「来たか。獄寺」


「ええ。お待たせしました。リボーンさん」


扉を軽くノックして、ノブを握ってゆっくり開けばその部屋の主がオレを迎え入れる。


まだ幼い子供。だというのに当然と言わんばかりにスーツを着こなし、隙のない立ち振る舞い。


驚くことなかれ、このお方こそあの伝説の暗殺者として名高いリボーンさんである。


そんなリボーンさんが顔に影を落とし眼光を鋭く尖らせ真剣な表情で言う。


「して…獄寺。例の物は」


「抜かりなく」


リボーンさんに釣られてオレも真剣な表情を作り手にしていた箱をリボーンさんの目の前に捧げる。


白い、両の手より少し大きな箱。あまり揺らさないよう、慎重に持ってきた。


リボーンさんは箱を受け取り、机の上に置いてゆっくりと開いた。


そして中身を確認し―――くるりと身体を回転させオレに向き直り、きゅっと抱きしめてきた。


「よくやったぞ、獄寺」


そして満面の笑顔。


何この可愛い生き物。


オレは頭を撫でたくなる衝動を必死に抑える。駄目だオレ、我慢しろ…!! こう見えてリボーンさんはオレの恩師で偉くて超凄い人なんだ……!!


「早速お茶にしよう」


「ええ、そうしましょう」


オレは内心を悟られないように平常を必死に演じた。


ああ、箱の中はケーキな。有名どころの。





リボーンさんは呪いが解け、変わった。


主に味覚とか、味覚とか、味覚とか。


甘いものが超好きになった。


ケーキとかクッキーとか、大福とか口砂香とか。とにかく甘いものがあれば食べずにはいられなくなった。


逆に苦いのとか辛いのが駄目になった。コーヒーとか飲めないって言ってた。


…リボーンさんのキャラが……!!


い、いや…きっとこっちが本来のリボーンさんなんだよ、うん…この年の頃のリボーンさんはこんな感じで、年を重ねるにつれあの渋くて格好いいリボーンさんになる………といいな…


「獄寺。どうかしたか?」


「はっいえ、なんでもありません」


「そうか。ならいい。早く食おう」


リボーンさんは目を輝かせていた。


「…ええ。そうしましょう」


オレは笑みを返した。





イチゴショート、チョコレートムース、ティラミス、ブルーベリータルト、チーズケーキにモンブラン。


選り取りみどりに彩られた可愛らしいケーキはあなたのために。


あなたがケーキを口に放り込む度零れる幸せそうな笑顔は、見ているだけでオレも幸せな気分になる。


と、リボーンさんがオレの視線に気付いた。


「なんだ、獄寺は食わないのか? お前の分もあるのに」


「ああ、オレは―――…」


オレはいいです。と言おうとして、リボーンさんのほっぺたにクリームがついているのに気付いた。


思わずくすりと笑って、腕を伸ばし指で救って口に含んだ。


「オレはこれで、結構です」


直後、このクリームはオレのだと拳が飛んできた。


ああ、この人この辺はちっとも変わってないや。


そんなことを思いながら、オレは血の味のする紅茶を啜った。





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甘い空間、甘い一時。甘い時間。


リクエスト「甘々なリボ獄。リボ様元に戻った設定で10年後。」
リクエストありがとうございました。

前の話でリボ最終巻でまさか赤子からやり直すとか何故か少年からスタートという神展開だったらもっかい書きますと書いたらガチでそんな神展開だったので追加。