平和な休日



いつもと同じ、休日のある日。


いつものように、獄寺がツナのうちまで遊びに来た。


「10代目ーって…え?」


階段を登り終えた所でツナの部屋の扉がばたんと大きく開かれ、そこから泣きながら駆け込んできたのは…10年バズーカで来たであろう大人ランボ。


「あわわ、あ、わ、わ、わ、若き獄寺氏! お助け下さい!!」


「そんな、どこぞの悪漢に追われている女みたいなこと言われてもな…」


獄寺がそう言う間に大人ランボは獄寺の背中にしがみ付いて。獄寺がうざいの一言で引っぺがそうとしたとき。


「ちょっと大人ランボ! さっきの話の続きはまだ終わってないよ!!!」


いつも穏便で温暖な10代目こと沢田綱吉が思いっきり怒った顔でランボを追い掛けてきた。


「って、獄寺くん?」


「ど、どうも10代目」


「いらっしゃい獄寺くん。ゆっくりしていって」


ツナがいつものようににこやかに答えて。そしてその目をランボに向けて。…その目はいつの間にか冷たくなっていて。


「―――それはそうとランボ。…もう詳しいことは聞かないよ? だから答えろ。さっきの話は本当…?」


「ほほほ、本当です本当ですー! 残念なことですけどこれが現実なんですー!!!」


ランボが泣きながらそれを言い終わると、煙と共にその姿が消える。幼き五歳の姿に戻る。


「…あれ? またゴクデラだ。ゴクデラー!!」


ゴクデラー! とランボは獄寺に飛び掛ってくる。ああうざい。


ツナはツナでなにやらぶつぶつと呟いている。正直怖い。


「じ、10代目…?」


「ん? ああごめん。…獄寺くん、悪いけど暫くランボの面倒見ててくれない?」


「え? …それは構いませんけど…」


じゃあお願いとツナは獄寺に言って、そのまま自室まで戻った。


「なんなんだ…?」


パタンと閉じられた扉を呆然と見つつ。しかし面倒を頼まれた手前このまま放っておくことも出来ず。獄寺は来た道を引き返す。


「今はなんか10代目の自室に行っちゃいけない気がする…公園にでも行くか。ランボ」


「わーい!」


無邪気に喜ぶランボを引き連れて獄寺は外に出掛けた。





その途中。





「そういえばお前…いや、いいや」


「? なんだゴクデラー」


「や…なんか10代目が未来のお前になんか聞いてたからどうしたのかなって思ったけど、お前が知ってるわけないか…」


…って、そういえば。獄寺は思い出す。ランボは現代に戻ってきたとき…


「なあ。お前ここに戻ってきて「また」って言ったよな。向こうにもオレがいたのか?」


「うん。向こうではランボさん一人で。泣いてたらゴクデラが来てくれたのー!!」


はて。未来のオレは子供好きになっているのだろうか、と獄寺は思う。いや事情を知っているから五分だけ面倒を見ているのだろう。


「そこでオレはあいつに殺されかけたんだけど、ゴクデラが守ってくれたの!!」


だからゴクデラ大好きー! と頭の上に乗ってたランボが降りてきて獄寺に頬ずりする。暑苦しい。うざい。


「あーはいはい…って殺されかけた? 誰に」


そこまで緊迫した状況だったのだろうか。まさかボンゴレが攻め込まれてる?


難しく考え込み始める獄寺にランボが明るく答えた。


「リボーン! ランボさんの天敵!!」


「……………はぁ?」


リボーン。あのリボーンさんのことだろうか。


「つまりお前は未来でもリボーンさんに喧嘩売って、そしてそのフォローをオレがしたわけか…」


オレ、苦労するんだな…と獄寺は遠い未来に向けて視線を向ける。


「まったく、困ったものだな」


「そうですね…って、え!?」


声に気付いて獄寺が視線を向けると獄寺の腕には今話をしていたリボーンがすっぽりと収まっていた。


「あれ? リボーンさんいつの間に?」


「ついさっきだ。ツナから逃げてきてな」


「10代目から?」


ツナといえば先程部屋に戻っていた。彼はリボーンに用があったのだろうか。


「あの…何かあったんですか?」


「ああ、ツナがな。10年後のランボに聞いたらしいんだ。未来のお前の隣にいる奴は誰なんだって」


「はぁ」


「で、それがオレだったらしい。おかげでよく分からんことを散々言われた。まったく困ったものだ」


「…よく分からないこと?」





「お前獄寺くんとの年齢差考えたことあるのかよ! どう考えても犯罪だろ!! 今からでも遅くないからとにかく獄寺くんから手を引けよ!!!





「…だと」


「あ、あはははははは…」


それは客観的に見てみるとリボーンではなく獄寺に言うべき台詞な気もするが。思わず乾いた笑みを溢す獄寺。


というかビアンキが愛人な時点でその突っ込みは意味がない気がするのだが。


「もう遅いのにな」


ちゅっと、音を立ててリボーンは獄寺に口付けする。獄寺もくすぐったそうにしながら。


「…そうですね。10代目には悪いですけど」


ちゅっと、音を立てて獄寺もまたリボーンに口付けし返した。


そしてランボさんもーと獄寺にキスしようとしたランボはまだ早いとリボーンに叩き落された。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ああもうリボーンさん。オレ10代目からランボの世話を任されてるんですから、あまりいじめないでください。