「リボーンさん、いってらっしゃいませ」


「ああ」



リボーンさんが任務に出るということで、オレは玄関まで見送りに行った。


…任務に出るリボーンさんは本当に格好良い。


ああ、いえ、誤解です。そんな、リボーンさんはいつだって格好良いです!!


でも任務に行くリボーンさんはやはり仕事に行く、というだけあっていつもとは少し身に纏う空気が違って、そこにまた痺れる! と言いますか…



「…獄寺?」


「―――え? え!? な、なんですかリボーンさん!?」



気が付いたらリボーンさんがやや怪訝顔でオレを見ていた。


というかさっきよりも少しオレとリボーンさんの距離が少し縮まっていてどきどきするのですが!!



「なんですかって…お前なぁ…大丈夫か…?」


って、リボーンさんはそう言ってオレに手を伸ばして……って、手を!?


リボーンさんの手の平が、オレの額に当てられる。…冷たい、リボーンさんの手。



「…やっぱり熱があるぞお前。風邪でも引いてんじゃねーのか?」



いえ、なんつーかそれは、風邪というかなんというか、それとはまた別の要因と申しますか!!!


オレがなんだか色んなものに感動していると、リボーンさんは手を引っ込めて、



「お前は少し頑張りすぎだな。たまには休めよ」



と言って、踵を返して任務へと出て行った。片手を振っていってくると告げていた。いってらっしゃいませリボーンさん。





リボーンさんが見えなくなると、オレはボンゴレへと戻る。オレはオレで、仕事です。


…ああ、でもまさか、あのリボーンさんに心配されるだなんて!!


正直嬉しいんですけど!!





「…獄寺くん?」


「はい? なんですか10代目」


「えっと………大丈夫? なんだか顔が赤いけど…」


「ですから顔が赤いのはリボーンさんのせいですってば☆」



「ごめん獄寺くん何の話!?」



「あ、すいませんつい口が滑りました!



「獄寺くんリボーンに何されちゃったの!?」



「はい! 今朝リボーンさんに心配して頂けました!!!


「なんていうか、キミたちの関係は本当………アレだね!!


「お褒めの言葉として受け取っておきます!!!」



「………いや、でも獄寺くん」


「はい?」


「やっぱり顔赤くない?」


「いや、ですからそれは…」


「少し休憩してきたら?」


「これは体調不良とかではなくてですね、」


「寝てきなさい」


「10代目、」


「寝てきなさいってば」


「ですからこれは、」


「とっとと寝て来いやコラ」


「はい」



…10代目が怖い…


本当に大丈夫なのにー…


ああ、そうだ、なら自室に仕事を持ち込んで…



「獄寺くん?」


「はい? なんですか10代目」


「言っとくけど自室に仕事持ち込んだりしたら。締めるからね



ギャー!!



「獄寺くん。顔色悪いけど大丈夫?」


「………自室でゆっくり休ませて頂きます…」


「ん。そうして」



オレはとぼとぼと自室に戻った。


別に眠くはなかったのだけれど、何故かベッドの中に入らなければ10代目に締められそうな気がしたので、オレはいそいそと毛布に包まる。


ふっと目を瞑ってみると、なるほど、確かに顔が火照っているのがよく分かった。


…流石10代目。流石リボーンさん!!


