現在、場所はデパートの一フロア。


少し遠目に見える専用コーナーには煌びやかに赤く、あるいはシックに茶色くラッピングされた今日という日だけに用意された甘菓子の数々。





「……獄寺くん」


「はい?」


「ちょっといいかな」


「ええ。何でしょう」


「オレは…今。何故だか無性に、チョコレートが食べたいんだ」


「はあ」


「オレはね、チョコレートが食べたいだよ、獄寺くん」


「そうですか」


「うん」


「………」


「………」


「……………」


「……………」


「…あ、オレ、買ってきましょうか?」


「お願い出来る!? 獄寺くんっ」


「え、ええ…お任せ下さい……」


獄寺くんはかなり必死なオレにドン引きしながらもチョコレート売り場へと行ってくれた。



………。



「ふ…オレの作戦…完璧過ぎる」


「ほう。何の作戦がどう完璧なのか聞きたいもんだな」


気付けばオレの足元に天使…じゃなかった、しかし天使のように…いいや、きっと天使以上に愛くるしいリボーンがいた。


「…なんか悪寒が…」


「え? 大丈夫? リボーン」


「………ああ。で、何の話をしてるんだ、お前は」


「リボーン。今日は何日か知ってる?」


「2月の14日だが」


「何の日か知ってる?」


「ウァレンティヌス司祭の処刑日だな。兵士の自由結婚ぐらい認めてやれよって話だよな」


「………」


「嘘嘘。冗談だ。日本において言えば何もしないでもチョコレートがもらえる日だろ」


「く…っ、これだからモテ山モテ尾は…!!」


「誰だそいつ」


「世の中には必死になってもチョコレートがもらえない奴だっているんだよ…!!」


「誰だそいつ」



オレだ!!



………。


なんだかひたすら情けないな…オレ……


「10代目、チョコレート買ってきました。どれがいいですか」


獄寺くんが戻ってきた。


紙袋一杯にチョコレートが入っている。


内容もミルク、ビター、ブラック、ホワイト、板チョコにクランチに生チョコと多種多様だ。


………。


なんだろう、この、これじゃない感…


沢山じゃなくて、たった一つの、選び抜きの、とっておきが嬉しいのに!


「10代目?」


「このハートでお願いします!!」


「あ、はい。じゃあこのホワイトをどうぞ。なんでしたら全部差し上げますが」



「だからそれは違うんだよそうじゃないんだよ!!」



「そ、そうですか…」


獄寺くんはやっぱりドン引きしていた。


「これがお前の言う完璧な作戦か」


うるせえ。


「あ、リボーンさん」


「お前、その余ったチョコレートはどうするんだ?」


「どうしましょうねえこれ。リボーンさん、要ります?」


「くれ」


「…何だよ。リボーンだって獄寺くんからチョコ欲しいんじゃん」


「違う違う。純粋にチョコレート…ひいては甘いもんが欲しいんだ」


「お前甘いもんは苦手とか言ってなかったっけ?」


「呪いが解けてから味覚が変わったんだよ。甘いものマジ最高」


「リボーンさん、どれがいいですか?」


「ひとまず生チョコ」


獄寺くんが包装紙を解いてリボーンに差し出す。


「はいリボーンさん、あーん」


「ん」


「く…っどっちかはあえて伏せるけど羨ましい…!!」


「「………」」


何故か二人してドン引きしていた。


なお、獄寺くんに買って貰ったチョコレートは普通においしかったです。





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「あの後母さんと京子ちゃんとハルとクロームとユニからチョコレート貰った」

「よかったですね」

「締めはビアンキか」