ドアを開けると殺気が飛んできた。


部屋の中にはリボーンがいた。


リボーンはオレを睨んでいる。


何事かとよくよく見てみると、リボーンの膝下には獄寺くんがいた。


なんと、あのリボーンが獄寺くんを膝枕していた。


リボーンはオレを睨みつけている。





おいこらツナ。てめぇ音を立ててドアを開けるな。獄寺が起きたらどうしてくれる。


え、何リボーンが怒ってたのってそういう理由? 獄寺くんに膝枕をしているのを見られたのが恥ずかしいとかじゃなく?


別に恥ずかしくねぇだろ。


え、だってさ、じゃあさ、何らかの理由で今のオレと獄寺くんが入れ替わったとしたら、リボーンどうする? どうなる?


―――オレは自殺するだろうな。


そこまでかよ! 酷いな!!


自殺して、そしてお前を殺すだろうな。


その順番怖いよ!! 何が起こってるんだよ!! 呪い!?


ああ、すまない獄寺。誤解なんだ。オレは嫌がったのに、ツナが無理やり…


だから順番おかしいよ! 自殺してオレを殺してから獄寺くんに弁解!? 獄寺くん聞けるの!?


ともあれ静かにしろ。獄寺が起きたらお前を殺す。


だから静かにしてんじゃんー…眼だけで会話してんじゃんよ今。



そう。今オレたちは眼だけで以心伝心が出来ており、音は全く発生していないのだ。


ついでに言えば、オレはドアを開けたところから一歩たりとも動いてない。


オレとしては本当は本音はリボーンたち正面のソファに座って二人を観察したいのだが、足音どころか布が擦れる音さえリボーンが許しちゃくれなさそうなのでオレは立ち往生しているのだった。


―――と、





「……ん、」





獄寺くんが、動く。


無音とも言っていい空間の中、獄寺くんの微かな吐息と身じろぎだけが妙にはっきりと聞こえた。


獄寺くんがリボーンに擦り寄る。


微笑む。


そして、





「―――リボーン、さん……」





―――至福。


何ドヤ顔で決めてるんだよ。じゃなくて、リボーンと獄寺くんそこ代われ。


お前は落ち着け。


くそ、くそ、甲乙付けがたい…!! どっちも羨ましい…!!


なんで獄寺も羨ましいんだよ。


リボーンの膝枕とか……!!


……………。


そこ! ドン引きしない!!


お前はオレの半径10メートル以内に入るな。



「オレはストーカーか!!」



「あ」


「あ」



………。



やばい…声、というか大声、出しちゃった。


オレとリボーンが獄寺くんを見る。


獄寺くんは目蓋を擦っていた。



「ツナ。まあ、なんだ。オレにも慈悲はある。―――辞世の句があれば聞いてやらんこともない」


「殺す気満々か!!」


「10代目…? ええと、それから…リボーン、さん。オレ…」


「起こして悪いな獄寺。オレはお前を寝かしておきたかったんだが、ツナが空気読まず大声出しやがって」


「いえ…オレ、寝るつもりは、なくて…」


「あんなにフラフラで仕事が出来るか。身体を休ませるのも仕事の内だ」


「………すみません」



獄寺くんがぼんやりとした目をしながら謝っている。


…獄寺くんに結構仕事あげてたからなぁ……



「全く、ダメツナが。自分の仕事まで獄寺にさせやがって」


「いえいえ、オレがさせて頂いてるんですよ」


「あんな変態にどうしてお前みたいな奴が仕えてるんだろうな」


「変態…? リボーンさん、またなにか…?」



またって何!?


リボーン、獄寺くんにオレのことなんて言ってるの!?



「あいつ、気持ち悪ことしか言わねぇ」


「それは…いけませねえ」



獄寺くんはぼんやり頭のままオレを見て、静かな声で、



「10代目」


「あ、はい」



何故か敬語。姿勢も正す。



「今後、リボーンさんの半径100メートル以内に入ってはいけません。電話も禁止です。ですがご安心下さい。伝言がありましたらオレが承ります」


「獄寺くんリボーンのことになるとオレにめっちゃ厳しくなるよね!?」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何してるんですか。早く実行して下さい」

「この寝起き容赦が欠片もねー!!」