どうやらオレは、あなたのこと…
尊敬しては、いなかったようです。
- ただ求めただけ・・・ それなのに”罪”ですか? -
オレはあなたを尊敬してない。
何故かは分からないけど。
オレはあなたを尊敬してない。
ならどう思っているのかと問われても、分からないけど。
あなたを尊敬する理由は山のようにあるのに。
どうしてだか、オレはあなたを尊敬出来ない。
と言っても、決して嫌悪感を持っているわけではない。
むしろ、その逆だけど…
なのにどうして尊敬出来ないのか。
あなたに抱くこの感情はなんなのか。
あなたをどう思っているのか。
それだけが、分からない。
どれだけ考えても、分からない。
オレはあなたに好意を持っている。
それは間違いない。
オレはあなたを凄いと思っている。
それも間違いない。
あなたの実力はオレの予想をはるかに超えているだろうし、
あなたの考えはオレの想像が追いつかないほど深いだろう。
あなたの伝説の中にデマなどなく、
オレはあなたに幾度となく救われてきた。
これらは全て、オレが肌で感じてきたことで。
間違いなんてあろうはずがない。
なのにオレは、あなたを尊敬出来ない。
オレがあなたをどう思っているのか、分からない。
自分の気持ちが、分からない。
分からないまま月日は流れ、
早くも10年経っていた。
オレがあなたをどう思っているのか、答えの出ぬまま、分からぬまま。
…あるいは、答えを出さぬまま、分かろうとしないまま。
―――分かっては、いけない気がした。
答えを出したら、全てが壊れてしまいそうで。
取り返しのつかない、どうしようもないことになりそうで。
オレはあなたをどう思っているのか。
もし誰かに聞かれたら、オレは一体どう答えればいいのだろうか。
仮初の回答すら分からない。
唯一つ、言えることは。
オレはあなたを尊敬してない。
オレはあなたを嫌ってはないけど。
オレはあなたに好意を持っているけど。
オレはあなたを尊敬出来ない。
オレはあなたをどう思っているのか。
知らない。
分からない。
…考えては、いけない。
答えを出しては、いけない。
思いついてはいけない。
…それを、認めてはいけない。
そうしてしまったら、何もかもが一気に瓦解してしまう。
だからオレは、最後まで己の気持ちを考えぬまま、答えを出さぬまま、知らぬまま。
ここで死ねて、正直ほっとしてますよ。
これ以上あなたといたら、気付いてはいけないことに気付いちゃいそうですから。
安堵の表情をしながら、額から流れる血を拭いながら、銃弾の雨がオレに降り注ぐ。
ふと視界に入ったあなたは、何故だか苛立った顔をしていた。
届かないと知りつつも、あなたに手を伸ばしたいと思ったけど。
その気持ちを無視して、押し殺して。そしてオレ自身も殺されて。オレは物言わぬ躯へと成り果てた。
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あなたに手は伸ばさない。ただ求めただけでも、それだけでも罪だと、知っているから。