獄寺がその知らせを聞いたとき、聞き間違いかと思った。
イメージが繋がらない。そんなこと起きるはずがないと脳が否定する。
だって、そんな、それは、ありえない。
リボーンが倒れただなんて。
しかしそれはどうやら事実のようで。
慌てて教えてもらった病室まで行けば、そこには確かにリボーンが横たわっていた。
聞いた話、通路に倒れていたという。
外傷はなく、争った形跡もない。顔は苦痛に歪んでいるわけでもなく、まるで眠っているようだったという。
不審な点もあるが、怪我はないみたいで獄寺はほっと一安心した。
安心ついでに思わず笑み、リボーンを見る。
と、
「―――ん?」
リボーンが目を覚ました。跳ねるように飛び起き、辺りを見渡す。
そしてその目が獄寺を捉えた。獄寺はやや怯みつつ、
「お…おはようございます」
「ん…? ここはどこだ?」
「病室です」
「病室? なんでそんなところにオレがいるんだ?」
「なんでも倒れられたそうで。…覚えてませんか?」
「まったく記憶にない」
不思議そうに首を傾げるリボーン。
獄寺も見舞いに来ただけで状況を説明出来るほど事態を把握しているわけではない。
獄寺は急いでシャマルを呼んだ。
リボーンはあっさりと退院した。
傷もなく体調も良好で、何の異常も見つからなかったからだ。
…だが、倒れた原因は不明のまま終わった。リボーン本人も倒れたことを覚えてないし心当たりもないという。
といっても、リボーンは不気味がることもなく「不思議だな」の一言で片付けていたが。
リボーンはすぐ仕事に復帰した。最初の数日はリボーンを心配して休みを促す声もあったが、リボーンは苦笑して心配ないと言うだけだった。
暫くは何事もなく日々が過ぎ去った。そう、暫くは。
それはリボーンが倒れたから数ヵ月後。
それは誰もがリボーンが倒れたことなど忘れていた頃。
それは獄寺が任務により負傷した足を治療していた時だった。
獄寺がシャマルに包帯を巻いてもらっていると、リボーンが担架に寝かされ運ばれてきた。
「り、リボーンさん!?」
リボーンが視界に入り、思わず声を上げ立ち上がる獄寺。治療中の足の傷口が開き血が染み出る。
痛みのあまりに足の力が抜けその場にへたり込む。避けた皮膚が痛みを発していた。
「馬鹿。何やってんだお前は」
「お…れのことはいいから! リボーンさんを診に行け!!」
獄寺がそう怒鳴ると、シャマルは頭を掻いて獄寺の治療を近くにいた医療スタッフに指示し、リボーンの消えた部屋へと向かった。
獄寺は治療を済ませるとリボーンの容態を聞きに行った。
以前と同じく、外傷なし。争った形跡もなし。
通路に倒れていて、身を揺すっても起きなかったという。
面会を許された獄寺はリボーンの眠る病室に入る。
リボーンはあの日と同じように、ベッドの上で横になって眠っていた。
傷を負ってないと聞いても、ただ寝息を立てているように見えても、もう獄寺は安心出来ない。
そしてその日、リボーンは結局目を覚まさなかった。
リボーンが目を覚ましたのは、日付が変わって少ししてから。
起きたリボーンは自分の身に何が起きたのか分からず、首を傾げて。
そして、そのまま自室に戻って寝た。
当然、翌朝大騒ぎになった。
周りは何を考えているんだと怒鳴ったが怒られたリボーンといえば何を大袈裟なと言うだけだった。
二度目ということでリボーンは以前よりも詳しい検査を受ける羽目になった。リボーンは嫌がったが周りがそれをよしとしなかった。
時間を掛けて、リボーンの不機嫌を買ってまで行った精密検査だったが…結果は変わらず問題なし。異常なし。健康体。
ほれ見たことかと憤るリボーン。しかし二度倒れたことは事実。
運良く二度ともアジト内だったからよかったものの、これが任務中…敵地の真ん中や要人の暗殺の最中で倒れたらどうするのだという話になり、リボーンには強制的に休暇が与えられた。
更には、出歩くとき…特に外出するときは誰かと共に行動するようにと告げられた。
面倒だと嫌がるリボーン。そこまでする必要はないだろうと反論する。
そもそも誰がそんな面倒なことをするんだとリボーンは挑発気味に言う。そんな暇のある奴がどこにいる? オレの相手など誰がする?
