一体、いつからだったのだろう。
…最初からか。
そうとしか、考えられない。
胸の奥にどうしようもないほどの強い感情が芽生える。
この感情の名前は…「悔しい」だろうか。
今まで気付けなかったのが悔しい。
答えを示されないと分からなかったことが悔しい。
今までの全てが嘘だった。と認めざるをえないのが―――悔しい。
現実というのは、残酷だ。
救いなんて用意してはくれない。
そんなの分かっている。
最初から知っている。
だけど。
「なんで…あなたが」
認めたくなんてなかった。
オレが誰よりも尊敬するあなたが。
オレが誰よりも敬愛するあなたが。
オレが誰よりも愛するあなたが。
裏切るだなんて。
10代目を、殺しただなんて。
いつから。どこから。なんて問うたとしよう。
答えなんて決まってる。「最初からだ」だ。
ええ、そうでしょうとも。
あなたが途中で誰かに付くだなんて考えられない。信じられない。
だからきっと最初からだだ。それ以外の答えなんてオレは認めない。
裏切られておいて、リボーンさんの性格についてはまだ信じていたりして、思わず失笑が漏れる。
ああ、誰か、誰か嘘だと言ってはくれないだろうか。
リボーンさんは裏切り者じゃなくて、10代目も死んでなくて。
ただ、オレだけが騙されているなら、それはどれほど素晴らしい世界だろうか。
だけれどオレは知っている。
世界はそんなに、優しくはない。
むしろ厳しく、砂糖菓子のように甘い展開は…それこそ絵本の中にしかないということを。
だから目の前で血を流して倒れている10代目はきっともう死んでいるし、
仕事で見掛けるとき以上に冷たい目をしているリボーンさんも、その手に持ってる拳銃から煙が出ていることも…全ては現実なんだ。
それと、オレがリボーンさんに撃たれたことも。
血が流れる。
リボーンさんは踵を返して去ろうとしている。その足取りはゆっくりと。何も障害なんてないかのように。
「ま…」
声と共に、血が口から出て、声が出なくなる。
待ってください。
その一言すら、オレはあの人に言えなかった。
なんて悔しい。
その感情を胸の奥に感じたのが、最後だった。
オレは意識を失った。
てっきりこのままオレも死んで、物語が終わるのかと思っていたがそうもいかないらしくオレは生きていた。
…けど、10代目は死んでいた。
…オレの命なんかより、10代目が助かればよかったのに。
と思えば、10代目の声が聞こえてくるようだ。
こら、獄寺くん。
なんかなんて言ったら、ダメでしょ。
………。
そんな優しい声を掛けてくれる10代目は、もういない。
リボーンさんに殺されて。
リボーンさんもアジトから消えていた。10代目の主務室から出て行ったリボーンさんの姿を見た者は誰一人としていないらしい。
というか、こう言ってはなんだがリボーンさんに気に掛けてる暇がなくなった、というか。
敵対ファミリーが抗争を仕掛けてきた。
大勢の仲間が立ち向かい、そしてその多くが帰らぬ者となった。
オレも怪我などで臥している場合ではないと武器を取り戦場に発った。
そこにリボーンさんがいるとも知らず。
そこでオレがリボーンさんを殺すことになるとも知らず。
そのあとで、真相を知る羽目になるとも知らず。
あなたは戦場に立っていました。
オレは思わずあなたを撃ちました。
あなたほどの腕なら、オレ程度の攻撃なんて避けるのは容易い。
そう、思っていた。
信じていた。
だから避けられるって思って。
そのあと、きっと反撃で殺されるだろうとすら思っていたのに。
あなたは人形のように無抵抗で。
あっさりと、胸元から赤い花を散らしました。
オレは目の前が信じられなくて。
自分で撃ったくせに、思わずあなたに駆け寄りました。
そしてそのあと、敵対ファミリーの白いボスの言葉が聞こえました。
アルコバレーノを操る実験に、成功したと。
オレは身体の震えが止まりませんでした。
この後、オレは10年前のあの二人と会うことになるのだけれど、オレには謝ることしか出来なかった。
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どうか 悲劇を 食い止めて。
リクエスト「リボ獄裏切りモノ」
リクエストありがとうございました。