今日は日曜日。


リボーンさんがオレの部屋まで遊びにきてくれる日だ。


約束の時間は昼過ぎだというのに、オレは朝早くに起きて待ちきれないでいるという。寝付きも遅かった。


オレは何度目になるかも分からない部屋の掃除をする。意味もなく風呂掃除までする。


ああ、まだかなあ。早く約束の時間になればいいのに。


何度も時計を見るけれど、時間は無情にゆっくりと流れている。


何もしない時間に耐え切れず、何故かびしっと指差し確認。


床はぴかぴか、埃一つない。テーブルクロスはぴしっとしていてもちろん染みなどあろうはずもない。


コーヒーの準備も抜かりなく。この日の為にケーキも買ってきた。


うむ。完璧だ。


あとはリボーンさんを待つだけだが…さて。


………。


ふと、閉ざされているカーテンが目に入る。


開けるか…


シャーと音を立ててカーテンが開かれる。外の光が入ってくる。


…いい天気だな…


空は快晴、雲ひとつなかった。


窓を開けると、爽やかな風が入ってくる。


家でお茶もいいが、外で散歩も楽しそうだ。


リボーンさんが来たら提案してみようか。


………。


時計を見てみる。


約束の時間は、まだまだ先だ。


壁に背を預けて、座り込む。


「………」


風と陽の光が気持ちいい。


今頃になって睡魔が襲ってきた。


………。


少しだけ…


少しだけ眠ろう…


本当に少しだけ……


…………………。


……………。


………。










ピンポーン


………。


ピンポーン


…………………。


……………。


………。


ガチャ


「………」










「ん………」


目が覚める。


…いかんいかん。少しだけ眠るつもりが……


今、何時だろう……


霞がかった思考が徐々に覚醒していく。


ふと、腿の辺りに違和感を感じた。


なんだろう。


見てみた。


「………」


なんと。リボーンさんがオレの腿を枕にして眠っていらっしゃる。


身体が硬直する。なんとか顔だけをギギギと音を立てながら動かして時計を見ると、なんと、約束の時間はとうに過ぎていた!!


うわああああああああっ


頭を抱えたくなる。動けないので出来ないが。けどそれほど後悔した。


どうしよう。どうしよう。どうすればいい? どうするべきか? リボーンさんを起こせばいいのか? 寝かせたままにしておくべきか?


「リ…リボーンさん……」


おどおどとそう声を掛けてみるが、リボーンさんは何の反応も示さない。


「リボーンさん…リボーンさん!」


少し声を上げてみるも、リボーンさんは眠ったままだ。いや、もしかしたら寝たふりをしているだけかもしれない。リボーンさんだし。いや、悪いのはオレだけど。


「………」


どうしたものか…


「…リボーンさん、起きてください……」


リボーンさんを起こそうと、リボーンさんの頬を突いてみる。ぷにぷにだった。オレは思わず胸きゅんした。


しかしそう思った瞬間。


「え」


オレの身体が宙を飛び、床に叩きつけられた。


痛む身体。遠ざかる意識の中、





「…いかん。やりすぎた」





という、リボーンさんの声が聞こえたような気がした。










「―――――は!?」


目が覚める。


気が付くとオレはベッドの中にいた。


………夢か?


起き上がると、頭がずきずきと痛んだ。


あ、これ夢じゃねぇわ。


リビングに向かうと、普通にリボーンさんがいた。


「起きたか」


「は…はい……」


「悪かったな。まさかいきなり頬を触ってくるとは思わなくて…つい、うっかり」


「いえ、もとはと言えばオレが寝てたのが悪いので」


「そうか。…ああ、それと勝手に悪いがコーヒーを淹れさせてももらった。お前の分もあるが、飲むか?」


「はい。…ああ、じゃあケーキがあるので、出しますね」


「悪いな」


「いいえ」


オレはケーキを取りに、台所へと向かった。


窓の外は暗くて、一体オレはどれだけ寝ていたんだと頭を抱えた。


「す、すみません…こんな時間まで寝てしまって。退屈だったでしょう?」


「ん? んなことねぇぞ?」


思わず謝罪するオレに対し、リボーンさんはこちらが肩透かしをしてしまうほどあっさりと許してくださる。な、なんてお優しい!!


「お前が気を失っている間、オレはお前で遊んでいたから」


え。


オレは思わず固まった。リボーンさんはにやにやしている。


「な、何をして遊んでいらっしゃったのでしょう?」


「秘密だ」


「リボーンさんー」


い、一体何をされたのだろう。どきどき。リボーンさんはああ見えて結構むっつりだからなぁ……


「思ってること顔に出てるぞ。獄寺」


「褒めてるんですよ」


「それならいいんだ」


いいらしい。


「…ま、それはそれとしてだ。獄寺」


「はい?」


「ケーキを食べたら、外に出ないか? 今日は雲ひとつない、いい天気なんだ。星が綺麗だぞ」


「………」


? どうした?


「いえ………喜んで」


ああ、まだ空は雲ひとつない、いい天気だったのか。


「楽しみですね」


「? そうだな」


予想以上にオレが嬉しそうな顔をしていたのか、不思議そうな顔をするリボーンさん。


ああ、本当に楽しみだ。


暫くして家を出て見上げる空は、きっと満天の天の川―――――





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あなたと見上げる星の河は、きっと格別。


リクエスト「ほのぼの」
リクエストありがとうございました。