ふと目を開ければ、そこには自室のではない…しかし見知った天井。
ここは…そう、リボーンさんの部屋だ。
オレがリボーンさんから自室の鍵を頂いて、随分と経つ。
初めの頃は自分の手の中に鍵があるというだけで満足してしまって、リボーンさんの部屋に伺うなど恐れ多くて出来なかったが…
「それじゃ、やった意味がないだろ?」
とリボーンさんに言われ、リボーンさんに自室へと連行され…そういうことが何度も続き、今ではオレの部屋よりリボーンさんの部屋で過ごすことが多くなっている。
全く、人間というのは慣れる生き物だというらしいが、どうやらそれは当たりらしい。
なにせ、今の今まで、オレはリボーンさんの自室のソファの上で眠っていたというのだから。
少し前までは考えられないことだ。
起き上がると、身に掛けられてた毛布が落ちた。
身に覚えがない。なら、リボーンさんが掛けてくれたのだろう。
そう言えば、リボーンさんの姿も気配も見当たらない。出掛けているのだろうか。
部屋を見渡すうち、オレの視線は机の上へ。
空になったコーヒーカップ。
…珍しい。
リボーンさんの部屋は持ち主に似て隙がない。ゴミどころかチリ一つない。
そのくせオレはリボーンさんが掃除などをしている姿を見たことがないのだ。
そんなリボーンさんが、コーヒーカップを置き去りに…
なんにしろ、これはチャンスだ。
日頃お世話になっている礼を、少しでも返さねば!!
ギュッ
ツルッ
ガシャン。
「………」
割れた。
持ったら。力、入れすぎて、滑って、落として、割れた。
「…切腹で許されるかな……」
いや、許されなくてもやるしかない。
オレはナイフを取り出す。
―――いざ!!
「…何してんだ、おめーは」
「り、リボーンさん…止めないで下さい!!」
リボーンさんは呆れ顔でオレを見遣り、続いて割れたコーヒーカップに目を向け、ああ、と頷いた。
「んなもんとお前の命を張るんじゃない」
「ああ、すいません…ここで腹を切ったら部屋が汚れますね…自分の部屋で切ります!!」
「聞けよ」
自室へと向かおうとするオレの首根っこを掴み、リボーンさんは自分へと向き合わせる。
リボーンさんはため息を吐き、怒ってないと告げた。
しかしオレは知っているのだ。
このカップが、リボーンさんのお気に入りだということを!!
「お前の方が気に入ってるから、安心しろ」
リボーンさんがそう言う。オレの顔が耳まで真っ赤になる。
リボーンさんは話は終わりだとオレの頭を撫で、そうだとオレにあるものを渡す。
箱に入っているそれを開けると、そこには奇しくも先程オレが割ったカップと似たデザインのコーヒーカップ。
「これは…」
「少し早いが、クリスマスプレゼントだ」
リボーンさんの言葉と手の中のカップに、オレの中が嬉しさと申し訳なさでいっぱいになる。
オレはリボーンさんのカップを割ってしまって、リボーンさんからカップを貰って。
「…ます」
「ん?」
「今からオレ、お返しのカップ買ってきます!!」
言って、オレはダッシュしてショップへと向かう。
リボーンさんがやれやれと笑み、オレを見送るのが分かった。
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この後リボーンさんは獄寺くんが帰ってくるまでにカップの掃除をしました。