全然眠くはなかったはずなのに、あたたかな毛布の中で目を瞑っているたら………いつしかオレは眠りについていた。





喉の焼けるような痛みで目が覚めた。


身をよじって、思わず咽て、喉が痛くて。



「あ、あ"―――…」



声、枯れてるし………


リボーンさんの言う通り、本当に風邪でも引いたのだろうか。


他にも異常が出てないかと確認してはみるけれど、今のところ喉の痛みを除けば熱もないし寒気もない。鼻も詰まってないしだるくもない。喉痛いけど。超痛いけど。


さてどうしたものか。出来ることなら身体の不調など一人で直してしまいたいが早急な解決の方が好ましい。


………頼みたくはないが…果てしなく頼みたくはないが、シャマルに直してもらうか…


オレは喉を押さえながら自室を出た。





現在時刻は11時半。


リボーンさんが帰ってくるのが確か夕刻6時頃。


それまでにこのガラガラな声をどうにかしておきたい。



「………ん? おい、ごくで―――」



さて、急がなければ。


オレはダッシュして医務室まで急いだ。


なんか今小さくて黒いのが見えたような気がしたけど、その黒いの果てしなくリボーンさんっぽかったけど、まぁリボーンさんが今ここにいるわけないよな。


オレは振り返らずそのまま走った。



「……………」



目指せ医務室!!





シャマルいるかゴラーーー!!!



オレは極めて丁寧にドアを開けた。手で開けるのももどかしかったから蹴っ飛ばして開けたんだが、それでもオレは丁寧に開けたと言い張る。


が、せっかくオレがわざわざ赴いたというのにシャマルはいなかった。というか誰もいなかった。無人だった。


ち、あの野郎、いてもいなくてもどうでもいいときはいるくせに稀に必要な時こそいねぇ。役立たずのゴミのクズめが。


…仕方ない、別の医者のところに行ってくるか………







―――数時間後―――



「ただいまーっと」


「…ああ、シャマル。どこ行ってたんだよ」


「どこって…聞いてくれよボンゴレ坊主。こないだ四股掛けた女の子に見つかって殺されかけてよぉ。ずっと逃げてた」


「………はぁ、何でもいいや。とりあえずこっち来てー、ヘルプー」


「……? 言っとくがオレは男は診ねーぞ」


「診るとかじゃなくて、話聞くだけでいいから。オレもう限界ー」


「………はぁ?」


「あいつオレの主務室に延々居座っててうざいったらなくて…」


「一体なんの話…って……………おい、ボンゴレ坊主」


「何?」


「あの、お前さんの主務室の隅で見るからに負のオーラを撒き散らしながら体操座りして、のの字を延々と書いてる黒い物体は。なんだ


「リボーン」


「ねーよ」


「いやいやへこんだリボーンは大体いつもあんな感じだから」


「ねーよ」


「あるんだよ!!」


「はぁ…何だよ何事だよ何があったんだよ」


「なんか…獄寺くんに無視されたって………」


「…隼人が……? それこそねーだろ…」



「いいんだ………オレなんて…オレなんて……」



「あれ下手したら泣いてないか?


「泣いてようと泣いてなかろうとどうでもいいからあれどうにかしてよ」


「馬鹿野郎あんなんオレに治せるかボケが。隼人でもねーと無理だろあれ」


「その獄寺くんがいないんだよ…」


「いない? 携帯は」


「繋がらない。…ちなみにリボーンも獄寺くんに電話したんだけど無視されたー、て」


「獄寺…!!! オレのどこが悪いんだ…!! 言えば直すから!!」


「ああ、リボーンがまたどっぷりと負の深みに…」



ただいま戻りましたー


「おう隼人」


「あれ獄寺くん。どこ行ってたの?」


ちょっと病院にー


「………お前、声どうした?」


起きたらこうなってたー


「獄寺くんやっぱり具合悪かったんだ?」


すいません、一度横になって起きたら喉が……


「………ところで獄寺くん。リボーンのことどう思ってる?」


えええええええ!? じゅじゅじゅ、10代目なんて恥ずかしいこと聞いてくるんですかもうもう! そりゃあ好きですよ大好きですよお慕い申しておりますとも!!


「…いつも通りのリボーン馬鹿の隼人だな」


「そうだねー………そういえば獄寺くん、今日リボーンと最後にあったのっていつ?」


朝の6時です!! オレ任務に出るリボーンさんをお見送りしましたから!!


