オレはあなたを尊敬しています。
尊敬していなければ、どう思っているっていうんですか。
- 終焉で求めても届かなくて・・・ -
あなたを見たとき、鼓動が高鳴りました。
それが最初の思い出。
思えば、オレは初対面とは思えぬ速さであなたに惹かれていきました。
基本、誰にでも反発するこのオレが。
10代目にすら、初めて会ったときは敵愾心を持っていたというのに。
何故だか、あなたにだけは、そんな感情を抱くことなく素直に懐きました。
不思議と思ったけど、それすら丸ごと受け入れられました。
まるでそうするのが自然なように。
まるでオレが、あなたのことを信頼できる人間だと、最初から知っているかのように。
あの9代目が信頼を置いてる方ですから、そりゃあ当然なんですけどね。
でも、そういうのとは関係なしに―――そう。
まるでオレが、ずっと前からあなたを知っていたかのように。
まるでオレが、ずっと前からあなたと過ごしていたかのように。
そんなわけ、ないんですけどね。
オレとあなたが会ったのは、オレがあの学校に転校してきたあの日。
それまであなたの噂話程度は聞いていたけど、話したことはもちろん、顔を見たことすらなかった。
そんなオレが、何故あなたを無条件に信頼出来たのか、分からないけど。
あなたにはそう思えるだけの何かがありました。
あなたの為すことはすべてが正しくて。
あなたの言うことはすべてが真実で。
間違いなんてありようがなくて。
そんな日々を過ごしていたら、早いものであっという間に10年の月日が経っていました。
時間が流れてもオレたちの関係は変わりなく。
歳月が過ぎてもあなたへの思いは変わりなく。
オレはあなたを尊敬している。
尊敬していなければ、どう思っているっていうんですか。
オレはあなたを慕い、敬愛し、尊敬している。
それ以上の感情なんて、持ちようがない。持つはずがない。
そうして日々を過ごす中、あなたを含めた大勢の人間と、ある抗争に行くことになりました。
移動中、どこからか視線を感じて、見ればあなたが何故かオレを睨みつけてました。
目が合う直前に、あなたは目を反らしてしまったけど。
あれは一体なんだったのでしょうか。
訳も分からぬまま、答えの出ぬまま。オレたちは戦場へ。
敵陣は強く、勇ましく、オレたちも負けてはないけど、被害も多く。
オレは戦いながらも、あなたの姿を探して。
そして見つけた、あなたの姿。
銃を手に、戦い踊るあなたの姿。
その姿の…なんと、眩く、魅力的なことか。
オレは思わず、届くはずのないあなたに手を伸ばす。
銃声がどこか遠くで聞こえ、身体に穴が空くのを他人事のように感じ、オレは自覚のないまま地に伏せる。
あなたがオレに気付いて、また睨みつけて。
…戦場で、死体の上に立ち見下ろすあなたを、場違いにも格好いいなんて思って。
あなたを見たとき、鼓動が高鳴りました。
それが最後の思い出。
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終焉で思いに気付いてあなたを求めても、短すぎる腕は決して届かない。