獄寺はライターに火を点け、煙草に灯す。
煙を吸い、灰の中まで満たす。
―――落ち着く。
身体のどこかが、あるいは心と呼ばれるところが、満たされていく感覚。
そうそう、これこれ。やっぱりこれがないと始まらない。
気持ちを沈めた獄寺に襲い掛かるは睡魔。
ああ、でも待ってくれ。まだ吸わせてくれ。もう少し吸わせてくれ。
ああ、でも今、この状態で眠れたらとてもよく眠れそうだ。
ああ、でも火を、寝るなら火を消さなければ。シーツに穴を開けたら、またあの女に嫌味を………
…………………。
……………。
………。
どこからか、焦げ臭いにおいが漂ってきた気がした。
そして、リボーンが人間の世界に戻った時、世界は明るかった。
それは陽の光でもあり、そして炎の光でもあった。
屋敷が燃えていた。
獄寺の住む屋敷が、燃えていた。
燃え盛る屋敷の中に足を踏み入れようとして、気付く。
―――もう、獄寺は生きていないという事に。
屋敷の中から光が出てくる。
火の粉ではない。陽の反射でもない。それは、それは―――まさにリボーンが最初に回収しに来たものであった。
獄寺隼人の、魂。
それは真っ直ぐとリボーンの所へと飛んでくる。
リボーンが手を差し出し、獄寺の魂がそれに止まる。
「…一体、何があったんだ?」
ため息交じりに問い掛けられて、獄寺の魂は申し訳なさそうに頭を下げた。
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END No.5「火の用心」
まったく、人間って奴は一体何が楽しくて自滅なんてするんだ?