


なんという光景。リボーンさんも自分を殺すのに躊躇とかないのだろうか。


銃弾が尽きる頃、もうひとりのリボーンさんは消えてなくなった。霧のように消えてしまった。血痕すらも残らない。


「…死んだん…ですか? それとも逃げられた…?」


「あいつはそういう奴じゃない。だが…まあ、もう現れないだろう」


リボーンさんはあのリボーンさんになにか心当たりでもあるのだろうか。


「あいつはアルコバレーノの呪いだ」


「呪い…!? 呪いはもう解けたんじゃ…」


「だから、その残滓みたいなもんだ。他の奴らにも似たような奴らが現れてたらしい」


…だからマーモンいなかったのか……


「ったく…何なんだ一体。コロネロんとこの奴はラルにちょっかい出してたって言うし、風んとこの奴は手合わせしたらしいし」


「………」


自身に関心のあるものに近付くのだろうか。だとすると…もうひとりのリボーンさんがオレに近付いたのは…それにあの台詞は…


「…ん? 獄寺、怪我してるのか?」


「え? ええ、リボーンさんほどではないですが…」


オレの手からは血が流れていた。はて、どうしてオレは手なんて怪我しているのだっけ。


確か…ポケットから手を出そうとして痛みが走ったような。


オレはポケットの中を見てみた。


そこにはナイフが一つ。


…つい先日、リボーンさんが拾ってくれたナイフ。


「…これで切っただけみたいですね。すみません、ナイフを無造作にポケットに入れてたばかりに……」


「そのナイフはいつも懐に入れてた奴だな。落としたのを拾ってポケットに入れてたのか? まったく…」


…ん?


呆れたようにそう言うリボーンさんに、オレが覚えるのは違和感。


だってこのナイフはリボーンさんが拾って下さって。リボーンさんの前でポケットに入れたのに。


なのにまるで今初めて知ったかのような台詞…ん? 待て待て待て。


今目の前にいるリボーンさんが知らなくて、でもあの出来事が本当にあったとするならば…


ナイフを拾ったのは…あの日会ったのはもしかしてもうひとりのリボーンさんの方か!?


しかし何故そんなことを…と思うオレの傍ら、リボーンさんがハンカチを取り出してオレの手当てをしてくれていた。


「ってリボーンさん! オレよりもご自身の手当てを!! 明らかにリボーンさんの方が重症です!!」


未だにリボーンさんの肩からは血がだくだくと出ている。リボーンさんは煩わしそうな顔を作った。


「ああ、いいんだ別に。見た目はあれだがそんなに酷い怪我じゃない」


「で、ですが…しかしリボーンさんほどの方にそこまで怪我を負わせるなんて……」


流石はもうひとりのリボーンさん。残滓であれアルコバレーノの呪いということか。


「…お前も体験しただろ。あいつと向き合うと動けなくなる。…血を流せば解けるみたいだがな」


なるほど。確かにオレも思うところがある。動けぬ身体。しかし痛みと共にそれは解けた。


ポケットにナイフを入れてて助かった…って、ん? でもナイフをポケットに入れたのはもうひとりのリボーンさんがオレのナイフを拾ったからで…そのことはあのリボーンさんも知っていて。


ああもう、全ては仕組まれていたんじゃないかと疑ってしまう。あのナイフすら実は落としたんじゃなくてリボーンさんがオレからすって何食わぬ顔で返してきたんじゃないのかなんて思ってしまう。


そうまでして。そこまで回りくどいことをしてあのリボーンさんがしたかったこと…


と、頬に何かが触れる。白いハンカチ。リボーンさんがハンカチを持ってオレの頬を拭っている。


「…り、リボーンさん。そこは別になんともありませんが……」


そう言うもリボーンさんはその手を緩めない。いや、むしろ強くなってる。


その場所はもうひとりのリボーンさんが最後オレに触れたところだ。その場所をリボーンさんが執拗に拭う。


………。


うーむ。これは…よもや、まさか……いやいや、でも…


オレの頭の中を色んな推測が横切る。もうひとりのリボーンさんの言葉も。



―――悪いな、獄寺。


だが…まあ、勘弁してくれ。お前だってあいつの恋を応援してくれるだろ?


あいつは本当に自分の気持ちに鈍いからな。周りの思いには鋭いのにそれに比例して自分の気持ちがまるで分かってない。



あいつを、よろしく頼む。



……………。


これは…これって……


いやいやまさか。


そんなまさか。


そんなことあるはずない。


あるはずがない。



リボーンさんが、オレを思ってるだなんて。



そんなわけがない。


そんなわけが―――――



「獄寺」


「は、はい!!」



思わず声が上擦ってしまった。


しかしリボーンさんはそんなオレに気付くことなく言葉を続ける。


「これは…何なんだろうな」


「…は、はい?」


「あいつがお前を殺そうとしたとき…あいつがお前に触れたとき。オレは自分でも戸惑うほど怒った」


「え…」


「確かに教え子であるお前を手に掛けられそうになったら怒りぐらい覚えるだろう。だが…あの感情はそれだけとは思いにくい」


「………」


いや…ですから、リボーンさん…


そんなに期待させるようなことを言わないで下さいよ。


オレはあなたをとっくの昔に諦めて、今の関係で満足すると決めたのに。


なのに―――


「これは一体どういうことだ? どう考える? 獄寺」


「………そう、ですね…」


オレになんて言えって? オレにどうしろって言うんだ?


それは恋ですよと言って結ばれる?


そんなの何でもないですよと言って関係維持?



そんなのオレが決めれるかよ。



「…それは…その感情の答えは、ご自身で導き出すものですよ。リボーンさん」


「ん?」


「オレに聞かれても、分かりません」


「そうか…そうだな、オレの気持ちがお前に分かるわけがないか…すまない、今までにない体験だったから少し混乱した」


オレは今でもとてつもなく混乱しておりますよリボーンさん。


………。


「でも、」


「ん?」


「そのリボーンさんの戸惑うほどの感情が…オレに向けられているとするならば、オレともう少し触れ合えば少しは何かが分かるかも知れません」


「…なるほど。道理だな」


…あのリボーンさんにオレがレクチャーしている…?


ふと冷静になって今の現状を見てみたらとんでもないことになっていた。


「なら今度一緒に食事にでも行くか。あいつがお前に迷惑掛けたしな。その詫びだ」


「楽しみにしています。…その前にリボーンさんの怪我の手当てですが」


ちなみにオレの手当てはリボーンさんが済ましてしまった。オレはいいと言ったのに、自分を手当てして下さいと言ったのに。


「医務室に行きましょう。オレが診ますよ」


「…そうだな。頼む」


リボーンさんと二人、医務室まで進む。



さて、オレも腹を括らねば。



リボーンさんが自分の感情にどんな答えを出すかはまだ分からないけど。


どんな答えであれ、オレはオレで真摯に向き合おう。


…あのリボーンさんに、リボーンさんを頼むとも言われたし。


リボーンさんと二人、通路を進む。


あの日、リボーンさんからナイフを渡された廊下を通り過ぎる。


もうひとりのリボーンさんが苦笑しながらこちらを見ている気がした。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もうひとりのリボーンさん「つかあいつオレがあれだけ身体張ったってのにまだ自分の気持ちに気付かないのかよ!!」(ガーン!!)

獄寺くん「お前…苦労してるんだな……」

リボーンさん「仲良いなお前ら」