とある、大きな時計塔―――


そこに彼は、獄寺は立っていた。



「………」



彼は、ある人物と待ち合わせをしていた。その場所こそが、この時計塔だった。


けれど…いくら待っても、彼は来ない。



「………」



待ち合わせの時刻は既に過ぎた。元々夜に会う約束だったのだが時間はいつしか夜というよりは既に深夜となり…虫も眠ってしまったのか、辺りは無音となっていた。


いや、微かに一つだけ…音はあったか。


それは時計の音。時計塔の、秒針が動く音。


そして……



ボーン、ボーン……



時計が時刻を告げる音。



「………」



獄寺は自身の付けている腕時計を見て、時刻を確認する。


…時計は頭上にあるのに、と気付いて苦笑。


そして、こんな時間になっても未だ来ない相手に不安が募った。


何かあったのだろうか…そんな思いが沸き起こる。


けれどすぐに、まさか、あの人に限って…と思い直す。


…けれど。


何が起こるか分からないのが、この職業なわけで。



「………」



何度も、彼に電話をしてみた。


けれど、いづれも電波の届かない場所にいるか、電源が切れている。とのアナウンスが流れるだけだった。


ぽつり、と獄寺の髪に滴が落ちる。



雨だった。



雨粒はやがて量を増し、辺りを、獄寺を打ち付ける。


雨に打たれながらも、獄寺は待ち続けた。



そして…やがて。



獄寺は胸元から、振動を感じた。


それは携帯電話の着信だった。



「リボーンさん!?」



獄寺は思わず待ち人の名を呟き、携帯に手を伸ばす。画面に映し出されている名前こそ、まさに望んでいる人からだった。


獄寺は迷わず通話ボタンを押した。



「リボーンさん!」


『ああ、獄寺か…』



聞こえてきた声に、獄寺は安堵する。


もしかしたら怪我でもして動けないのではないか…と思っていたのだが、少なくとも声の感じからはそんな様子は見受けられない。


だが、次のリボーンの台詞は獄寺の胸を騒ぎ立てるには充分過ぎた。



『…実は、少し困ったことになった』


「困ったこと…?」



あなたが? と言う言葉は何とか呑み込んだ。


しかし、それほど衝撃的だった。


あのやることなすこと全て完璧であるリボーンが困ることとは…一体何なのだろう?



