昔、オレの部下の葬儀で、あなたはオレに泣くなと言いましたね。
泣いてなんか、いませんよ。
- 涙は見せない -
人の死はたくさん見てきました。
親しい者の死も、友の死も、腐れ縁の死も。
そして、見てきた分だけ、殺しました。
殺し、殺されるこの世界。
そんな世界で、誰が泣いたりするものですか。
こんな世界で、誰が悲しむものですか。
泣いてる暇があるのなら、仇を討ちに行くべきです。
そうですよ?
そうですとも。
あなただってそう思うでしょう?
日本出身のあいつらは、あの方は、まあ、まだしも。
オレとあなたは、違うでしょう?
考えることは、同じでしょう?
無理なんかしてませんよ。
してませんとも。
しているわけがありません。
今、立ち止まっているのは、あれです。
ちょっと、休んでいるだけで。
そのついでに、ちょっと墓参りをしているだけで。
本当ですよ?
本当ですとも。
信じてませんか?
…本当なのに。
ああ、こうしてここに立っていると、あなたの声が聞こえるようです。
「泣くな」って。そんな声が。
泣いてませんよ?
泣いてません。
あなたが死んだ程度で、誰が泣いたりするものですか。
これは、この雫は、そう。
―――――雨ですよ。
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だからオレは泣いてない。
あなたなんかに、涙は見せない。