声が聞こえる。


声が聞こえる。



人気のないその場所で、誰かの話し声が聞こえる。



話し声が聞こえるということは、誰かと誰かがいるということで。


話し声が聞こえるということは、複数人がいるということで。


けれど、聞こえる声は、たった一人だけのもので。


その声は震えながら、その声を張りながら、そうしながら言葉を紡いでいる。



誰かへ向けて。


誰かのもとへ。



誰かに声を届かせる。



声を出しているのは銀髪の少年。獄寺隼人。


彼が声を届けている相手は―――



………。



誰もいないその場所に、声だけが響いている。


風の音さえ聞こえない。


木々のざわめきさえ沈んでる。


獄寺の表情は落ち込んだり、驚いたり。くるくると変わっている。


何を言われているのか。


それは誰にも分からない。


何故なら、





「ああ―――リボーンさん」







獄寺の目の前には、







「やっぱりあなたには、」







一つの墓石しかないのだから。










「その帽子が、よく似合う」










そう言う獄寺の前にある、墓石に掘られた文字は確かに先程から獄寺が呟いている名前。


墓石を相手に、獄寺はまるで本当にそこに生きてる人間が、リボーンがいるかのように話す。


誰もいない、墓所の中。


一人の話し声だけが、やむこともなくただ響いている。





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彼は今日、「リボーンさんに忘れ物を届けてきます」と言って、手ぶらでここまで来た。