『…お前…今どこにいるんだ?』


「どこって…あなたとの待ち合わせ場所ですよ? 時計塔の下ですけど」


『だよなぁ』



本当に困っているのか、リボーンの声色もどこか困惑気味に聞こえた。



「………」



獄寺も多少混乱した。


ええと…つまり………これは…



『どやらオレは、道に迷ったみたいだ』


「………とりあえず…リボーンさん今どこにいるか分かります?」



微妙に痛くなってきた頭を抑えながら、獄寺はリボーンに聞いた。


この辺りの地図なら頭の中に納まっている。出来ることなら誘導して、早く合流したい。


だが…



『それが分かれば苦労はしない』


「ですよね…」



どんなときでも変わらずオレ様な彼に頭痛が少し酷くなった気がした。が、獄寺はとりあえず無視した。



「ええと…でしたら、辺りに何が見えますか? 何か目印になるようなものがあれば教えて頂けると助かるんですけど」


『目印か…そうだな』



リボーンが黙り込み、電話の向こうで辺りを探るような気配を感じた。



『―――月が見えるな』


「月ですか!?」



獄寺は思わず頭上を見上げる。雨はいつの間にか上がったしく、獄寺の目からも雲の間から月が見えた。



「……もう少し…別のものはありませんか…? というか、今リボーンさんはどのようなところにいるんです? どこかの街中ですか?」


『いいや、廃墟だ


「廃墟!?」



獄寺は耳を疑った。


何故に、廃墟。どこからどう行って、廃墟。



「―――」



獄寺は痛む頭をフル回転し、それでもどうにか場所を特定する。


…リボーンが受けていた任務から廃墟に向かうルートは………一つだ。丁度、待ち合わせ場所から180度真逆の方向に突っ切れば到着する。



「…多分オレ、分かりました」


『本当か?』


「ええ。これから迎えに行きますので、待っててくださいね」


『ああ』



獄寺は通話を終わらせ、さてと目線を遠くに向ける。


心当たりの場所は、幸いなことにここからそう離れてはいない。


きっとすぐに会えるだろう。


そう、楽観していた。



このときまでは。







通話の切れた携帯を仕舞いながら、リボーンはほっと安堵の息を吐いた。


どうやら獄寺には、自分の場所が分かったらしい。


あとは待っていれば来てくれるそうだ。



―――と、そのときだった。



ビョウ、と、突風が吹き荒れた。


そしてその風に、リボーンの帽子が持っていかれた。



「あ…」



リボーンは思わず手を伸ばす。が、惜しくも今一歩のところで届かない。


リボーンの選択肢に、帽子を見送るというものはなかった。


リボーンは迷わず、帽子を追って走り出していた。


廃墟から、森へと向かって。







そして獄寺が向かった先の廃墟。


そこは当然のように無人で、リボーンの姿など当然のようになかった。



「………?」



ここではなかったのだろうか? と獄寺は首を傾げる。


そうしていても始まらないので、獄寺はリボーンに連絡を取った。


数回のコールのあと、電話が繋がった。



「リボーンさん? 今オレ廃墟にいるんですけど、リボーンさんは…」


『ここはどこだー!!!』


「・・・・・・・・・」



獄寺は一瞬、色んな間違いや偶然が起きて、憑依弾が飛び交ったりして、リボーンの身体に笹川が入ったのではないか。とか思った。


なんか、そんな感じだった。


収まりかけていた頭痛が再発した。


というか、先ほどの電話の叫びが風に乗ってかどこかから聞こえたような気がした。



「……ええと、リボーンさん。オレ、どうにか根性であなたを見つけますから、あなたはとりあえず、動かず、その場で、じっとしていてください」


『無理だ!』



獄寺の唯一の願いは虚しくも即断られてしまった。



「…一応、理由をお聞きしてもいいですか?」


『現在進行形で全力疾走中だからだ!!』



「何故ですか!?」



『お前を待っている間に帽子が風で飛ばされて、現在追っている。―――ああ、くそ、待ちやがれ!!!』



獄寺は思わず叫んでいた。



「―――迷子になったときの鉄則は動かずその場に留まることでしょう!? そんなことも分からないなんてあなた馬鹿ですか!? 馬鹿なんですか!?



ガシャン、と、何かが落下する音が聞こえた。


そしてツーツーツーと、あの通話が途切れた音が聞こえてきた。


それは、昔から散々「馬鹿だ馬鹿だ」と言い続けてきたあの獄寺に「馬鹿」と言われたショックで思わず orz となったリボーンが携帯電話を落とした音だった。







「………ってことがあったんですよ10代目!!」



あの待ち合わせ事件から数日後。


その話題はある日の酒の席の肴になった。



「なにリボーン。迷子になったの? 子供っぽいのは外見だけにしときなよ」


「オレは迷っちゃいねぇ。獄寺が迷子になったんだ」


「お前待ち合わせの場所が分からなかったんだろ!? つか獄寺くんに「迷った」って電話したんだろ!?」



10年の歳月を得て、ますます冴えるツナの突っ込み…にもリボーンは動じない。



「はぁ…ったく、獄寺くんもよくこんなリボーンと付き合えるよね…」


「当然です!! 何故ならオレはリボーンさんを愛していますから!! リボーンさん愛してますー!!!



と、獄寺の熱烈な告白。…獄寺の真っ赤な顔から、どうやらかなり酔っ払っているらしい。


ならば我等がヘタレ馬鹿ことリボーンはどう反応するのだろうか。やはり真っ赤になって動揺してコップを落として割れる硝子の音にびびって逃げたりするのだろうか。とか何とかツナが思っていたら。



