オレはあなたを尊敬している。
それは疑いようのない事実。
- あなたと最果てで見たモノ -
出会ってすぐに、あなたのすざましさに心を奪われました。
その、強さ。思慮深さに、冷静さ。博識さ、計算の速さ。他にも諸々。
あなたを知れば知るほど、共にいればいるほど。あなたの凄さに打ちひしがられる。
敵わない。敵うわけがない。
どれだけ世界が広くても、あなた以上の人などいない。
そんなあなたの教え子になられて、そんなあなたに指導していただけて。オレはなんて幸せだろう。
…と言っても、幸せなのはオレだけでしたでしょうね。
あなたは強くて、完璧でしたけど。
オレは弱くて、不出来でしたから。
オレはさぞ駄目な教え子だったことでしょう。
一応オレは、あの中では唯一あなたと同じ世界の住人だというアドバンテージを持ってたはずなんですけど。
オレはオレなりに、必死であなたに着いていこうとしました。あなたに応えようとしました。
だけど。
あなたを追おうとすればするほど、あなたは遠のき。
あなたに近付こうとすればするほど、あなたは見えなくなる。
手を伸ばしても届かない。
まるでオレだけ、置いて行かれているようで。
オレは焦りましたけど。
あなたとの距離は縮まらず。
むしろ、離れていくばかり。
月日が過ぎてもそれは変わらず。
気付けば10年経っていました。
あの頃と比べ、オレは強くなったはずですが。
それでもあなたに及ばない。
オレはあなたの隣に立ちたかった。
何故ならオレは、あなたを尊敬してたから。
だけれどそれは、叶うこともなさそうで。
オレは生をも諦めました。
戦場で足を撃たれ、動きを止められ、きっと次の瞬間には命を奪われる。
最期の時、オレの視界にあなたが見えて。
あなたはオレを見てました。
ああ、最後の最後まで、格好悪いところを見せてしまった。
悔しいなあ。
そんな思いをする間もなく。ため息を付く暇もなく。
一際大きく聞こえる銃声がオレを貫き、オレの世界から音と光が消え去った。
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あなたと最果てで見たモノは、いつもどおりの世界でした。