血が、滴って、滴って。
もう、誰の血か分からないほど滴って。
壁に背を当てて、そのままずるずると座り込む。
任務は終わった。後は来てくれるはずの迎えを待つだけだ。
(それまでにオレの意識が途絶えなきゃいいんだけどな)
気が付いたらベッドの上、なんて願い下げだ。
(とはいえ…)
はぁ、と息を吐き出す。
呼吸が浅い。
意識が薄い。
集中する事がまるで出来ず。
無理にしようとしたら嘔吐感が込み上げてくる始末。
(長くは持たないか…)
早く来い、と念を飛ばす。
来たら雑務を全部押し付けてやるから、という念も飛ばす。
(早く来い、早く来い……)
と、念じていたら。
カツコツという靴音。
迎えか、はたまた残党か。
警戒しながら、そっと懐に手を伸ばす。
…が、その手の力は一瞬で抜けてしまった。
現れたその人物が、あまりにも意外すぎて。
「よぉ。酷い有様だな」
「り…リボーンさん……?」
なんでわざわざ、こんなところまで。
「お前が念じたから」
ばれてましたか!?
「で、ではなくてなんでオレの迎えがリボーンさんなんですか!?」
「オレが志願したから」
マジですか!?
「あと人で不足でな。お前の迎えはオレ一人だ。心細いだろうが我慢してくれ」
「心細いなんて、そんな…」
むしろ充分心強いです、と言いますか向かうところ敵なし、と申しますか…
「もちろんお前の怪我の手当てをするのもオレだ」
なんですと!?
「酷い血の量だな。どこまでがお前の血だ?」
「額と脇腹と…ではなくてそんな、畏れ多いです!!」
「放っといたらお前死ぬだろうが。諦めろ」
「うう…」
「ほら、手を貸せ」
「はい…ってリボーンさん!?」
「なんだ?」
「この体勢はなんですか!?」
「俗に言うお姫様抱っこ、という奴だな」
「何故にそのような抱き方を!?」
「オレが持ちやすい」
「オレは恥ずかしいです!!」
「大丈夫だ、誰も見てない」
「そういう意味じゃありません!!」
「あまり喚くな。傷に障る」
「………」
「睨んでも駄目だ」
「…はぁ」
「諦めたか」
「ええ…でも、」
「?」
「スーツ…汚れちゃいましたね」
「構わん」
「オレが構います…」
「お前が生きてたことで、チャラだ」
「ですが…」
「もう黙ってろ。お前の傷はお前が思っている以上に深い」
「………はい」
力が抜ける。血が流れる。確かにオレの傷は深いようだ。
眠くなる。意識が遠のく。
「寝るなよ」
「…分かって…ます……」
黙って、眠らぬよう意識を集中させる。するとリボーンさんの体温が仄かに感じられて、なんだか気恥ずかしくなる。
「…リボーンさん」
「なんだ」
「…来てくださってありがとうございます。…とても嬉しいです」
「そうか」
「はい」
それだけ言うとオレは目を閉じ、リボーンさんのぬくもりを享受することにした。
…少々顔が熱い気がするのは、無視することにした。
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だけどあなたには、きっとばれてる。