威圧的に一歩踏み出して周りを見渡すリボーン。思わず誰もが怯み、口を噤む中―――
「じゃあ、オレが」
手を挙げ、志願する誰かが一人。
「お前も物好きだな」
「そうですか?」
リボーンがアジトを歩く。その隣を松葉杖を床に突きながら歩くのは獄寺隼人。
「怪我人は大人しく寝とけ」
「病人も安静にしておいた方がいいのでは?」
「誰が病人だ。検査の結果はお前も聞いただろ」
「聞きはしましたけど…」
問題がないはずなのに問題が起きているのなら、そっちの方がよっぽど問題だろう。だからこそ周りもこうして過保護と思われるほどリボーンを心配する。
「オレは大丈夫だっつってんのに」
「あはは…」
…もう一つ、周りがリボーンを心配する理由を上げるならば、このリボーンの楽観だろう。
最強であるが故の驕りだろうか、リボーンは自身に関する危機感が薄い。自分よりも周りを気に掛ける。
確かにリボーンは強く、よくフォローしてもらいよく助けられた。
けれどそれも昔の話、呪われていた頃の話だ。
呪いは10年前に解け、その残滓もいい加減なくなっただろう。つまり、リボーンは今尋常じゃない知識と経験を持ってるだけのただの少年なのだ。
体力もスタミナも年相応。疲れもするし病気だって掛かるだろう。
そこのところを、本人は自覚してないようだが。
ともあれ、そうしてみんなを守ってきたリボーンだ。
その恩をここで少しでも返せるのなら、気合を入れて返そう。
獄寺は静かに気を張った。
「急に休みって言われてもな。一体何をすればいいのやら」
「リボーンさん、よくサボってるじゃないですか」
「サボるのは仕事中だからいいんだよ」
なんとなく学生時代を思い出し、獄寺は「分かる気がします」と返した。
気合を入れる獄寺と、気楽に構えるリボーン。
どちらが正しいのかはともかく、リボーンは倒れることなくいつも通りで。
むしろ慣れぬ松葉杖に獄寺が助けられることも多く、獄寺は軽く自己嫌悪に陥ったり。リボーンに笑われたり。
己の存在意義に疑問を持ち落ち込む獄寺に、リボーンは暇だから話し相手になれと言ったり、来るなら来いと外出に付き合わせたり。
リボーンの付き添いのはずが、何故か付き添われているような図になってしまった。
結局、獄寺が松葉杖を必要としなくなってもリボーンが倒れる日はなかった。
「だから言ったろ。お前らは心配しすぎなんだ」
「いえ、まだ安心出来ません。リボーンさんが二度目に倒れたのは数ヶ月経ってからだったじゃないですか。これからですよ」
「これからねえ…でもお前の傷そろそろ治るだろ。そうなってもオレの付き添いをするつもりか? 仕事は?」
「それは…」
言葉に詰まる獄寺。リボーンの付き添いはしたいが、仕事もしなければならない。
何かいい案はないかと考えこむ獄寺。苦笑するリボーン。
「なんだ、そんなにサボりたいのか?」
「ち、違います! 何言ってるんですか!!」
「ん? 違うのか。じゃあまたどっか連れてってほしいのか。オレの奢りだからって調子に乗りやがって」
「それも違います! そもそも、リボーンさんがオレに払わせてくれないだけじゃないですか!!」
「ん? そうだったか?」
格下の代金ぐらいオレが支払うとリボーンは獄寺に財布を出させない。自分を心配し、時間を割いてくれてる礼とは言わない。
と、リボーンは懐から銃を取り出した。隣では獄寺もナイフを取り出している。
感じる気配に、現れる殺気に、当てられる視線に向けて銃弾を放とうとして―――
「―――リボーンさん!!」
獄寺の声に、前を見れば…何故か地面が目の前にあって。
「………っ」
体勢を立て直そうとするも、身体が思うように動かない。
動くのは…銃を持つ腕だけか。
リボーンは迷わず己の左腕を撃った。
痛みが花咲き薄く感覚が戻る。倒れそうになる身を一歩踏み出した足で支える。前を向き、敵を討った。