「オレも愛してるーーー!!!」



と、なんとなんとリボーンも熱烈な愛の告白を返して獄寺を抱きしめていた。…見れば、リボーンの顔も獄寺に負けず劣らず真っ赤だった。


どうやら、リボーンも獄寺と同じぐらい酔ってるみたいだった。



「…10歳のくせに…」



どうしたもんかと思いながら、ツナを初めとしたボンゴレメンバーは酒を飲むのだった。







そして翌朝。


当然のように、リボ獄二人は頭を抑えていた。


当然のように、二日酔いだった。


そして当然のように、昨夜お互いに熱烈告白をしたことも覚えていなかった。



「言ってねぇ」



頑なに否定する我等がリボーン。(頭を抑えながら)



「言ったって」


「言ってねぇし、そもそも酔ってすらねぇ」


「じゃあ昨日の夜なにしてたか教えてよ」


「覚えてねぇ」



リボーンは潔すぎるぐらいに一言で済ました。



「…覚えてないほど酒飲んだってことだろ!?」


「馬鹿野郎。次の日に備えて早く寝たに決まってるだろ」


「でも頭痛いんだろ!?」


「頭が痛いのは…あれだ。偏頭痛だ。オレは風邪気味なんだな、きっと」


「………」



ツナは頭を抱えた。


なにこのオレ様。





そして、迷った迷ってないはともかく獄寺に迷惑を掛けたということで、リボーンは次の休日を獄寺と過ごすと約束した。


これに獄寺は大層喜び、どこに行こう何をしようと始終うきうきわくわくしていた。


そして、その時がやってきた。





「………」


「………」



その地に降り立ち、リボーンは暫し無言だった。獄寺も何故か釣られて無言になった。



「………なんだここは」


「九州です」


「九州ってのは、山と運河しかないものなのか?」


「まさか。普通に電線も馬鹿みたいにありますし、ビルもマンションもありますよ?」


「………どこに?」



そうリボーンが疑問に思うのも無理はなく、辺りにはまさに山と運河しかなかった。車の音すら、先ほどリボーンたちが乗ってきたバスが走って行ってしまえば聞こえなくなった。



