あ…あなたが、
そこで、あいつは喉を言葉で詰まらせた。
なんと言えばいいのか、どう言葉を紡げばいいのか分からないらしい。
一方オレには、話の続きの検討が付いていた。
死んでいたか?
聞けば、あいつは身を震わせた。
それがそのまま答えのようなものだ。
顔を青褪めさせて、それでもどうにか、何か言おうとして。
ただの夢だ。
オレはあいつに言う。
気に病む必要はないと。
なんてことはないと。
それはただの、夢なんだと。
それは事実、その通りで。
あいつが気に病む必要などどこにもないし。
気にする意味もないし。
思い悩まずとも別にいいんだ。
たとえそれが、正夢になろうとも。
微睡みの中、ふとあの日のことを思い出した。
昔の話だ。
思い詰めた、気に病んだ顔のお前がいて。
夢を見たと、話を始めて。
人の姿でなくなった自分が、血溜りに沈むオレを見つけたと。
遠い昔の話だ。
今頃になって、どうしてあの日のことを思い出したのかは…答えはまあ、こいつだろう。
ひらりと、オレの目前を舞う、小さな一枚の花弁。
風が止んだのか、緩やかにそいつは下へ地へと落ちていく。
オレの血の中に沈んでいく。
あいつの見た夢でも、こうなったのだろうか。
答えなど分からない。
意味すらきっとない。
オレは眼を閉じて、深い眠りに付く。
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桜は、死者の血を吸って花を赤く染めるという。
なら、その赤い花びらは血を吸われた奴そのもの―――とも言えるんじゃないかなんて。
最期の瞬間に、ふとそう思った。