「リボーンさん!!」
リボーンに駆け寄る獄寺。リボーンは崩れるように膝を突く。
支えるようにリボーンを抱く。左腕から流れる血が獄寺にも付着する。
リボーンが獄寺を見上げる。その顔はいつも通りで、怪我を負った苦痛にも突如我が身に襲い掛かってきた異変にも怯んでいなかった。
それどころか世間話をするような口調で、
「困ったことになったな」
なんて、全然困ってない様子で軽く言って。
そしてそのままリボーンは気を失った。
獄寺は急いでボンゴレに連絡をした。
腕の負傷もあり、リボーンはボンゴレの息の掛かった近くの病院まで搬送された。
リボーンが起きたのは、それから三日後のことだった。
起きたリボーンは流石に自分が倒れたことを覚えていた。
といっても、楽観は変わらずだったが。
ベッドの上で「困った困った」と言って、それで終わった。
病室で大人しくするようになったし、検査も文句を言わずに受ける。
それでも、結局何が原因で倒れているのかは分からないままだった。
そもそも、今日までにも定期的に検査は行われていた。それでも何も分からなかった。
「こりゃあ駄目かもな」なんてリボーンは軽く言う。まるでジョークのように。
しかし獄寺から見たリボーンの様子は…
まるでどこか、達観しているような。
そしてそれを裏付けるかのように、
リボーンが自覚したからか、
リボーンが負傷したからか、
それとも最初からこうなることは決まっていたのか、
だんだんと眠るまでの間隔が短く。
だんだんと起きるまでの時間が―――長くなっていった。
突然、糸が切れたかのように倒れ、眠る。
そしてある時、まるで朝が来たかのようにいきなり起き上がる。
…獄寺は、リボーンが眠りにつく度ある不安に駆られて仕方がない。
もう、起きなかったらどうしようと。
そんなことないと、絶対起きると自分に言い聞かせて、でも不安で、だからリボーンが起きると安心して。
…そして、次にリボーンが眠る日に恐怖して。
獄寺は日に日に憔悴していった。リボーンは起きるたびにやつれていく獄寺を見て心配していた。
「お前、少し休んだらどうだ?」
「リボーンさん…いえ、オレは……」
「オレを心配してくれるのは嬉しいんだけどな、それでお前が倒れたらどうする」
「いえ…リボーンさんに何かあったら後悔してもしきれませんので…」
「お前な…身体を休めるのも仕事の内だと教えただろうが。もう忘れたのか?」
「…確かに教わりました。ですが……」
弱々しい笑みを作り、けれど頑なに首を横に振る獄寺。
「休めません」
「…獄寺」
「すみません。オレも…何度か休もうとしたんです。でも…無理でした。休もうとしても、不安で…かえって疲れるんです」
「…オレも落ちぶれたものだな」
「い、いえ、そういう意味では…」
「いや、いい。分かってる。いつぶっ倒れるか分からないこんな身体じゃな。襲われでもしたら一撃だ」
「………」
「でも、ま、そんなオレを守ろうとしてくれる奴は幸いにも他にもいる。だからお前は安心して寝ろ」
と言っても「では休みます」と言う獄寺ではない。他の人間が信頼出来ないのではない。そういう問題ではないのだ。
なのでリボーンは言葉を言い終えると同時獄寺に足払いを掛ける。転ぶ獄寺の首に手刀を一つ。
ベッドの上に力なく倒れる獄寺。リボーンは人を呼んで獄寺を休憩室へと運ばせた。
一人になり、リボーンは考える。
これからのこと、今後のこと。
突如途切れる記憶。起きれば過ぎ去っている時間。身に起きている原因は不明―――
周りは気を遣い、自分を守り、解決策を調べている。
だが、リボーンの勘が告げるは…
………。
リボーンはため息を吐く。
次に意識が途切れる日は、きっとそう遠くない。
獄寺が目を開けると、そこは休憩室で。