「ここにテーマパークがあるらしいんですよ」


「テーマパークねぇ…」



山と運河とホテルと…そしてもう一つ、ここ、ここです! とばかりに主張する巨大な建物がある。きっとそれのことだろう。



「オレ、リボーンさんとここに来てみたかったんです!!」



と、可愛い恋人に笑顔で言われれば惚れた弱みでそれ以上リボーンに強く言えるはずもない。


…というか、あまりにもの獄寺の可愛さに胸の奥がきゅん! と高鳴り何も言えなくなる、と言った方が正しいか。



「…ま、たまにはいいか」



と、リボーンは暢気にも思った。


この時までは。





「じゃあリボーンさん、早速ですけど、あれに行きましょう」



と、獄寺が指差したのは、どうやら水を使ったアトラクション。



「………怖くないか?」


「あなたが皆殺しのメロ○ィを口ずさみながらバズーカを片手に迫ってくるよりかは怖くないですよ」


「どんな例えだ!?」


「まぁまぁ。行きましょうリボーンさん。なんでもすごい迫力だそうですよ? 水飛沫が舞うとか」


「そこまで過激なのか!?」



とことんヘタレな我等がリボーンは、獄寺に襟元を掴まれそのままずるずると引き摺られていった。





「最初は水についての説明があるみたいですね…ってリボーンさん? 壁際を調べて何をなさってるんです?」


「…トラップがあるかもしれないからな」


「トラップって…仕掛けのことですか? たぶん、ここからまた移動すると思いますから少なくともこのエリアにはないんじゃないですか?」


「なん…だと……!?」


「…リボーンさん、床に這いつくばりながらショックを受けないでください。―――って、リボーンさん!?」



と、リボーンの身体を煙が包んだ。



「まさか…10年バズーカ? ―――リボーンさん!?」


「獄寺…か? …ん? ここはどこだ?」


「…初めまして小さなリボーンさん。今、オレとあなたでデート中だったんですよ」


「………デート!? オレとお前が!?」


「はい」



にっこりと獄寺が微笑むと、実は何気に小さい頃から獄寺に片想いをしていたリボーンの頬がカッと赤くなる。



「そ、それより…ここはどこだ? オレたちは何をしてるんだ?」



小さなリボーンは暗がりが怖いのか、照れたときのイーピンよろしく獄寺の足に引っ付く。



「ここはテーマパークで…オレたちはこれからアトラクションに乗るところだったんですよ」


「アトラクション…? どんなだ?」



不安げに見上げてくるリボーンが可愛くて、獄寺は笑みの顔を浮かべながらリボーンを抱き上げる。



「おい、ごくで―――」


「もう開演時間ですね。行きましょう。…すいません、リボーンさん。あなたの五分を、オレのために使ってください」


「………」



小さなリボーンは獄寺に抱きしめられたまま移動する。


全身を包む獄寺のぬくもり。


見上げれば微笑で返してくれる獄寺。


いっぱいいっぱいで、正直死にそうだった。


席に着き、アトラクションが始まる。


水売り少女の話が始まった。


そして、五分が経った。



(あ、リボーンさんお帰りなさい。今アトラクションがあってますから、お静かに願いますね)



そんな声が隣から聞こえる、リボーンの眼前。


そこでは大量の水が辺りから溢れ出し、高上る水には悪魔が映り、大音量の雷と眩しい光がこれでもか!! というぐらい瞬いていた。





「―――――ハッ!?」



気が付くと、何故かリボーンは喫茶店の中におり、目の前のテーブルにはチーズケーキとモンブランとコーヒーが置かれてあった。向かいの席には獄寺が座っていてやはりケーキを食べている。



「リボーンさん? どうなされました?」


「どうしたって…オレはどうしたんだ?」


「リボーンさん、覚えてらっしゃらないんですか?」


「何をだ?」


「リボーンさん、アトラクションが終わったと思ったら、動かなくなってたんですよ


「動かなく!?」



確かに10年前の世界に行ってから、今目の前までの記憶がない。


辛うじて…大量の水と、光と、轟音が思い出されたがリボーンは速やかに削除した。



「…とりあえず…帰ったら山本とスクアーロに刀禁止令を出しとくか。水は危険だ


「どんどん使える武器がなくなっていきますね」



棒月棒日、とある遊園地にリボーンと獄寺が行ってから、ボンゴレはなんと「火気厳禁」が厳守されていたりする。



「煙草ぐらい許してくださいよ。オレ、火の始末はちゃんとしますよ? マナーも守ります」


「駄目だ」



リボーンの中では未だにトラウマのようだった。



「…で、次はお前はどこに行きたいんだ?」


「そうですねー…さっきのアトラクションの隣にあるらしい、「もしも世界に月がなかったら」ってのにちょっと興味が…」


「…ちなみにそれ、音とか出るのか?」


「超スゲーらしいです。大迫力って噂ですよ」


「却下だ!!」



即答するリボーンに、獄寺は苦笑。



「分かりました。では、リボーンさんでも楽しめるようなところにしましょう」


「…そんなところあるのか?」


「ええ。トリックアートでしたら、きっとリボーンさんも喜んでくださるって。信じてます」


「………」



そう言って、笑う獄寺にリボーンは思わず見蕩れた。



「別に揺れないし水飛沫もないし、大きな音も光もないですから!!


