- 入院風景 -
「リボーンさん」
「なんだ」
「お腹空いてないですか?」
「そうだな。腹減った」
「でしたら林檎でも剥きましょうか」
「お前に出来るのか?」
「何言ってるんですか! オレ刃物の扱い得意なんですよ!! ナイフを使っての拷問だってしたことあります!!」
「…人の皮を剥くのと林檎の皮を剥くのは違うと思うんだが」
「愛を込めればきっと大丈夫です!!」
「発言がビアンキに似てきたぞお前」
「………」
「そんな嫌そうな顔をするな。ほら、林檎を剥け」
「…はい。そういえばリボーンさん、風邪の方はもう治りましたか?」
「オレとしては治ってるんだけどな。シャマルが駄目だと。お前こそどうなんだ?」
「オレも自分的にはもう退院してもいいと思うんですけど…まだ駄目だそうです」
「そうか」
「ええ。まぁリボーンさんの隣にいれるのでオレとしては大歓迎なんですけどね」
「お前も言うようになったな。昔はあんなに受身だったのに」
「…あの頃は嫌われてると思ってましたから」
「相手にしなかっただけで拗ねんな」
「拗ねてません! ただ少し寂しかっただけで…」
「そういうところが可愛いなお前は」
「もう、からかわないで下さいよー」
「ハイそこラブい空気禁止ー」
「! 10代目!? 痛っ!?」
「ツナが突然どこからともなく沸いて出てきたからって指を切るな獄寺。…ほら、」
「あ…リボーン、さん…」
「だからラブい空気禁止だっつってんだろ。リボーン、獄寺くんを指ちゅぱすんな。獄寺くんは頬を赤らめないっ」
「まったく、お前は本当にドジだな」
「その、すいません…ありがとうございます、リボーンさん」
「聞けよ人の話を」
「つか、何の用だ? ツナ」
「何か仕事でご不明な点でもありましたか?」
「いや、そっちは何とかなってる…じゃなくて、リボーン! 獄寺くんも…そんなすぐに退院とか出来るわけないでしょ!!」
「なんだ、盗み聞きか? 趣味が悪いなツナ」
「たまたま聞こえたの。…まったく、リボーンは風邪じゃなくて肺炎に掛かって、獄寺くんは撃たれて身体中に穴開けられたんでしょ? まだ寝てなさい。傷口が開く」
「風邪も肺炎も似たようなもんだ」
「危険度がまったく違うけどね」
「オレはもう平気ですよー」
「数日前まで生死の境を彷徨ってた人が何言ってるの!!」
「それにしてもリボーンさん、何で肺炎に掛かったんですか?」
「無視しないでくれるかな獄寺くん」
「少し体調が悪かったんだが、大丈夫だろうと楽観して抗争に出たら雨でよ」
「スルーかよリボーン」
「お前こそ、何で穴だらけに?」
「足を撃たれてですね、嬲られてました」
「情けねーな」
「ううう、すいません、自分で自分が不甲斐ないです…」
「二人ともオレを無視しないで」
「なんだいたのかツナ」
「10代目? 何か御用ですか?」
「何かって……お見舞いだけど。お邪魔だった?」
「邪魔だ」
「即答かよ」
「10代目、ありがとうございました」
「過去形ってことはそれ暗にオレに帰れって言ってるのかな獄寺くんは」
「つか見舞いなら見舞いの品を持って来い。喰いもん、喰いもん」(バンバン)
「ええい、急かすように叩かない! 子供かお前は!」
「オレが大人に見えるのか?」
「…ああそうだったね。外面内面共に子供か…色気より食い気だし。食い気より睡眠だし」
「そう褒めるなよ」
「褒めてねぇよ」
「うー…」
「って、獄寺くん? どうしたの? 傷が痛むの?」
「違います! 酷いです10代目!!」
「へ?」
「せっかく…せっかくオレは! リボーンさんとのひと時を楽しんでいたのに! 10代目が来たからリボーンさんがオレに構ってくれません!!」
「あ…そう、ごめんね」(ああ癇癪起こす獄寺くん可愛いなぁ…)
「もう馬鹿! 10代目の馬鹿!! オレからリボーンさんを取ってそんなに楽しいですか!? オレかなり苦労して今の位置をゲットしたのに!!」
「うんうん、ごめんね獄寺くん」(ああ嘆いている獄寺くん可愛いなぁ…)
「あれですか!? リボツナですか!? それともツナリボですか!!!」
「うん、そんな感じ」(ああ獄寺くん可愛いなぁ…)
「そうなんですか!?」
「え!? なにが!?」
「お前…そうだったのか」
「だからなにが!? え? ごめんオレ聞いてなかった!!」
「嘘です! 10代目、本音がついうっかりぽろりと出てしまったんです!! そう…いうことだったんですね。10代目はオレのライバルだったんですね!!」
「だからなにが!?」
「ツナ、オレはお前にそんな感情は抱いてねぇぞ」
「無駄ですよリボーンさん。10代目は独占欲が強い方ですからなにがなんでもリボーンさんを手中に収めようとします!!」
「キミはオレのことをどれだけ知っているのかな。当たっているだけに怖いよ」
「いくら10代目とはいえ、リボーンさんは渡しません!!」
「だからオレの話を聞いて! オレはただ獄寺くんの可愛さに見蕩れてて適当に相槌打ってただけなんだって!!」
「オレの話も聞いてなかった10代目の話なんか聞きません!!」
「ど、どうすればいいんだ!!」
「とりあえずお前出てけ。オレから獄寺に説明しといてやる」
「それ超不安なんだけど!? 有ること無いこと無いこと言わない!?」
「お前がいても、もうどうにもならん」
「…オレ…昔はあんなに獄寺くんに慕われてたのに…な……ああ、とりあえずリボーン。これ」
「…ん? …ああ、」
「じゃね」
「…そんなわけでツナが出てったわけだが」
「ふぅ…あ、リボーンさん林檎が剥けました。どうぞ」
「ああ。演技か」
「だって…リボーンさんが10代目の相手ばかり」
「来賓の相手をするのも仕事だ」
「うー…」
「そう拗ねるなって」
「拗ねてませんっ」
「やれやれ…とりあえず、さっさと治してボンゴレに戻るぞ」
「何かあったんですか?」
「ああ、ツナがさっき持ってきた書類な。お前を嬲った奴等をとっ捕まえたって報告書だった」
「え?」
「そうだ獄寺。お前ナイフの拷問したことあるって言ってたな。オレが見本を見せてやるよ」
「え? …え?」
「ツナの奴、報復の役目はオレに回してくれるそうだ。だけどあいつも相当切れてたからな。早く殺しに行かないと他の奴等に殺されちまう」
「…リボーンさん?」
「なんだ?」
「もしかして…怒ってます?」
「そりゃ、お前」
「はい」
「恋人を他の奴に好きにされて切れない奴って、いるか?」
「……………」
「照れるな。可愛いだろう」
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まったく、本当に可愛いなお前は。