纏まらない思考と、霞掛かった視界の中暫し動けず、何も出来ない。
身体が重い。肉体が休息を求めている。この程度の睡眠では足りないと言っている。
その声に納得し、頷き…また目蓋を下ろそうとする。眠りにつこうとする。
ああ、でも、どうして自分はこんなところで寝ているんだっけ。
自分は、確か……
思って、思い出して、獄寺は勢いよく起き上がった。
「リボーンさん…!!」
獄寺は急いでリボーンの病室へと向かった。
リボーンが大きな音を立てて扉を開け入ってきた獄寺を見る。少し意外そうな顔をした。
「思ったより早く起きたな」
そう言うリボーンの言葉を、獄寺は聞いていなかった。
ただ無事なリボーンの姿を確認して…安心し、へたり込む。
「まだ疲れてるだろ。休め」
「い、いえ…大丈夫です。十分休みました…」
そう言う獄寺の顔色は悪い。起き上がるのにも一苦労している。
「そんな状態で、今この場を襲われたらどうするつもりだ? オレにお前を守らせるつもりか?」
「いえ…ご安心を……リボーンさんは、オレが命に代えても守りますから…」
また眠らせてやろうかこの馬鹿。とリボーンは思った。
思ったが、留まる。代わりに、
「獄寺」
その名を呼ぶ。
呼ばれた獄寺はリボーンの顔を見て、立ち上がり、近付く。
「何でしょう」
リボーンは己の腰掛けるベッドの隣を指差し、
「座れ」
「え?」
「座れ」
投げられた疑問符に、同じ言葉を返す。
獄寺はおずおずとしながらも、
「し、失礼します…」
と言って、リボーンの隣に座った。
(痩せたな…)
ちらりと獄寺を一瞥して、リボーンはそんな感想を抱く。
そうさせたのは自分だ。自分が不甲斐ないから周りに、獄寺に負担がいっている。
「…獄寺」
「は、はいっ!?」
小さく呼び掛ければ、少し緊張した獄寺の声が響く。
「あーっと…」
獄寺の方を向き、しかし気まずげに頭を掻く。
獄寺といえば何を言われるのだろうと緊張した面持ちでビクビクしている。
リボーンはただ、世話をしてくれた…心配してくれた礼を言いたいだけなのだが。
言おうと決めて、獄寺を隣まで呼んだまできたのに…そこから先へ進めない。
照れくさい、と言えば何を今更と呆れられるだろうか。しかしそれが本音だ。
とはいえ、先延ばしにも出来ない。時間がない。今言うか、二度と言わないかだ。
小さく息を吐き、意を決し、獄寺の目を見ようとして―――
次の瞬間、リボーンは確かに獄寺の目を見たが、
何故か自分はベッドに横たわっていて、
何故か獄寺はベッド隣の椅子に…やけに疲れた表情で座っていた。
一瞬前と違う状況。これはもう慣れた現象だ。
折角決意したのに、嫌なタイミングで寝ちまったものだと思いつつリボーンは身を起こし、獄寺に問う。
「オレはまた寝てたのか。今度はどれくらい寝てた?」
「……っ」
獄寺は言葉に詰まった。
リボーンは黙って獄寺を見ている。質問の答えを待っている。
獄寺は疲れた表情を緊張させる。青褪めさせる。
その様子を見ながらリボーンは自分が眠っていた時間を計る。獄寺の憔悴具合からして一ヶ月とは言わないまでも…
「さ……」
獄寺が小さく呟く。顔を俯かせ、目が前髪で隠れる。
「三週間…です……」
「……そうか」
とうとう眠るまでの時間よりも眠る時間の方が長くなった。寝たきりになるのも時間の問題か。
なら、起きていられる内に姿を消すか。
どこに隠れたところでもう目覚めることはなく死体となるのだろうが、仕方ない。
この症状を自覚したときから決めていた。原因が分からぬまま、眠る時間が起きてる時間を超えたら終わりにしようと。
いずれ眠り死ぬだろうと覚悟をしつつも周りが伸ばしてくれた手を掴んでいたが…このときが来た。もう潮時だ。
