「失礼します、リボーンさ……」


ん、と紡ぎかけたその言葉はオレの喉の奥に押し込まれた。


「………」


昼下がり、リボーンさんの自室。


「zzz………」


リボーンさんは椅子に座り込みながら……眠っていた。





驚いた。


あのリボーンさんも寝ることがあるのか。


オレがまだ日本で学生の真似事をしていたとき。赤ん坊のリボーンさんが昼寝をしている姿ならよく見掛けていた。


けれどあれから10年。少年と呼べるまで成長したリボーンさんが眠っている姿などオレは見掛けたことなどなかった。


…やっぱりリボーンさんでも眠ることがあるんだな…


やや安心しながら音を殺しつつ近付く。


おお、目を瞑ってるよリボーンさん……


眠っているということは、きっとそれだけお疲れなのだろう。


オレの用事は特に急ぎというわけでもないし、またあとでもいいか。


オレはまた足音を殺して、部屋の中の毛布を取った。


まだまだ寒い時期。リボーンさんが体調でも崩されたら大変だ。


オレはリボーンさんに毛布を被せて。


…リボーンさんの頬に、小さく口付けた。


………。


なんだか少し恥ずかしい。


だってリボーンさんがいけない。いつも強気で我侭で傍若無人で理不尽なリボーンさんがこんなにも無防備なんだから。


こんな顔見せられたらいつも押されてるオレだって仕返しや悪戯の意味を込めてこんなことをしてしまう。



だから悪いのはリボーンさんなんだ。



オレはうんうんと頷いて。そう思い込んで自分を正当化させて。


そこまでやって誰かに見られてないだろうな…という思いが込み上げて。誰もいないと分かっているのに思わず辺りを見渡して。


周りの確認を取ってようやく安心する。よし、誰にも気付かれてない。



「…おやすみなさい、リボーンさん」



オレはリボーンさんの耳元に小さくそう呟いて。リボーンさんの部屋をあとした。





翌日。


何故か身体をギクシャクさせてるリボーンさんを目撃するのはまた別の話。





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リボーンさん、一体どうなされたんだろう。