それはある晴れた日のことでした。
任務中のことです。
オレは爆風に巻き込まれて、意識を失いました。
起きたとき、オレの目の前は真っ暗でした。
身体も動かなくて、オレは絶望に包まれました。
生きてても仕方ないんじゃないのか?
いっそこのまま死んでしまおうか。
などと考えていたら、です。
「お前、何くだらないこと考えてんだ?」
声が、聞こえました。
オレのよく知ってる、声でした。
「そこで死んで、どうするんだ」
だって…何だかオレ、死にそうですよ?
「どんな状態だろうと、お前は生きてる」
そうですけど…
「お前が死んだらツナが泣くぞ」
………。
「ビアンキだって泣くしシャマルだって傷付くだろう」
………。
「それから…」
…あなたは…
「ん?」
あなたは泣いては下さいませんか?
「泣かない」
即答ですか…
「当たり前だ。オレを何だと思っている」
天下無敵の最強ヒットマンです。
「よく分かってるじゃねぇか」
あと愛人想いな方です。
「お前は愛人じゃない。ただの同僚だ」
そうですけど…
「オレはお前が死んでも別に、泣かないし悔やみもしない。そもそも悲しくもない」
………。
「でも、お前には生きててほしい」
え?
「オレは、な。これはただのオレの希望だ。お前が死を望むのなら死ねばいい。所詮はお前の人生だ」
…はい…
結果として、オレは死ななかった。
10代目が悲しむと言われて、というのももちろんあるが…
リボーンさんがオレに生きてほしい、と言ってくれたことも強かった。
オレはそれからも何も見えず、身体も動かない状態ながら生活を続けた。
持ち直したとはいえ、やっぱり心が挫けそうになるときもあった。
でも、そんなときはオレの心情を見透かしたかのようにリボーンさんが声を掛けてきてくれた。
…そのリボーンさんの声を楽しみにしている自分がいるって言ったら…リボーンさんは不謹慎だと怒るだろうか?
それでもリボーンさんの声が聞こえるたびに鼓動が高鳴るのだから仕方ない。
オレはリボーンさんに救われました。
こんな身体になって、光も見えなくなったオレの新たな光はリボーンさんの声でした。
そんなある日のことでした。
リボーンさんがオレに声を掛けて下さってる時でした。
「お客さんみたいだな」
お客さん?
オレが耳を澄ますと、なるほど。何かの気配がします。
…どうしましょう。オレ、動けないんですけど。
「安心しろ獄寺。ここに一体誰がいると思ってんだ?」
ああ、そうですね。
ここには、あなたがいました。
銃声が聞こえました。
誰かの断末魔が聞こえました。
ドタバタと誰かが走ってくる音が聞こえました。
オレは誰かに身体を揺すられて。
…懐かしい声が、遠くから聞こえてきて。
そしてオレの目に、再び光が戻りました。
オレが目を開けると、シャマルがいた。
身体も、動く。
………あれ?
話を聞くと、オレは二週間程前に任務の途中爆風を受けてここまで担ぎ込まれたらしい。
で、それから今日までずっと意識不明だった、と。
…意識…あったんだけどな。動けなかったけど。
まあ周りには分からないもんか。そしてそんなオレにリボーンさんは延々と語り掛けてくれていたんだな。
リボーンさん…なんていい人なんだ。
オレが感動している横、シャマルは病室に転がってる死体を見ていた。
一体誰が…と呟いていた。
ああ、それ?
それはリボーンさんがやってくれたんだよ。
そういえばリボーンさんはどこに行ったんだろう。
なぁシャマル、オレリボーンさんに会いたい。今までの礼が言いたい。
シャマルは何故か難しい顔をしたけど、了承してくれた。
オレは車椅子に乗せられて、シャマルに連れられて外に出た。
街の外れ。そこでリボーンさんと会って…オレは色々納得した。
「リボーンさん」
オレはリボーンさんに向き合って。微笑んで。
「オレを救ってくれて、ありがとうございました」
そう、リボーンさんの墓に返した。
あれはある晴れた日のことでした。
オレたちはある任務に就いていました。
オレは爆風に巻き込まれて、意識を失って。
リボーンさんは、オレを庇って。即死したそうです。
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そういえばそうでした。忘れてました。