「やかましいわ!!!」







けれどなるほど、確かに獄寺の言う通り、トリックアートは楽しいものだった。


というか、結構ノリノリなリボーンだった。



「トリケラトプスが飛び出している絵があるな」


「そうですね。…トリケラトプスの角を掴むように手を置くと、「オレが食い止めてるうちにここから逃げろ!!」な絵が出来るそうです」


「―――オレが食い止めてるうちにここから逃げろ!!!」


「リボーンさん!? ああ、でもリボーンさんでしたら普通に出来そうな感じがします!!」






「…でも楽しんで頂けたみたいでよかったですよ、リボーンさ………」



と、一通り回ってから、獄寺は気付いた。



「………リボーンさん?」



リボーンの姿が、ない。



………。



一体どこで消えたのか…



「…やっぱりはぐれないようにって、無理にでも手を繋げばよかったかな…」



リボーン曰くそんな恥ずかしいこと出来るか!!! と一喝。しかしその実態は、恥ずかしくて恥ずかしくて無理です。と言うリボーン語だった。


と、携帯に着信を告げる振動がなった。獄寺は携帯を取った。



「リボーンさん? 今どちらにいるんです?」


『獄寺? オレは今どこにいるんだ?』


「知りませんよ! …もう、また迷子になったんですか!?」


『違うな』


「はい?」


『お前が、迷子になったんだ』


「…はいはいそうですね。ところで、そこはどこです? 何か目印になるようなものは……」


『目印…か。獄寺。目印はオレだ!! オレを探せ!!』


「ちゃんと真面目に答えてください」


『いや、それが、ここがどこだかオレにも―――』



と、ぷつりと電話が途切れた。



「………リボーンさん?」



再度電話を掛けてみるも、繋がらない。



「………まさか…充電切れ?」



獄寺は盛大にため息を吐いた。







一方その頃、リボーンはと言えばほとほと困っていた。


ここはどこだ。


好き勝手進んでいたら、獄寺の姿がなくなっていた。


本当に不思議だ。


場所を告げようにも、辺りにあるのは緑と海のみだった。


なんという大自然。


しかも場所を聞こうにも、辺りは閑散としていて人っ子一人すらいなかった。


困った。


更に言えば、携帯の充電もなくなった。


携帯電話の充電をしてくれる小さな施設があったが、どうやらセフルサービスのもので、リボーンには使い方がいまいち分からなかった。


本当に困った。


ただでさえそんな事態で、苛立っているというのに。



「………」



気が付けば見知らぬ子供が目の前におり、リボーンを好奇の目で見ていた。



「ボク、迷子?」


「誰が迷子だ!!!」


「ママー、迷子がいるー」


「だからオレは迷子じゃない!!」



リボーンはそう言うが、しかし一人途方に立ち尽くす10歳の図はどこからどう見ても迷子の図だった。



そして―――





ピンポンパンポン♪





テーマパーク内に、アナウンスが流れた。


獄寺が何事かと顔を上げる。



『迷子のお知らせです。黒いスーツをお召しになった、10歳ぐらいのお坊ちゃんをお預かりしております。名前はリボーンくんというそうです。お心当たりのある方は「誰が迷子だーーー!!!」



ブツッ



アナウンスが、やけに不自然な形で途切れた。


というか、今、最後にアナウンスに紛れ込む形で聞こえた声に、獄寺はかなり聞き覚えがあった。



「………」



獄寺はとりあえず、目の前を通ったスタッフらしき人物に声を掛けた。



「すいません、迷子センターってどちらにありますか?」







「リボーンさん、こんなところにいたんですね。オレ探しちゃいましたよ」


「探したのはオレの方だ馬鹿!!」


「これに懲りたら、一人で勝手にどこかへ行ってはいけませんよ?」


「お前が一人でどっかに行くな馬鹿!!」



若干涙目のリボーンと、それを宥める獄寺の姿はとても微笑ましかった。


こうして、またもリボーンの心に深い癒し難い傷を負わせ、二人のデートは終わったのだった。







そして後日。リボーンは、獄寺からある贈り物をされた。


それは携帯電話だった。



「オレのと同じ機種なんですよ」


「そうか」



確かに色違いではあったが、同じ携帯だった。


お揃い。恋人からの贈り物。リボーンの心のテンションが若干上がった。


しかし。リボーンは知らなかった。





「ねぇ獄寺くん」


「なんですか?」


「リボーンの迷子対策、何かした方がいいと思うんだけど」


「ああ、それでしたらもうしときましたよ」


「へぇ。どんな?」


「GPS機能付きの携帯を渡しました。オレと同じものですから、操作方法もすぐに教えることが出来ます」


「なるほど。…じゃあ、リボーンに携帯の電源は切るなってのと、毎日携帯の充電を怠るなって伝えておかないとね」


「そうですね。ああ、あと―――街中にある携帯充電サービスの使い方も教えておかないと…あと小銭を渡しておきましょう。これで完璧です!!」



―――そんな周りの思惑も知らずに、リボーンは獄寺からの贈り物にただ素直に喜んでいた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わーい、獄寺とお揃いー


空さまへ捧げさせて頂きます。