「クリスマスパーティーをするぞ」


と、ツナに顔を見合わせるなり開口したのはリボーンである。言われたツナはというと、


「はい?」


とぽかんと口を開けるだけだった。リボーンのいきなりは今に始まったことではないが、未だ着いていけない。


「クリスマスパーティーだ」


念を押すようにもう一度同じことを言うリボーン。大事なことなのか、その顔は真剣だ。


「ママンにはもう頼んでおいた。あとはお前が人を呼ぶだけだ」


「準備のいいこって…って、そこまでしたならリボーンが呼べばいいじゃん」


「呼んだ本人がいないんじゃ格好が付かねぇだろ」


「いない?」


「オレはその日、仕事だ」


「あ、そう」


てっきり主役とばかりにその場を仕切ると思っていたツナは意外そうに言葉を発した。そうか。いないのかリボーン。


「そんなわけで、お前らで楽しめ」


「ん。分かったよリボーン」


言いながらツナは誰を呼ぶか考えていた。





「ツナくんのおうちでクリスマスパーティー?」


一人目に相談した笹川京子は笑顔でそう言ってくれた。


「行っていいの!? ありがとう!! 楽しみだね!!」


「うん…そんな対したおもてなしは出来ないけど」


「そんなことないよ! ツナくんのお母さんの手料理とても美味しいし! あ、ハルちゃんとクロームちゃんも呼んでいい!?」


京子が笑顔でそう言う。無論ツナに断る理由はどこにもない。


もちろんと言うと京子は更にはしゃぎ、早くクリスマスにならないかな、と子供のように言った。


それから退屈な授業が始まり、そしてあっという間に終わる。時は既に下校時間。共に帰る相手は既に決まってる。無論彼もパーティーに招待するつもりだ。


「ねえ獄寺くん」


「なんでしょう10代目」


「今度うちでクリスマスパーティーをすることになったんだけど…来てくれる?」


「もちろんです。オレなんかでよければ参加させて頂きます」


「ありがとう獄寺くん」


思わずツナの声が弾む。


なんていったって彼はツナにとってこの手のイベントに来て欲しい人ナンバーワンなのだ。一緒に思い出を作りたいのだ。


「一応ね、クリスマスらしくプレゼント交換もする予定なんだ。だから獄寺くんも悪いけどプレゼントを用意してほしいんだ。今のところ参加者は…」


言いながら、ツナは自分の顔が綻んでいくのが分かった。


クリスマスは獄寺と過ごせる。


それだけでツナは幸せだった。





そしてクリスマス当日。


パーティーに呼ばれたのは笹川京子、三浦ハル、クローム、そして獄寺隼人だ。


「あの、10代目」


「ん?」


「リボーンさんは…」


「ああ、リボーンは今日は仕事だって」


「あ…そう……ですか」


ツナの言葉に残念そうに俯く獄寺。


ああ、オレでよければ抱きしめてあげたい!! とツナは切に思った。


「どうしたの獄寺くん」


俯く獄寺を心配してか、京子が声を掛ける。


「いや…なんでもない」


俯いたまま獄寺は答えた。


かくして、クリスマスパーティーが始まった。


飾り付けられたツリー。美味しい料理。そして甘いケーキ。


どれも美味しく、あたたかく。楽しい時間はゆったりと、そして早く過ぎ去ってゆく。


そうして最後の締め、プレゼント交換の時間となった。


「私からはこれ!!」


京子が獄寺に渡したのは小さな小箱。可愛らしくラッピングされている。


「開けてみて!」


言われた通りに開けてみると、現れたのはシルバーアクセサリー。


「獄寺くんこういうの好きみたいだから…どうかな?」


「…いい趣味してるな。気に入ったぜ」


言いながら獄寺は早速身に付ける。他のアクセサリーにも合っていて、よく似合っていた。


「次はハルです!!」


と、挙手して立ち上がったのはハルである。


「ハルはこれです!!」


と、ハルが取り出したのは…


