ある、静かな夜。
明かりの点いた、大きな屋敷。
その中には、ひとつの世界があった。
煌びやかな飾り付けが施され。
豪華な食事が用意され。
紳士淑女が集ってた。
みなが集うホールの真ん中で、
背中と胸元を大きく開けた、真っ赤なドレスを身に纏った一人の女が踊ってる。
銀の髪と身に着けた宝石がキラキラと輝き、周りの人々を魅了する。
彼女は、紛れもなくこの世界の中心だった。
ピアノの曲に乗りながら。熱い視線を意にも掛けず。彼女は踊り続ける。
笑みは妖艶。滴る汗すら色香に変えて。やがて踊りは終わり、女の一礼と共に割らんばかりの拍手が世界を覆った。
パーリィの終わりと同時に世界は終わる。客人は屋敷から出て行き、中には主人である女と、数人の使用人だけが残った。
鼻歌を歌いながら女は自室に戻るために階段を上がる。
踊り場に差し掛かったところで、ふと見上げると男が数人、振ってきた。
女は目を丸くし、とりあえず数歩足を引いた。女がいたところに男が落ちてきた。
「獄寺。危ないぞ」
男の次に声が振ってきた。獄寺と呼ばれた女が再度見上げると階段の上に黒いスーツを着た男が立っていた。
「リボーンさん」
男の名を呼びながら、獄寺は階段を上がる。階段の下、倒れて呻く男には目もくれない。
「あの方たちは?」
「お前の部屋に忍び込もうとしていた馬鹿どもだ」
「まあ」
獄寺は男たちに目をやった。
「そんなことしたらどうなるかも分からないほどの馬鹿がオレのパーリィに?」
リボーンがため息を吐く。獄寺はきょとん、としている。リボーンは獄寺を指差し、言った。
「お前が、ただでさえ馬鹿な男たちを、救いようがないほど馬鹿にさせる、阿呆みたいな格好をしてるんだろうが!」
「セクシーでしょ?」
獄寺は身をくねらせた。普通の男が見たら思わず凝視してしまいそうな色っぽさだが、リボーンは呆れるだけだ。
「子供が背伸びするんじゃない」
「オレ、もう24なんですけど」
「まだまだ子供だ」
「オレ、結構発育良いって言われてるんですけど。身長も平均以上なんですけど」
「それがどうした」
今度は獄寺はため息を吐いた。
リボーンは獄寺が生まれたときから知っている。獄寺の世話係、教育係をして成長を見守り、今は獄寺の護衛が仕事だ。
そんなリボーンから見れば、獄寺はいくつになっても子供に見えるのかもしれない。獄寺は納得がいかないが。
「オレの人生最大の失敗は、お前の育て方を間違えたことだ」
「そこまで言いますか」
「毎夜毎夜パーリィばかりしやがって」
「だって楽しいんですもの」
なんの悪びれもなく答える獄寺。特にダンスが楽しいんです。と獄寺は笑って言った。
「その内攫われるぞ」
「そうなったら当然リボーンさんが助けてくれるんですよね?」
「仕事だからな」
いつもと同じ言い回しに獄寺は笑う。そこには先ほどのパーリィでの大人の女の顔はなく、幼い少女がいるだけだった。
獄寺は身を翻す。
「どこに行くんだ?」
「いつもの部屋で、ダンスの練習を」
「今日はもう遅い。明日にしろ」
「今踊りたいんですよ」
リボーンさんも踊りますか? と冗談交じりに振り返って言えば、意外にもリボーンも着いてきた。ため息を吐きながら。
「来てくださるんですか?」
「仕事だからな」
仕方ないと言いつつ、リボーンの目は優しい。リボーンもなんだかんだで獄寺の踊りは好きなのだ。
リボーンが獄寺に手を差し出す。獄寺は笑ってその手を取る。
「明日のパーリィはリボーンさんも一緒に踊りますか?」
提案、と言うよりはふと頭に浮かんだことをそのまま口にしただけ、と言う感じの獄寺。
リボーンはその言葉を聞きながら、馬鹿な男除けになるならそれもまた一興かもな。と半ば本気でそう思った。
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お前はいつまでも子供だから、こっちが苦労する。
リクエスト「10年後、パーリィで輝いてる♀獄と牽制リボ様v」
リクエストありがとうございました。