夜。
リボーンは自室のベッドで横になっていた。
眠い。
昼間活発にしていた反動か、夜間はスイッチが切れたかのように寝るのが常だ。
だが…
(寝れねぇ…)
今日に限っては何故か頭が冴えていて、中々寝付けなかった。
しかし身体は重く、思うように動けない。
眠れない頭、眠りたい身体。
それでも長い時間ぼんやりとしていれば、頭も次第に眠りへと落ちていく。
自分が見ているのが夢か、現か分からなくなってきた頃―――
「リボーンさん?」
声が、聞こえたような、気がした。
その声は、たとえ夢であろうと聞き違えるはずがない。
愛しき獄寺の声。
ごくでら、と声を出そうとした。
しかし唇は動かず、呻き声すら出てこない。
獄寺の気配は室内へと入り、自分のすぐ近くへ。
ああ、これは夢だ。
我ながら、なんとも都合のいい夢を見るものだ―――とリボーンは内心で苦笑する。
獄寺が自室を訪ねてくるなど、あるものか。
ましてやこんな夜中に。
「眠ってるんですか?」
そうとも。眠っている。
しかし歯がゆい。夢なら夢で、自分も起き上がりたいものだ。
「帽子。被ったままですよ」
そうだっただろうか。
いつもは脱ぐようにしているが、今日はさて。覚えていない。
帽子を取られる感触。暫くして、別の何かが頭に触れる。
なんだろうか、これは。
温かい、優しい、なにか。
それは心地よく、リボーンの夢はそこで終わった。
朝。
日の出と共にリボーンは目覚めた。
いい夢を見た。獄寺が、あの獄寺が自室を訪ねてきて、そして―――
「…ん?」
気配。
見知った、見慣れた、愛しき気配。
ふと横を見ると、そこには夢の通りに獄寺がいた。
はて。まだ夢の中にいるのだろうか。
夢の続きか。それはなんとも嬉しく、喜ばしいことだ。
しかも今度は自分の自由も効いていると来た。
どこまでしていいだろう。夢とはいえ、やはり節度を持った行動を―――
「…ああ、起きられたんですね、リボーンさん」
リボーンの思考はやや疲れた獄寺の声でかき消された。
そして実感する。
これは夢ではない。現実だ。
「一体いつの間にオレの部屋に忍び込んだんだ?」
「忍び込んだは語弊があるかと思いますが…まあ、数時間前に」
「オレの帽子を直しに?」
「え!? 起きてらしたんですか!?」
「ほぼ寝てた。夢かと思った」
リボーンがそう言えば、獄寺は震え、俯く。
「なんだ、やましいことでもしてたのか?」
「し、してません」
震え声で獄寺。
解析。嘘半分。本当半分。リボーンはニヤリと笑う。
「してくれて構わないんだぞ。なにせお前は、オレの未来の旦那なんだからな」
「…オレには荷が重すぎますって」
リボーンは笑う。そして気付く。
自分の手と獄寺の手が、繋がっていることに。
なるほど、獄寺が朝まで―――自分が起きるまでここにいた理由はこれか。
獄寺は床に尻を付き、ベッドに背を掛け顔は後ろ。表情は伺い知れない。
「おっとすまんな」
「いえ…」
言って手を離せば、ようやく獄寺はこちらに振り向く。
やや疲れた顔。ずっと同じ体勢でいたのだろう。
「起こしてくれてよかったんだぞ」
「それは流石に…」
獄寺が気まずそうに顔を背ける。
ふむふむ。なるほど。どうやらやましさはこの辺りに起因する模様。
まあ、いい。リボーンは微笑む。そして。
「おはよう、獄寺」
「…おはようございます、リボーンさん」
一日の始まりを、一番愛しい人に告げるのだった。
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獄寺くんがリボーンさんが寝ている間にしたこと。
頭なでなで。
ほっぺふにふに。
おててギュー。
おてて握ったら握り返されて逃げれなくなった獄寺くんでした。