「…煙草?」


「と見せかけて煙草チョコです」


「チョコかよ!!」


「おいしいですよ!!」


「そりゃ美味かろうが…はぁ、ま、ありがとな」


「はひ! 喜んでもらえて何よりです!!」


腕を組み、うんうんと頷くハル。その後ろではクロームがやや表情に影を落としていた。


「…どうした? クローム」


「プレゼント…ハルと被った……」


「へ?」


クロームがおずおずとプレゼントの包みを差し出す。


プレゼントは…麦チョコだった。


「同じチョコレート…」


「あー…まぁその、気にすんな。煙草チョコと麦チョコはまったくの別物だ」


「そう…?」


「ああ。ありがとな」


「………うん」


獄寺がそう言って受け取ると、クロームは嬉しそうに微笑んだ。


「次、オレね。オレは…これ」


「これは…マフラー、ですか?」


「うん。獄寺くん寒いの苦手そうだから…どうかな」


「ありがとうございます!! 一生使い続けますね!!」


「いや、冬だけでいいんだけどね!?」


ツナは大慌てで叫んだ。


獄寺は大層喜んでくれた。


「じゃあ、最後はオレですね」


「獄寺くんのプレゼント…なんだろ」


「オレと言えばやっぱりダイナマイトですよ」


言いながら獄寺が筒のように細い物体を取り出す。


「獄寺くんまさかそれ本物のダイナマイト!?」


「いえ、これはダイナマイトの…」


「…ぬいぐるみ?」


獄寺の言葉の続きを京子が紡ぐ。


「…女はこういうのが好きかと思いまして……」


「いや、流石にダイナマイトじゃ…」


「可愛いーーー!!」


「とってもキュートですー!!」


「大事に…する……」


「あれ!? 大人気!?」


ツナの予想に反して、女子からの反響はかなり好意的なものだった。


「あ! 10代目のは本物のダイナマイトです! ここぞというときに使ってください!!」


「いや、オレもぬいぐるみがいいよ!!」


ツナは盛大に突っ込んだ。





そうしてパーティーは終わり、帰る時間である。


外はすっかり暗く、星が出ていた。吐く息は白い。獄寺は貰ったばかりのマフラーを早速使う。


獄寺はパーティーの余韻に浸り、口元に笑みをこぼす。


楽しかった。


こんなに楽しいナターレは初めてだった。


城でのナターレは堅苦しいだけだった。


スラム街でのナターレはどう寒さを凌ぐか。食べ物はどうするかと考えるだけだった。


だけど今日は違う。


友人たちと過ごす、楽しいナターレ。


こんなにいいものだとは知らなかった。


…これであの人がいれば完璧だったのだが……


と、獄寺が思っていると…


「パーティーは楽しかったか?」


「え!?」


塀の上に、今まさに思っていた人がいた。


「リボーンさん!?」


「よう」


「一体いつ戻られたんですか!?」


「たった今だ」


「お疲れさまです」


ぺこりと頭を下げる獄寺の頭にコン、と何かがぶつかる。


? と獄寺が見てみるとそこにはジッポライターがあった。


「リボーンさん…これは……」


「オレからのクリスマスプレゼントだ」


「え―――」


「要らんか?」


「いえ…いえ! ありがとうございます!!」


「それはよかった」


感激して受け取る獄寺に、リボーンも笑みを返す。


「あ…でもオレ、お返し出来るものが…」


あるとすればツナから返却されたダイナマイトだろうか。よし、お返しにダイナマイトを差し上げよう…と思っていたら。


「ああ、ならオレはこれをもらう」


と言って、リボーンは獄寺の肩に乗りそのまま頬に口付けをした。





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ん? 固まっちまった。


リクエスト「ほのぼので獄寺が愛されてるリボ獄」
リクエストありがとうございました。