某月某日。


獄寺がツナ宅へと赴くと、やけにぐったりと疲れたツナが出迎えてくれた。


「ど…どうなされたんですか、10代目」


「獄寺くん…いや、リボーンがさ……」


「リボーンさん?」





ツナが言うにはこうだ。


珍しくリボーンが体調を崩した。


当然ツナは心配し、拙いながらも看病をした。


しかし…





「めっちゃ小言言われた…」


余程酷い事を言われたのか、ツナはべっこべこにへこんでいた。


ツナは獄寺を残し、傷心を癒すため近くの公園のブランコに座りに行った。


一人取り残される獄寺。


「ええと…お邪魔します…」


呟き、獄寺はツナの自室に向かう。


そこにはハンモックの上でぐったりと横になっているリボーンの姿…


「リボーンさん…」


なんと痛々しい。


いつもの自信に満ち溢れた態度も、何事にも動じない頼もしさも今は影を潜めている。


ただ、ただ、一人の赤ん坊が横たわっているだけだった。


と、リボーンの瞳が獄寺を捉える。


「…獄寺か」


「大丈夫ですか…?」


思わず聞いてしまう。大丈夫なわけがないのに。


「そうだな…横になってたら……少しは、楽になったか…」


しかし台詞の途中でリボーンは咳き込む。慌てて獄寺は駆け寄りリボーンの背を摩る。


…それだけの触れ合いでも分かる。リボーンには相当な熱があると。


「…リボーンさん、今だけでも10代目のベッドをお借りしましょう…」


「そう…だな」


獄寺はリボーンをそっと抱き上げる。軽い身体はやはり熱い。


リボーンをベッドに寝かせる。息は荒い。いかにも苦しそうで、見ているこちらが苦しくなってくる。


何も出来ない、無力な自分に歯噛みする獄寺。


その様子を、リボーンが静かに見遣る。


「…獄寺」


「リボーンさん…?」


リボーンが弱々しく獄寺に手を伸ばす。獄寺はその手を優しく握る。


「…愛してる…獄寺……」


「り、リボーンさん!?」


突然の告白に驚きを隠せない獄寺。


まさか高熱の余りに自分を誰かと見間違えているのだろうか。いいやしかしリボーンは確かに自分の名を言った。混乱する獄寺。


「リボーンさん…お戯れを…」


なんとかそう言うが、しかし今のリボーンに戯れるだけの余裕があるだろうか。むしろ最期の言葉にさえ聞こえる。


「…信じちゃ貰えないかも知れないが…オレは……ずっと前から、お前のことが…」


「リボーンさん……」


思わず頬が赤らむ獄寺。獄寺とて、ずっと前からリボーンに好意を寄せていたのだ。


ずっと片想いだと…片想いで終わるのだと思っていたのだが…まさか両想いだったとは。


「リボーンさん…お、オレも…その……」


混乱しながらも言葉を紡ぐ獄寺に、リボーンは優しく微笑む。


「オレは…次起きたら…この事を忘れる…だが…この想いは変わらない」


「リボーンさん…何を……」


「オレは…意気地が無いから…また同じことを言うのに時間が掛かると思うが…待っててくれるか…?」


獄寺にはリボーンが今どういう状況になっているのかまるで分かってない。


だが、そう聞かれるのなら獄寺の出す答えは決まっている。


「…はい。……待ってます、リボーンさん」


獄寺の言葉にリボーンは仄かに笑い…そのまま眠ってしまった。


獄寺には今、何が起きたのか理解出来てない。


理解するには時間がかかる。


あまりの事に、突然の事に。唐突に、嵐のように過ぎ去った時間に。


確かなのは、目の前に眠るリボーン。


胸元には、先ほど抱き上げた時の微かな感触がまだ残っている。


自分の中の想いは先程よりも膨れ上がっていた。


へたり込むようにその場に座り込む獄寺。


その顔は赤いまま。


獄寺が傷心から立ち直ったツナが帰ってくるまでそれまでの回想を繰り返していた。





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「ど、どうしたの獄寺くん! 獄寺くんもリボーンに酷いこと言われた!?」

「いえ…むしろその逆と申しますか……」