「骸…オレ、実はずっと前から骸のことが…」
隼人くんが頬を赤く染めながら僕にそう言ってきます。
クフフ…分かっていましたとも。貴方は絶対に僕に振り向くと。
「骸…好きだ。愛してる…」
僕も愛していますよ、隼人くん…
「骸…」
隼人くん…いや、隼人…!
「あ。悪い骸。手が滑った」
愛しの貴方はブラウン管の向こう側
「あー! せっかくいい感じにドリーム入ってたのに電源切るなんて! 酷いですよ隼人くん!!」
「勝手にゲームにオレの名前を使う方が酷いわぁああ!!! さっきからなんだあれは! 気持ちわりぃ!」
「おや。見てたんですか隼人くん。…恥ずかしいですねぇ、もう」
「恥ずかしいのはオレの方だボケが! 金輪際ああゆうことは止めろ!」
「えー…」
「あ。わりぃ。手ぇ滑りそう」
「わー! ゲーム機本体ごと窓から落とそうとしないで下さい! それレア物なんですから!!」
「じゃあもう止めろよな」
「………」
「そんな雨の日に子犬がする縋るような目をしても。駄目だ」
僕そんな眼してましたかねぇ。
「あ。わりぃ。手ぇ滑るわ」
「ぎゃーすいませんすいません! もうしませんから没収は勘弁願いますー!!」
「まったく…次したら―――沈めるからな」
何を!? 何に!?
「分かったか? 分かったら、返事」
「…う、ぅぅう…」
「? 骸?」
「これぐらい…これぐらいいいじゃないですか! だって隼人くん振り向いてくれないんですから!!」
「………」
「たくさん…アプローチしても隼人くんにはまったく効果がなく。あまつさえ「うぜぇ」の一言で片付けられる僕の気持ちが…分かりますか!?」
「いや、まったく持って分かんねぇけど」
「そう、それこそ…隼人くんの後をこっそりつけてみたり隼人くんの部屋の中に入ってみたり…意味もなく無言電話を掛けてみたりしました」
「あれはお前だったのか。そしてあれはアプローチだったのか」
「クフフ…ちょっとした物音にも驚く隼人くんは見ていてとても可愛らしかったですよ」
「そうか。よし。殺す」
「クハハハハハハハハ! そんな短絡的思考はいけませんよ隼人くん! ああでもその微笑みいいですね! 僕骨抜きになってしまいそうです!」
「ははははは。いいから骸。お前そこを…」
「そこを動くな。獄寺」
いきなり現れた声に、僕の動きも隼人くんの動きも止まりました。
それに続いて銃声が響いて…
「ってあぁぁあああああああー! 僕のゲームが!!」
「悪いな骸。手が滑ったんだ」
「あんた今思いっきり狙いつけて撃ちましたよね! しかも銃に弾込めてから撃ちましたよね!?」
「幻覚でも見たんじゃないのか?」
よくもまぁいけしゃあしゃあと!!
「幻術使いの僕が幻覚なんて見るわけがないじゃないですか! …ああああもう…僕の隼人くんが…!」
「誰がお前のなんだよ」
「そうだぞ骸」
「リボーンさんも言ってやって下さいよ!」
「獄寺はオレのだ」
誰もそんなこと聞いてないですよアルコバレーノ。
「…もう、リボーンさんてば…」
ああ、そこは頬を赤く染めて照れるところなんですね隼人くん。勉強になりました。
ていうか隼人くんはいつの間にアルコバレーノに肩なんて抱かれてるんでしょうかねぇ。いいですねぇ。羨ましいですねぇ。死ねばいいのに。
そんな気持ちを込めてアルコバレーノを睨みつけていたら…負けじと隼人くんにも睨みつけられてしまいました。
「…こら骸! そんな、熱い視線でリボーンさんを見つめるな!!」
ワオ! 僕そんな目をしてました!?
「悪いが、骸。オレはお前の気持ちには応えられねぇぞ」
僕だってお断りですよ。てか応えられても困りますよ。
「…あ! でもリボーンさん、そんな手酷く振ったら骸ってばリボーンさんに応えられなかった傷心から、さっきのゲームにリボーンさんの名前を付けちゃうかも知れません!!」
ちょーーーーー!!!
な、何を言ってきますか貴方は!!
つけるわけがないじゃないですか!!
だって…だってさっきのゲームに…恋愛シミュレーションゲームにアルコバレーノの名前ですよね!?
ちなみに冒頭の僕の台詞は主人公の台詞をそのまま頭で読んでいたわけですが!
…えぇ本名プレイですよ痛い奴ですよ僕は。
それが何か?
ともあれ…あれを…ヒロインの名を隼人くんでなくアルコバレーノに…?
「骸…オレ、実はずっと前から骸のことが…」
アルコバレーノが頬を赤く染めながら僕にそう言ってきます。
クフフ…分かっていましたとも。貴方は絶対に僕に振り向くと。
「骸…好きだ。愛してる…」
僕も愛していますよ、アルコバレーノ…
「骸…」
アルコバレーノ…いや、リボーンくん…!
「あは、あははははは、あっはははははははははははははははははは!!!!!」
「うゎあ! リボーンさん大変です! 骸が普通に笑ってます!」
「逆にレアだな」
や…だって! 笑うしかないでしょこれは…!
「わああリボーンさん! 今度はなんか、骸が壁に頭をゴンゴンぶつけてます!! 笑いながら!!」
「ワケわかんねぇな」
ええ。分かって下さらなくても結構です。
単に思わず脳内でヒロインアルコバレーノを想像してしまった記憶を消し去りたいだけですから。ああもう早く忘れろ僕…!
「…リボーンさんの男前さに惚れる気持ちは分かるけど…リボーンさんは渡さないからな!」
あああもう、隼人くん。アルコバレーノをぎゅーてしないで下さいよ! 羨ましいですから! アルコバレーノが!!
「オレからもお断りだぞ。クフフと笑いながら輪廻を回るような奴は好みじゃねぇからな」
それどんだけピンポイントなんでしょうかね。
「というわけで骸! これからリボーンさんに近付くんじゃねぇぞ!!」
ええまぁ喜んで。
「獄寺にも近付くなよ」
…駄目ですか…
最後にしっかりと釘を差しながらアルコバレーノと隼人くんは去っていきました…
こののち、傷心のため不貞寝をしたらさっきのヒロインアルコバレーノが悪夢として出てきたんですが…
涙を呑みながらゲーム機の残骸をほうきとちりとりで片付けている今の僕は。それはまだ知らない話。
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出来ることならいつまでも知りたくない話。
リクエスト「骸獄で最終的にリボ獄」
辛口ムース様へ捧げさせて頂きます。
リクエストありがとうございました。