そうなる前に獄寺にせめて礼の一つも言いたかったが…言う前に眠ってしまい、今言ったなら何かを察して引き止めにあう気がする。
(こいつは変な所で勘が鋭いからな…)
隙を見て抜け出す計画を立てるリボーン。と、ふと肌に感じる気配。とりあえず懐を探る。…何もなし。ベッド隣の机の引き出しを開けてみる。愛用の銃を発見。
「…リボーンさん…?」
疲れている獄寺はこの気配に気付いてないようだ。それとも周りの目を盗んでいるぐらいだから向こうがそれほど手練なだけか。
まあ、自分の最後の舞台なのだから多少は腕が立ってほしいものだが。
「お前は寝ていろ、獄寺」
そう言ってもなお意識を途切れさせまいとしている獄寺の頭をベッドに寄せ、目蓋を閉じさせる。
身じろぎし、僅かな抵抗を見せる獄寺。しかしすぐに力が抜け、気を失うように眠った。
気配はもうすぐそこまで。さて、上手くやらねば。
この時間に来るということは見回りは暫く来ないだろうと判断したんだろうが、騒ぎが起これば当然周りは気付く。
そうなれば周りは今より更に"厳重"で"安全"な施設に移動され…これ以上は考えたくない。
それを避けるための一番手っ取り早い方法。
ここで死ぬ。奴に殺される。無論奴も殺すが自分も死ぬ。
獄寺は同室にいながら気を失ってしまった己を責めそうだがその辺りは周りに任せる。そもそも休まないお前が悪いとリボーンは思う。ツナの時はちゃんと休めよ、とも。
相手は一撃で仕留めに来るだろう。仕留められなかったら逃走に切り替え。こちらも一撃で相手を仕留めなければならない。
もし自爆覚悟で来るならその限りではないだろうがそうだとするとこちらが困る。なにせ獄寺に被害がいかないようにせねばならない。自爆する前に殺せばいいがそうなったらどうやって自分を殺す。
むしろ相手をわざと自爆させて自分は窓から逃げるか。獄寺を連れて。自分の身体をクッションに獄寺を助け…無理だな却下。
まあ恐らく自爆はあるまい。それをするならこの施設のあちこちで自爆して警備が薄れさせた方が成功率は上がる。獄寺なんて「様子を見てきます! リボーンさんはここに!」と言って出ていきそうだ。目に浮かぶ。
リボーンは静かに銃を構える。敵の気配はひとまず一つ。
相手が攻撃すると同時にこちらも一撃。それで死に相手も殺す。
攻撃を避けないでいいだけ多少は楽か。いや、身体は勝手に攻撃を避けようとするだろうからむしろ難しいか。
頭では死ぬつもりで、今死なずともいずれ死ぬ身体でそれでも生を願う身体には申し訳ないが付き合ってもらう。悪いな身体。
微かな気配が室内に入る。一瞬だけ殺気が膨れる。殺気の塊はそのままリボーンへ。
リボーンは引き金を引き銃弾を侵入者へ。身体に強い衝撃。向こうからも血飛沫。
撃たれた箇所が熱い。怪我なんて久々にした。致命傷は初めてだ。
相手が崩れ落ちるのを確認。向こうは即死か。こっちは急所が外れていたのかまだ生きてる。さて追い討ちは来るだろうか。来るなら死ぬ前に殺すが。
思い、辺りを伺えば銃声を聞きつけたか騒がしい足音が慣れた気配と共にこちらへとやって来る。
増援が来るなら追い討ちはこないだろう。獄寺は死なない。自分は死ぬ。計画通り。ミッションコンプリート。
リボーンは身体を背から後ろへ倒しベッドに横たわる。白いシーツが赤く染まっていく。
隣には未だ眠る獄寺。まさか最後の時に隣にいる奴が獄寺だとは思わなかった。
リボーンは目を瞑り、死ぬ努力をする。ここで蘇生されては目も当てられない。
力を抜き、意識を飛ばし、身体に言う事を聞かせる。
眠くなる頭。失われていく力。心臓に止まれと命令。
荒々しい足音と言葉と気配が室内に入り込むと同時、それから逃げるようにリボーンは眠りについた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おやすみ。獄寺。