獄寺隼人はいつもと同じ時間に目が覚めた。
と、数秒して苦笑する。今日は休みだった。
昨日、リボーンが来て「明日休みだからな」と獄寺に告げたのだ。
そして、その場の流れでお茶をしようという話になった。
場所提供はリボーン。菓子調達は獄寺だ。
久々の休日。獄寺は昨日から今日が楽しみだった。
獄寺は鼻歌を歌いながら服に袖を通し、約束の時間まで随分と間があるのにも関わらず部屋を出た。
暫くして。ツナサイド。
「………来ない…」
ツナは項垂れていた。
というのも10年前からずっと片思い中の相手にして自身の右腕、獄寺隼人がいくら待ってもやってこないのだ。
途中でナンパでもされているのだろうか。山本あたりにでも。雲雀さんもああ見えて獄寺くんを狙っている。大穴でクロームなんてどうだろう。
獄寺くんああ見えて押しに弱いからなぁ。強く言われたら断れないんだよなぁ。ああ、ダメだよ獄寺くんオレでさえ獄寺くんと手を繋いだ事すらないのに他の奴と何かと…!!
「フフフ…」
獄寺に会えず、早くも禁断症状が出てきたツナだったが、懐から携帯が鳴り響き正気に戻る。
「獄寺くんっ!?」
思わず叫び携帯を開けばそこには愛しの右腕…ではなく憎き家庭教師の名が。
「……………。もしもし」
『獄寺は預かった。返して欲しくば今日ぐらい真面目に仕事しろ』
「はぁ!? 獄寺くん預かったって何してんのリボーン!! 返せ! 今すぐ返せ!!」
『うるさい黙れ』
「………」
黙れと言われて黙ってしまう自分が悔しいが、10年間まったく歯が立たない相手に敵わないツナであった。
『いっつも獄寺に任せきりで。たまには羽を伸ばさせてやれ』
「う…」
言われて言葉を失うツナ。獄寺はツナのために自分の仕事だけでなくツナの仕事も持っていく。これではいけないと思いつつ優秀な右腕に甘えてしまう日々である。
『という訳で今日は獄寺は休みだ。一人で楽しく仕事しろ』
「…分かったよ……」
ツナは落ち込みながらも了承した。愛しの右腕に会えないのは残念だが確かに獄寺にも休みは必要だ。
と、ツナが納得しかけた時だった。
『リボーンさん、ケーキ買ってきました』
ツナの愛しい愛しい右腕の声が携帯から聞こえてきた。
『ああ、ご苦労。ついでに茶も入れてくれ』
『はい、分かりました』
「って、獄寺くん休ませてやれよ!!」
『うるせぇ黙れ』
「黙らないよ!! 何だよオレには偉そうに言っておいて!! 台無しだよ!!」
『……―――……』
急に電話口が黙り、何かぼそぼそと言っているのが聞こえる。なんと言っているのかは分からない。
そして。
『―――10代目』
「え!? ご、獄寺くん!?」
『お仕事、頑張ってください!!』
「うん! 超頑張る!!」
ピッ
電話が切れた。
ツナは誤魔化されたのにも気付かないまま仕事に精を出していった。
「―――ボス」
と、クロームが主務室にやってきた。
「あれクローム。どうしたの?」
「…隼人の姿が見えないんだけど…どこに……」
「獄寺くんならリボーンとお茶してるけど」
「思いで人が殺せたら…!!!」
クロームはたくましいなぁ。とツナは思って仕事に取り組んでいった。
「リボーンさん、お茶が入りました」
「ああ、すまないな」
獄寺がお盆にコーヒーを載せてやって来た。
茶菓子は人気店のケーキ。モンブランにチーズケーキ。苺ショートにシュークリーム。
ちなみに苺ショートは獄寺の分だ。可愛らしいと言うなかれ。獄寺は苺が好きなのだ。
「悪いな、せっかくの休みに買い物に行かせて」
「いいえ」
にこりと微笑んで獄寺は答える。リボーンの前にカップを一つ。自分の席にもカップを一つ。
席に着いて、ケーキを振り分けカップを合わせてカチンと乾杯。
こうして、獄寺の久方振りのリボーンとの休日が始まった。
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いただきましょう。いただきます。
リクエスト「リボ獄前提獄総受」
リクエストありがとうございました。
獄寺くんのいちご好きは中の人ネタです。