「…リボーンが無視されたって嘆いているのはいつだ?」


「今日の昼前って………言ってたけど、獄寺くんそれからリボーンと本当に会ってない?」


何言ってるんですか! リボーンさんは今日は任務で夕方まで帰ってこないんだから会えるわけありませんよ!! だからリボーンさんが帰ってくるまでにこの声直そうって…でもシャマルの馬鹿はいないし。


「悪かったな」


「………あと獄寺くん、携帯は? オレ一回獄寺くんに連絡入れたんだけど……」


え…あ、すいません10代目!! オレ自室に携帯忘れてました!! 今すぐ取ってきます!!



「え、いや別に………って、いっちゃった…」


「まぁ声がおかしいこと以外は普通の隼人だったな。声を治すのに必死で周りが見えてなかった、携帯は忘れてた。それだけか」


「ふぅ………だってよリボーン。よかったね………って、」


「ん? どうした? ツナ」


「早くも復活してるし…」


「何のことだ?」


「おいリボーン。お前さん、目がまだ少し赤いぞ?」


「マジか!?」



ただいま戻りましたー!


「ああ獄寺くん」


10代目!! 聞いて下さい!! 携帯にリボーンさんからも連絡が入ってて、リボーンさん早めに戻ってこれるそうなんですよ!!


「もう戻ってきてるぞ」


あ! リボーンさん!!



(獄寺くんリボーンがすぐ目の前にいるって気付いてなかったのー!?)



「まったく、寝てたのか?」


すいませんリボーンさん!! …はい、リボーンさんからの連絡があったとき…オレ横になってて気付かなくて…


「はぁ……まぁいい。知ってたか? オレがボンゴレに戻ってきたばかりのとき、お前と一度擦れ違ってたんだぞ」


えええええええ!? す、すいませんリボーンさん!! オレ、全然気付かなくて………


「お前は本当に仕方がないな。今日のところはもう寝とけ」


そんな! オレ、喉の調子がおかしいこと以外は全然…


「いいから。朝も言っただろ。お前は少し働きすぎなんだ。少しは休め」


リボーンさん………



(ピンクいオーラが見える…そしてハートが飛んでいる……)



分かりました…オレ、リボーンさんのお言葉に甘えて今日は休ませて頂きます!!


「ああ」


リボーンさん…すいません。


「馬鹿だな。お前は何を謝ってんだ?」


だって…今日、リボーンさんが帰ってきたら一緒に食事をする約束をしていたのに…


「………へぇー、そうだったんだ。うんうん、デートよりも恋人を優先だよねー」


「前から都合が合わない合わないって言ってて、ようやく叶ったデートなのにな。まぁまた次の機会だな」


じゃあオレ、一刻も早く治すためにもう寝ますね! お休みなさい!!


「ああ、うん、お休みー…」


「お休み隼人」


「……………」





「………って、おいツナ」


「何? Dr.シャマル」


「隼人が出てってから部屋の隅まで移動して、さっきよりも暗いオーラをかもし出しつつ体操座りしてのの字を書きだしたあの黒い物体は、なんだ


「リボーン」


「ねーよ」


「いや今度は最初から見てただろ!? リボーンは意外と心弱いよ!?


「意外だなぁ」


「てかリボーン一体どうしたんだよ!! 獄寺くんが姿を消すまではあんなに格好付けてたくせに!!」


「………てた…」


「ん?」


「約束……忘れてた…」


「なんだ。男気見せたと思ったらただ忘れてただけか」


「みたいだね……ってああまたオレの部屋が辛気臭くなる………ちょっとシャマル、あれの話聞いてあげてよ。医務室か何処かここではない場所で」


「やなこった。お前が面倒見てろよ」


「オレだって嫌だよ!!」



「……………グスッ」



「「泣くなリボーン!!!」」





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お願い泣きやんで! オレそんなリボーン見たくないよ!!


リクエスト「10年後獄風邪引きネタ」
リクエストありがとうございました。